Impressive Sounds

素敵な歌声や音楽を求めて。

ドライ≒冷淡・冷たい、とは限らない:メリーポピンズ 4/29ソワレ

メリーポピンズ、2回観ちゃった。へへへ。3/24夜のプレビュー公演と4/29夜の本公演。そして東京公演明日(日付的には今日)終わるというのに、今更書いちゃう。個人の雑感、あとキャストさんの感想。



ミュージカル「メリー・ポピンズ」プレスコール映像


私はWickedのDefying Gravity、The Hunchback of Notre DameのOut There、The Little MermaidのPart of Your World、PIPPINのMorning Glowなど、がっつり歌唱力が必要で歌い上げるような曲が基本的には好き。なので何回か観たくなるような作品は大体音楽が気に入ったものになることが多い。で、メリーポピンズは大熱唱ナンバーはないと思ってるので、それでもリピートしちゃったのってなんでだろと思ったけど。

たぶん、熱すぎずドライすぎない芯(ストーリー的にそれはメリーポピンズのマインドとかポリシーとかスタンスとして見えるもの)がストーリーを貫いているところが好きだな。メリーポピンズは人に自分の考えを押しつけないように見えるし、実際劇中でも「私が人に考えを吹き込むなんて!」みたいなこと言ってた気がする。そういう押しつけがましさは全くなくて、けれど「私はこう思うの」「私はこう感じるの」「私が決めるの」というしなやかで筋の通った物言い・立ち居振る舞いは徹底されていた。そういう、私が素直に信じていたい「自分で決めたことをやる」「互いにリスペクトをもつ」みたいなところがメリーポピンズの芯にあったから、それがすごくちょうどよく感じてリピートしたように思う。

そのちょうどよくて気に入ったメリーは濱田めぐみさん。Wicked日本初演エルファバというのはもちろん知っていたけど私は新参者なのでこの作品でやっとお目にかかれた。安定感がありながらキャラクターとしても説得力のある歌唱力・演技力を体感したので、今後Wキャストの配役だったらこの方を選びたいと思った。そんなわけで今回は2回ともメリーは濱田さんで堪能。(平原さんが嫌とかではなく、なんとなく濱田さんメリーをもう一度みておきたかった。)

バートは大貫勇輔さんと柿澤勇人さん1回ずつみて、個人的にはダントツ大貫さんのバートが好きだった。もともとメリーポピンズにすごく思い入れがあったりするわけではなくてあまり詳しくもないので、2回観た感想としては「歌がうまいよりも演技・ダンスがしっくりくるほうが好きだな」っていう感覚で、その観点でいうと大貫さん。バートにしては上品すぎたかもしれないけど、ディズニー映画のバートも若造ではないし、大貫さんの落ち着いて品のあるバートがしっくりだった。ダンスは言わずもがな、ステップインタイムもスーパーカリ~も彼から目が離せなかったし、今度はもっとたくさんダンスしているところをみてみたい。

ジョージは山路和弘さんと駒田一さん1回ずつ。山路さんは厳格な部分に納得感があるジョージで、駒田さんは家族愛に目覚める様に納得感があるジョージで、それぞれの個性があった。ディズニー作品的な意味でわかりやすかったのは駒田さんかなぁ。ウィニフレッドは2回とも木村花代さんで、劇団四季出身だからか開口っぽい話し方をするのでちょっと気になった。でもジョージを助けると決意するソロの歌い上げ(これもしかしたらこの作品の中で一番歌唱力披露できそうなソロな気がする)、ジョージと一緒に給料交渉するところとかかっこよかった。

バードウーマンとミセスアンドリューは鈴木ほのかさんと島田歌穂さん1回ずつ。練習動画では島田さんのバードウーマンが好きだなぁと思っていたけど、鈴木さんのときのほうが席位置が良かったせいか鈴木さんのバードウーマンのほうが泣いた気がする。歌声は甲乙つけがたいけど、表情に泣いてしまったかな(島田さんのほうでも泣いてはいたけど)。ミセスアンドリューはそれぞれキャラクターを持っていて、鈴木さんは実在しそうなイヤーな家庭教師感、島田さんはディズニーヴィランズっぽいちょっと寓話的な役作りに見えた。

ジェーンは岡菜々子ちゃんと浅沼みうちゃん1回ずつ。菜々子ちゃんもとっても上手だった、そして個人的にとても好きだったのはみうちゃん。まず声がすごくきれいでなめらか、お芝居も小生意気な女の子が少しずついろんなことを学んで家族や周りの人に歩み寄っていく様もわかりやすかった。いやーとにかくあのきれいな声はほんと素晴らしい。マイケルは2回とも坂野佑斗くんで、こちらもやんちゃボーイを好演。物語の中ではなく子役ちゃんたちの実年齢がどれくらい近いのか・離れてるのかわからないけど、ちゃんとジェーンの弟だってわかるような幼さ(でも幼すぎない)でかわいらしかった。

あとこの作品は舞台装置がすごく凝っていて、開演前は緞帳に映し出されたロンドンの屋根上の煙突から煙がゆらゆら、メリーポピンズは突然現れカバンからあらゆるものを出し階段を足を使わずに移動するしフライングもするし、バートは壁や天井を歩いてタップダンスを踊ったり、チェリーツリーレーンのセットは立体絵本のように飛び出てきたり収納していったりするように見えた。やっぱりディズニー作品は装置を立派にするのはおきまりなのかな。

2回観たけどいつも泣くところは決まってて、マイケルとバードウーマンのシーン、ウィニフレッド決意のソロ、ジンジャーブレッドの星を見つけてからのジョージと家族との関係の変化、そしてラストのメリーポピンズ。最後なんか何も歌ってないし喋ってもいないのに、最後までリアリティをもってメリーポピンズのイメージをこちらに提供してくれるから、なんだかそういうところで感極まって涙が出るような感じ。

今回日本人キャストの上演を観たけど、これはやはり大好きなロンドン ウエストエンドで地理的なリアルさも追加して観てみたい。あと英語カンパニーでの来日公演も今後やってくれたらまた観たいなって思う作品でした。

キャスト(Wキャストは観た人に「*」)

メリー・ポピンズ濱田めぐみ*/平原綾香
バート:大貫勇輔*/柿澤勇人*
ジョージ・バンクス:駒田一*/山路和弘*
ウィニフレッド・バンクス:木村花代*/三森千愛
バードウーマン/ミス・アンドリュー:島田歌穂*/鈴木ほのか*
ブーム提督/頭取:コング桑田*/パパイヤ鈴木*
ミセス・ブリル:浦嶋りんこ*/久保田磨希*
ロバートソン・アイ:小野田龍之介/もう中学生*
ジェーン・バンクス:浅沼みう*/岡 菜々子*/亀山めい/渡邉おとは
マイケル・バンクス:大前優樹/加藤憲史郎/竹内彰良/坂野佑斗*
ノース・ブルック:石川剛
ミセス・コリー:エリアンナ
ケイティ・ナナ:小島亜莉沙
ヴォン・ハスラー:丹宗立峰
ネーレウス:長澤風海
ミス・ラーク:般若愛実

青山郁代,五十嵐耕司,石井亜早実,大塚たかし,岡本華奈,風間無限,工藤彩,工藤広夢,熊澤沙穂,斎藤准一郎,高瀬育海,高田実那,田極翼,照井裕隆,中西彩加,華花,樋口祥久,藤岡義樹,藤咲みどり,三井聡,武藤寛

オペラを観て、舞台装置(演出?)に泣く:東京二期会ローエングリン 2/24

久しぶりのオペラ、難しいところもあったけど、なかなか堪能できた。この公演は、ドイツオペラの名匠の準・メルクル氏指揮、映画監督の深作健太氏演出というのも目玉というか話題というかアピールポイントだったみたい。私はオペラもオケも日本の映画監督も詳しくないので、そのすごさはよくわからないんだけど、でも見ごたえあって満足だったなぁ。

あらすじ公式にあります。
http://www.nikikai.net/lineup/lohengrin2018/index.html



新国立劇場オペラ「ローエングリン」ダイジェスト映像
これは新国立劇場オペラなので、今回観た東京二期会のとは別です。参考までに。


オペラ詳しくないけど留めておきたい公演だなと思ったので、私なりの感想を。

基本高音域がきれいな声が好きなので、まずエルザの林さん。第一声から思わず聴き惚れるような素敵な声!感情を前に前に出すような歌もあったけど、それよりも感情が漏れ出るような、言葉をはっきり発音しないようなシームレスな歌の方が、その角がない声がより美しく聴こえた。あと少し紫寄りの青いドレスがすごくきれいだった。

最初、演出がちょっと難しくて、なんか人が倒れたり(たぶん白鳥に変身させられてしまったエルザの弟・ゴットフリート?)、よくわからないけど本持ってるおじさんだと思ってたらローエングリンになっていきなり高らかに歌い出したりして。でも、エルザの声がすごく良かったから、とりあえずほっとしたのだった。

そしてタイトルロールのローエングリン、福井さん!5階のお安い席かつ裸眼だったので正直どの人もざっくりとした衣装と髪型くらいしか見えなかったので、遠目だと正直「だれこのおじさん?」(失礼)。さっき書いたように突然ローエングリンになるからよくわからないし。だけど、一度歌い出せばばすさまじくイイ声!なんかこの人は格が違う…と素人ながら感じた。ハリがあって、まろやかに豊かに響く声。

キャストはとにかくこの二人が歌ってると私の満足度は高かった。エルザの声にはとにかくうっとり。ローエングリンなんか、別にハッピーな歌歌ってるわけじゃないときでも、「なんかこんな素晴らしい歌を生で耳に流し込んでいるということ自体が幸せ…!」って思ってた。

エルザを陥れようとする悪女オルトートと、夫テルラムントは、エルザ・ローエングリンの存在感に負けて聴こえて。特にオルトートは、演技というかオーラは良くて、特に2幕のラストなんかは素晴らしく不穏な雰囲気を醸し出していたのだけど、歌声は配役の割にはパンチがない感じ。オペラって配役によって音域が決まっているからドスをきかせるわけにもいかないし、私が素人だから「物足りない」と思っただけかも。

すでに書いたように、舞台装置や演出の意図をくみとるのは難しかった。白鳥に変身させられてしまったゴットフリート(か分からないけど、とりあえず少年)がずっと舞台上にいるな、とか、ローエングリンやエルザが急にコスプレしてるみたいに見えるな、とか。でもまあ、それはそれで逆に面白くて良かった。個人的には「オペラってストーリーが面白いとはわけじゃないし、歌や演奏を楽しむもの」って思ってたけど、今回は「今のどういう意味だろう?次はどうなるんだろう?」って興味を持って最後まで観れた。

舞台装置といえば、マラソンとかでよく見るデジタル時計が一幕頭と三幕終わりに舞台上方にあった。それが、頭は23:23:59からカウントダウン、終わりは00:00:00からカウントアップしていた(5階席だから見えたんじゃないと思ってるんだけど…あれはわざと見せてたよね…?)。

ラストはローエングリンが素性を知られてしまったから去っていくという流れで、頭上の大きなコンクリートのような三角の舞台装置が民衆やエルザのいる地面の方に向かってゆっくり降りてきて、00:00:00からカウントアップしているのが見えたわけで。そしたらなんだか、「この演出と舞台にこの装置、なんだかぴったりで素晴らしい…」と、まさかの謎の涙が。装置で泣いたのは初めてかもしれない。笑

あとは、会場。この日は5階の下手ほぼセンターというお安い席で観た。下手が見切れるけど全然見えないということもなかったけど、舞台左右に置かれてた字幕はちょっと見づらかったかな。そして、このホールが良いのか演奏が良いのかわからないけど、弦がかなりきれいに聴こえた気がする。

ピアノやギターの、1音伸ばして鳴らしてるようなまっすぐな音と違って、何本(というか何人)かが弓を動かし続けて音が鳴ってるのがわかる感じ。弦の一本一本に存在感があったような。ただ、演者全員歌うとことかはときどきオケの音量が勝ちすぎてしまい、歌組がほとんど聴こえないときもあった。

いろいろ書いたけど、感想はこんな感じ。あぁ、観れて良かった、書けて良かった。

ところでオペラって、落ち着いた年齢の男性のオーディエンスがすごく多いんだなぁと。いつも行くようなミュージカルはもちろん、バンドのライブだってけっこう女子多くてトイレ待ちが面倒なんだけど、今回は休憩2回ともスイスイで楽だった。


ローエングリン」オペラ全3幕
日本語字幕付き原語(ドイツ語)上演
台本・作曲:リヒャルト・ワーグナー
会場:東京文化会館 大ホール

指揮:準・メルクル
演出:深作健太

装置:松井るみ
衣裳:前田文子
照明:喜多村 貴
合唱指揮:増田宏昭
演出助手:太田麻衣子
舞台監督:八木清市
公演監督:大野徹也
公演監督補:牧川修一

ハインリヒ・デア・フォーグラー:小鉄和広
ローエングリン:福井 敬
エルザ・フォン・ブラバント:林 正子
フリードリヒ・フォン・テルラムント:大沼 徹
オルトルート:中村真紀
王の伝令:友清 崇
4人のブラバントの貴族:吉田 連、鹿野浩史、勝村大城、清水宏
ローエングリン(青年時代) :丸山敦

合唱:二期会合唱団
管弦楽東京都交響楽団

壮大なスケール感を生み出す歌声:新妻聖子

1/14のTENTH@シアタークリエ(ソワレ)を観た。二部に出演されていた新妻さんの歌声があまりに素晴らしかったので、自分の備忘のために少しでも書き残そうと思いこのポストです。

ちなみに新妻さんの威力がすごかったけど、伊礼彼方さんもやはり好きな声だった。Field of Angelsは花咲く草原が見えるような清涼感が会場を包んでたと思う。もっとがっつり聴きたいので、伊礼さんもライブとかやってくんないかなぁ。

youtu.be

ちなみに一部のニュー・ブレインは、なぜか私にはあまり合わない作品で。歌がうまいことをとにかく一番に求める私が、歌うまい人ばかり出てる作品がハマらないなんてことあるんだ…と自分でも少し驚いたほど。とりあえずウエイトレス/看護師役の中村桃花さんが歌声・身のこなし・スタイルともに平均点が高くて目を奪われたこと、ロジャー役の畠中洋さんの声がハンパなくソフトダンディーですんごい好きだなって思ったことは覚えてる。

さて、新妻さんはTVでちらちらとお見かけしていて。TVでは、うまいんだけど、「どう!?私うまいでしょう!?」というようにも見えていた。去年夏にテレ朝のミニライブみたいなやつでAlways Loving Youの後半だけ聴けたことがあって、途中から聴いたせいか、その時も似たような印象があった。

でもTENTH、全然違って聴こえた。彼女の持ち歌はひとつも知らなくて、でも彼女の手短な曲紹介を聞いて歌声を耳にすると、何かに押されるように涙が目の奥から出てきた。歌ったのは5曲。どうしようもなく涙が出たのはGOLDとFly fly away。

GOLD〜カミーユロダン〜 から
・腕の中の女
・愛の学習
・GOLD

トゥモローモーニング から
・Suddenly

キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン から
・Fly fly away

新妻さん、作品のことも深く語ることができて才女って感じがあった。早口で話すので中川翔子さん的な感じもあるけど、それよりも大人な感じというか。

GOLDは、彫刻家ロダンと才能ある美しい弟子・カミーユとの物語だそう。カミーユは彫刻家として優れていたのに女性であるゆえ評価されず、本妻がいたロダンからも最終的に選んでもらえず、精神を病み人生を終えたと。そんな生涯でも確かに宝物(GOLD)に出会えたのだと説明してくれて、なんだかこれを聞いただけで泣けそうなところに、彼女の歌。

歌い出しと歌い終わりはとても静かにソフトに歌うからちょっと聴こえないといえば聴こえないんだけど、そこから力強く揺るぎなくカミーユの想いを歌い上げる抑揚みたいなものがすごかった。空間が広がるような声の飛び方で、壮大なパイプオルガンを背にした教会にいるんじゃないかくらいの、神々しい歌声だった。

彫刻のこともロダンのことも、自分の人生はハッピーエンドではなかったけど、確かに大事なものを手にした瞬間があったということが、すごく伝わってきた。私はあまり歌詞を言葉として聴いていないことも多いんだけど、ここが言葉として明確に響いてきたのを覚えてる。さっき神々しい歌声と書いたけど、ある意味地声っぽくなるところや区切れの語尾の声なんかに、一人称の女性の強さと弱さと必死さもあって。

(しばらく、この感情の津波に浸って号泣したいくらいだった…。時間配分があるのはわかってるけど、この曲の後はもっと余韻をくれても良かったんじゃないの…。)

あともうひとつ、ラストナンバーのFly fly away。これはキャッチミー~の主人公である天才詐欺師・アバグネイルJr.が、新妻さんが演じていた恋人・ブレンダのもとを去ったときの歌とのこと。あなたが自由でありますように、さよならだけどまた会えるよね、戻ってきてくれるよね、といった歌詞だったかな。

これも泣いてしまったんだけど、これはブレンダらしい(といってもキャッチミー~観てないので想像だけど)歌声に感動したんじゃなくて、聖母の慈悲みたいなものを感じたから涙が出たような感じ。いち恋人が彼のことを思い歌う歌というより、人類の母が子の一人を見守り、ゆるし、送り出すくらいのスケール。我が子よ、飛び立っていくのよ…という。

そんなわけで、本編で聴くには新妻さんの歌唱力だと壮大すぎる印象だった。でも今回はコンサートのラストナンバーだったし、一部で泣けてないのもあって新妻さんに2曲も感涙させてもらってなんだかデトックスしたような気分だった。

YouTubeでミスサイゴンとかレミゼとか見てもやっぱり壮大に泣かせにくる感じがするので、もしかしたらこれが新妻節なのかも。でもたかが数回歌唱動画見ただけで決めつけるのも良くないよね。

また聴いてみたい歌声がひとつ増えて、ほくほくした年始でした。

終わりでやっと始まる感じ:Next To Normal 1/8ソワレ

TENTHは、シアタークリエ10周年記念コンサートだそう。
一部で「ネクスト・トゥ・ノーマル」「ニュー・ブレイン」「この森で、天使はバスを降りた」を週替り上演、二部ではこれまでシアタークリエの作品に出演した俳優たちがこの企画のためのガラコンサート。

昼に観たニューイヤーミュージカルコンサート2018ですでに脳のメモリをくわれつつあったせいか、頭痛に耐えながらネクスト~と二部のコンサートを観劇することに…。
正直なところ一部の衝撃ゆえ、二部は「楽しいコンサートだなぁ」「新納さんはじめ皆さんお話が上手だなぁ」「彩吹さん美脚だなぁ」とぼんやり過ごしてしまったので、一部の感想だけ。

ネクスト・トゥ・ノーマル
ダイアナ:安蘭けい
ゲイブ:海宝直人
ダン:岡田浩輝
ナタリー:村川絵梨
ヘンリー:村井良大
Dr.マッデン(Dr.ファイン):新納慎也



Next To Normal at 2009 Tony Awards


いつもどおりネタバレ炸裂、今回曲があまり覚えられなかったので聴覚情報よりもほぼ解釈情報。
そして咀嚼しきれてないからいつもよりやたら長いです。
あらすじはオフィシャルへ。
http://www.tohostage.com/tenth/one.html

幕開きの曲(ピアノに突然ドラムのタムが割り込むところとか)がかっこ良くて好きだなと思ってたら、ダイアナとゲイブが話し始める。
(私は、観る前に軽くYouTubeみたりして曲はちらほらちらっと聴いておいたのと、息子ゲイブは死んでるってのだけ知ってた。)

ゲイブは死んでるのは知ってたけど、あまりにもリアリティある話をしているので、早速「???」。
だって幻覚なら「愛しの息子~」とか「ぼくとあなたとはいつでも一緒~」とか抽象的で曖昧な話をすると思ってた。
なのに実際は「まだ起きてるの?」とか「お父さんに見つかるから裏口から出て」とか、年相応に生きててそこに物理的にいるのかと思うほど具体的。
海宝さんゲイブの役作りはそういう演出なのか、ふと存在感を潜めることはあったけど、とにかく幻覚感も幽霊感も皆無だった。

娘ナタリーとのなんだかどこか噛み合わない会話。
村川さんのナタリーはイライラした思春期の女の子感をしっかり演じていて、最初はなんでこんなケンカ越しなんだろうと思ったけど、話が進むにつれて意味がわかった(後述)。
地声が多いのにキンキンせずスッと通る素敵な声で、ミュージカルっぽくない歌唱が現代的ななこの作品によく合ってると思った。

悪天候なのに良い天気という妻を否定もせずやさしくサポートする夫ダン。
岡田さんのたれ目でやさしそうなお顔立ちも加勢して、グッドマン一家で一番やさしくて実は一番ハートが弱そう。
ゲイブなどいなかったかのようにふるまったり、おかしいことがあっても直視せず「よくなるよくなる」と何事も見ないふりをしたり。
岡田さんは歌がうーんという感じ(音はとれてそうなんだけど聴こえづらい)のところが多かったんだけど、お芝居が良かったしわかりやすいダンを見せていただいた感じ。

Just Another Dayの事細かな歌詞は覚えてないけど、安蘭さんのダイアナは賢そうなのに、この曲では一心不乱に「パーフェクトな家族」「みんな愛し合う」といったようなことをまくしたて歌ってた。
パーフェクトと普通は、この作中ではイコールなのかどうなのか。
Who's crazyでは、妻と自分はどちらが狂ってるのだろうという問いかけもあった。
あと愛し合わなければならないという強迫観念もあったのかなと、終わってみると思い出される。

Everything Elseでは、楽譜で全て定められたクラシックを弾いていると(考えなくて済む、だか、頭がからっぽになる、だったかで)落ち着くというナタリー。
対照的にクラシックには創作の余地がないから即興のあるジャズがいいというヘンリー。
どっちもやったことあるからどっちもわかる。
My PsychopharmacologistはMy Favorite Thingsのメロディーのパロディを入れながらダイアナのお気に入りの薬を歌ったり、新納さん演じるちょっとひょうきんなDr.ファインがおもしろかったり。

ヘンリーの村井さんは初めて見るけど、行けなかった「きみはいい人チャーリーブラウン」でも癒し系チャーリーだったようだし、今回のヘンリーも作中唯一のほっこり系キャラクターだった。
でもただほっこりなだけじゃなくてちゃんとナタリーを見守ってあげていて、あなどれない包容力がある感じ。
Perfect For Youでマリファナ?薬?を吸ったまま告白したところは逆効果だろと思ったけど。
声はいいけど、なんだか難しい歌が多かったみたいで少し聴きづらいとこあったかな。

I Miss The Mountainはダイアナが感情豊かだった頃を山に例えて歌ってるらしいけど、初見にはその比喩は難解すぎてわからなかった(終演後調べた)。

It's gonna be goodでやたら元気を出してるダンが、ゲイブのバースデーケーキをもってきたダイアナに彼はもういないんだと告げるシーン。
ダイアナが動転するのは当然として、ヘンリーのほうがもっとびっくりだったろうな。
席位置的に見えなかった。

ダイアナがダンに「あなたはなんにもわかってない!」というYou Don't Know 、ダンとゲイブが「君をわかってるのは僕だ!」とダイアナを挟んで歌いまくるI Am The One。
ダンとゲイブを交互に見て目を見開き続けるダイアナを見てて、これはさぞかし精神的にキツかろうと苦しくなった。
I Am The Oneはイェイイェイ言う曲なのだけど岡田さんが全然様になってなくて(日本人がイェイイェイ歌いこなすのは難しいもんね)、他方海宝さんは違和感なくイェイイェイめっちゃ歌いこなしててびっくり。

そしてナタリーが歌うSuperboy and the Invisible Girl、YouTubeで予習したときは「superboyってなんだよ?」と思った。
母ダイアナにとって息子ゲイブがsuperboy(すごい男の子=理想の息子)で、娘ナタリーは存在してないってことだった、なるほど。
ずっと俯瞰してたのが、このあたりからナタリーに寄って観ていた気がする。
ちゃんと自分は生きていて勉強だってピアノだってやってるのに、死んだ兄ばかり見てるなんてしんどいなと。

ダイアナにはDr.マッデンがロックンローラーのようにワイルドに見えてしまうというDoctor Rock、新納さんの振り切れっぷりがすごかった。
新納さん、パレードのときも見て今回も見て、やっぱりちょっと歌は?なところがあるんだけど、そんなの些細なことだくらいの思い入れとお芝居のアウトプットがある人なんだなって思って、それもすごいなと。

海宝さんのI'm AliveはSNS上で大評判だったけど、私がナタリー(最後は+ダン)に寄って観ていたせいか、ちょっと好きになれなかった曲。
ダイアナがつくりだしたゲイブ像ではあれど、家族3人みんなを悩ませていたわけなので。
それでも「僕は生きてるんだ!なかったことにするな!」という叫びは、特にダンに対しては痛切なものだったろうと。

Make Up Your Mind / Catch Me I'm Fallingというナンバーがあったようだけど、もう記憶に乏しい。
There's a World、ゲイブが急に生気を無くした様子でダイアナにそっと近寄り、自分のところにきたら苦しみから逃れられるよといいながら指1本ずつ手首を丁寧に掴んでた。
これがダイアナの自殺未遂を示唆してて、ダイアナの体験を追体験しているような感覚になって、こんなにぼんやり恐ろしいことをしてしまうかもしれないのかと怖く感じた。

ここで、良い人なのかそうでないのかよくわからないDr.マッデンが(自殺未遂に対して)悔しそうに「クソッ…!」と言っていた。
彼は(客観的に正しいかはわからないけど)自分の正しいと判断した指針を貫くある意味強い医師なのだと思った。

このままでは命さえ危険だからECT(電気けいれん療法)を受けよう、とダンが説得。
その最中、ゲイブはダンを凝視していたのだけど、怒り狂って睨んでるというのとも違うし、そんなことしないでと恐怖しているのとも違う、「また僕をなかったことにしようとするのか」と静かに責めるような目だったのが複雑。

ダイアナは回復しなきゃとは思ってるから、同意書にサインし、治療を実施、記憶が消えてしまう(A Light in the Darkはここだったか?)。
きっと思い出すよとか前向きに言うダンはほんとに事実を直視できないんだなと思ったし、亡き兄ゲイブに嫉妬しながらも母を愛しているナタリーは記憶が消えてしまったことにショックを受け、「最低!」と言い放つ。

個人的にナタリーは自身の境遇にも関わらず両親も兄のことも心の底では愛している愛情深い女の子だし、数々の衝撃にダメージを受けながらも毎回のように「最低!」と言っているのは、逆に誰よりもその衝撃に真正面から直面しているすごい女の子だと思う。
村川さんのナタリー、痛々しいけど愛情深くて、すごくすごく素敵な女の子。

何回か村井さんヘンリーのHeyって曲があって、ナタリーを気づかったり、そばにいるよって言ってあげたり、力になりたいのだと都度伝える。
それがまた過大なものでなく等身大のヘンリーの延長線上にそのままアウトプットしたようなやさしさで、ナタリーにはヘンリーがいてほんとによかったねと。
ナタリーは最後の最後に受け入れるまで拒み続けるけども。

Song for Forgetting、Better than Beforeと、忘れてしまったところからやり直そう、ほら思い出してきて前よりよくなってるよ、という流れ。
でもやっぱり過去はなかったことにはできないから思い出したいのに、忘れてしまったら何を忘れてしまったのかもわからないのだというダイアナのYou Don't Know(reprise)。

ダンがダイアナに渡さなかったオルゴールを、ゲイブがダイアナに渡して彼女はゲイブを思い出す。
ダンがオルゴールを叩きつけるのが先かダイアナがオルゴールでゲイブを寝かしつけていたことを語りだすのが先か、順番が思い出せないけど、自分の心の中で大人になったゲイブにダイアナが言及したところで、彼は赤ちゃんの頃に亡くなっていると告げられて混乱。
(あぁ、思い出して書いてるだけでつらくなってきた…)

新しい治療をマッデンに勧められてどうするのかと問うナタリーに、「私はあなたをダンスに連れていく(待っているヘンリーのもとへ行かせる)」と落ち着いた微笑みでダイアナが答えたところがとても印象深かった。
混乱してまだきっと全てを整理できてないだろうダイアナが、「あなたにはふつうをあげたかった、あなたはあなたの幸せを」と言ったのは本心だったろうと思われて。
きっと表に見える部分ではゲイブに囚われそうは見えなかっただろうけど、ゲイブの代わりにナタリーを生んだというのに女の子だから“ゲイブの代わりにならない”と愛してあげられなかったこと、心の底ではずっと懺悔の気持ちがあったんじゃないかなと私は想像したので。

それに対してナタリーが「ノーマルにはなれなくても、普通の隣くらいで十分」っていうのが、またこの子の愛情深さに涙がでてきてしまうMaybe(Next To Normal)だった。
そして待ったいたヘンリーが歌うPerfect For You(reprise)。
結局最後までこの作品で出てくる「パーフェクト」の意味するところはわからなかったけど、ナタリーに寄り添うよっていうやさしくフィットする気持ちが「パーフェクト」なんじゃないかなって私は思った。

「(ナタリーが自分が狂うかもと怯えるのに対し)僕だって狂うかも」と少しへらっと笑いながら歌うところなんか、映画「エターナル・サンシャイン」を思い出した。
(あの作品は「またうまくいかなくなるかも、でもそれでもいい、そこからまたやり直せば」っていう肩の力を抜いてくれるようなメッセージがあったと思ってる。)

So Anywayでダイアナが出ていく意味が劇中ではわからなかったけど、彼女が出ていって始めてダンはやっとゲイブに向き合ったんだなっていうのはわかった。
I Am the One(reprise)を歌うゲイブをダンはずっと見つめられなかったけど、やっと彼の存在を見つめて「ゲイブ…ガブリエル(ゲイブはガブリエルの愛称)」と言うダンは、もう声がかすれて聞き取るのがギリギリだったくらい。
見つめるのはつらかったろうけど、無視したままではずっと精神的に自由になれなかったろうから、目があってやさしく「やぁ、パパ」ってゲイブに言ってもらえたことは、バッドエンドではないと私には見えた。

ダンだってゲイブを愛してたから、存在してたことを認めると悲しくて辛くてどうしようもないから、なかったことにしてたんじゃないかな。
だとしたら彼はこれからその悲しさや辛さを受け止め続けなきゃいけないけど、マッデンに「だれか話を聞いてくれる人(セラピスト)を紹介しましょうか?」と聞かれてイエスと答えていたから、少しずつ向き合うんでしょう。

ラストナンバーLightは歌詞が聞き取れなかったのか忘れただけなのかもう全然わからないんだけど、タイトルに書いたとおり、ここがやっとグッドマン一家のスタートだなと。
ダイアナはゲイブが「死んだ」ことを受け入れ、ダンはゲイブが「生きていた」ことを受け入れ、ナタリーは自分が「存在すると思えるようになった」。
バースデーケーキが出てきたときは「これからもゲイブの誕生日祝うのかよ」と思ったけど、それはナタリーのためのものだとわかったとき、おぉ…ついに透明のガールは実在のガールになった…と感慨深く。

そんなわけで、ダイアナがクレジットの最初だしその次はゲイブだけど、私はナタリーとダンが救われる物語と受けとりました。
幕が降りてからは心があたたまるとか前向きになれるとかというのとは違って、やっとこの苦しい世界が終わった…と思ったかな。
それとともに、これから先の長い道のりも見えるような気がして、「普通」に囚われず生きるとはなんて難儀なんだ…というところまで勝手に意識がいってしまった。
ノートルダムでも思ったけど、「しんどくてもう二度と観れない」って思ったのに、思い返しているとまた観たいような気がしてくる不思議な作品だった。

長かった…でもどうしてもインプットしたものをアウトプットしておきたかった、覚えている限りでもいいから。
ちなみに海宝さんの歌聴くつもりで行ったけど村川さんと村井さんが気に入りました。
安蘭さん岡田さんもすごく説得力があって、こんなに大変な作品をよくぞ演じてくださいました。
海宝さんゲイブはタイトなTシャツて胸板厚かったけど、SNSで見かけた妖艶さとかは感じなかった。
ふつうに良い青年に育ったけど時々子ども返りして困らせてるように見えたかな。
実際のゲイブは赤ちゃんのとき死んでしまってるけど海宝さんのは赤ちゃん返りほどではないから、子ども返りって感じ。

実は10周年祝うどころか、今回初めてシアタークリエデビューだったけど。
だってウィキッド以外のミュージカルをコンスタントに観るようになって1年経ったか否かくらいだから。笑
まあもしかしたら、今回座ったのは前方(一桁後半列)だったから歌がちゃんと聴こえない、音のバランスが良くないと思ったのかもだけど、ちっちゃいから近いとか遠いとか気にしなくてよさそうなのはプラス要素だよね。

5人それぞれの個性のバランスの良さ:ニューイヤー・ミュージカル・コンサート2018 1/8公演

感想残してないけど、去年も行ってたこのコンサート。
今年の出演は5人。
LAURA MICHELLE KELLY(ローラ・ミシェル・ケリー)
GENEVIÈVE LECLERC(ジュヌヴィエーヴ・レクラーク)
ROBERT MARIEN(ロベール・マリアン)
MICHAEL ARDEN(マイケル・アーデン)
ANDY MIENTUS(アンディ・ミエンタス)


Bunkamura 東急シアターオーブ「ニューイヤー・ミュージカル・コンサート2018」キャストメッセージ


7日まで年末年始海外逃亡してたので、これは行かないつもりでした(いつもつもりばっかり)。
が、ローラのAll That Matters、そして何よりマイケルのOut Thereが聴けるとなれば行かないわけにはいかなかった。

シアターオーブは何回も行ってて、S席は高い、A席は音が所によりダメ、っていう個人的に座席選択が難しい劇場。
今回は聴ければいいやと思ってB席(2階10列)にしたら、これが良かった!
おそらくスピーカーが自分の頭と同じくらいの高さにぶらさがってて耳にちょうど音が入りやすかったからかなと思ってて、たぶん2階は9列以降がよさそうかなと。
前2階A席にしたら音が頭の上をすり抜けていく感じですごく物足りなかったので、今後はB席にしよう。

オケは見えた感じでは
バイオリン系の弦3本、ラッパホーンフルート、エレピ3人、打楽器2人、ベースかギター。
たしかにいろんな楽器補ってくれますけどエレピ3人は多すぎでは…音の厚みも機械的になるし無機質感にちらほら気づくオケ演奏。
せめて1台くらいグランドピアノとか、音質の良いピアノも用意してほしかった。

幕開けはSeasons Of Love。
優等生的でダイナミックさとか驚きは感じなかったけど、しっかり歌われていた感じ。
低音がけっこうしっかり聴こえるのでだれ?ロベール?と思ったらマイケルだった。
低音もがっつり出ますなぁ。

楽しそうなGood Morning。
雨に唄えばの曲のようだけど、この日初見。
ローラ、マイケル、アンディが可愛く優雅に歌唱。

続いてロベールのMan Of La Mancha。
なんかすごい迫力感じつつも、少し型にはまった感も強め。
歌いこんじゃってるのかな?

そしてジュヌヴィエーヴのMemory。
キャッツ観たことないけどたぶん1度下げくらい?原キーではない音で歌ってた。
少し声が強めだけれど、自分事として歌っている感じが素敵だった。
歌い上げはほんとにラスサビのみだったのが、誰かの模倣とかでなく良かった。

On The Street Where You Live、マイフェアレディの曲らしい。
アンディとマイケル、どっちが歌ってたっけ?失念。

Music Of The Nightはロベールのおハコ。
少しかたくて聴きづらい声のとき、ソフトに歌うところは少し年齢を感じる声のとき、それぞれあった。
でも基本耳なじみ良くて、後半フランス語で歌ってたのがとても良かった!
フランス語とミュージカル、軽やかにしたいときやささやくようにしたいときは良いかも。
逆にべったりどっしり聴かせたいときは音数の少な目な日本語が良いかも(ウィーン系観てるとそう思う)。

As Long As You're Mine、ローラとアンディで。
今までみたどのAs Long As~よりもドラマチックに感じた!
影のあるウィキッドのストーリーよりも、洋画でロマンチックに展開されるラブストーリーの一部という感じ。
二人とも声が陽な感じだからかな。
アンディはノーマークだったけど、声はっきりしてるし成熟し過ぎてない若々しい高めの声音でいいなぁ、ということがわかったのは嬉しい収穫。

Love Changes Everything、海宝さんも歌ってたな。
マイケルの声と合っていて、余裕の歌唱っぷり。
すこーし高音寄りの音もあるけど、ばっちりあたってて安心。
余裕すぎて、なんなら6割くらいの力で歌ってそう。

Beauty and the Beastはロベールとジュヌヴィエーヴのカナダ組が。
ロベールは実際ジュヌヴィエーヴの歌の先生だそうで、この組み合わせがとても良い!
ロベールは若返ったように聴こえるし、ジュヌヴィエーヴはロベールに寄った大人な感じに聴こえるし。
この曲、人によってはただの歌謡ショーみたいに見えることも多いけど、とてもしっとりな上品な仕上がりで大満足。

All that mattersは、Finding Neverlandオリジナルキャスト、ローラが。
泣いた、これはとにかく曲が好きで、メロディも好き。
ローラはそんなに母感強くないと思うんだけど、それがまた「母親になっている最中の女性」という印象があって、母親であり女性である意思の確かさを、しなやかでやわらかめな声で絶妙に歌う。
2番はオケ(というかエレピ)のユニゾンがやたら大きくなったのかローラの声が小さいのか、少し声負けしてるように聴こえた。

Sunrise Sunset、屋根の上のヴァイオリン弾きから5人で歌唱。
屋根の~は観たことないのだけど、良い曲多そうな予感?
そして定番のI Got Rhythmで1部終了。

2部はLet It Goからスタート。
ローラ、この曲が大好きだからか?すごく力入ってた。
高音の切り替えどっちでいこうか若干迷ってた感あるものの、ラスサビは堂々の地声でさすが。
オケはエレピ多用だったかも。

Pure Imagination、チャーリーとチョコレート工場のナンバー。
これも美女と野獣と同じくジュヌヴィエーヴとロベール。
チャーリー~の曲だからてっきりポップでファニーな曲かと思ったら大人っぽい曲だった。

春のめざめからLeft Behind、マイケルとアンディのペアで。
この曲知らないし起伏の少ない曲だけど、鬱々とした感じがあって、ある意味今回のナンバーの中で最も「作品を観ている」イメージに近かった気がした。
マイケルは青年のぼんやりとした感覚、アンディは若い焦燥感のような感覚をもって歌ってみえた。

今年はオーブでエビータやるからということで、そこから2曲、まずBuenos Aires。
ローラってこういうのも歌えるんだ!
押し押し歌唱だったので緩急をつけてくれるとより好みだけど、力強く南米の女で楽しかった。
ただローラは良かったのに、最後オケが3回くらいずれていておかしな感じになっていた。

続いてジュヌヴィエーヴによるDon't Cry for me Argentina。
彼女は時々歌に節があって、それが泣かせの声みたいに聴こえることがある。
誰かの声に似てるけど誰だっけねと考えてたら、レイチェルタッカーっぽい気がした。
クルーズシンガーだったせいか演じより歌寄りで、コンサートではそれがちょうど良く聴こえた。

メリーポピンズもやるからと、Chim Chim Cher-eeをみんなで。
このあと持ち歌ゾーン。

マイケルのOut Thereは、圧巻。
今まですごい余裕あったんだなってくらい、これは本領発揮した感じ。
音源ほどの純真無垢さはないけど、そのぶん諦めや苦悩が声にたくさんのってた感じ。
それがラストにかけて気持ちが広がっていって、高らかに放出されるのを生で聴けたのは感動的だった。
ちなみに暗転後はカジモドステップ(体を曲げてひょこひょこ)ではけてった。

Shall We DanceとHello Young Loversは、ローラの当たり役と思った(アンナ役)!
The King and I自体は、シドニーに行ったときやってたけど観てはいないのでイメージでしかないけど。
クラシカルでロイヤルな感じがとても優雅な曲で、彼女のやわらかい声に合ってた。

Empty Chairs and Empty Tables、アンディのマリウスもなかなか良かった。
声がスコーン系と通るので少しアイドル感もあるけど、大サビではやはり涙。
もっと悲壮感とか無力感とかぶつけてきてくれたらもっと心動いたかもしれないけど、今度はこちらの気持ちが大ダメージ受けそうだからある意味助かった。笑

ジュヌヴィエーヴによるI Dreamed A Dreamedは、「久しぶりに感動したI Dreamed A Dream」だった。
彼女にとっての思い入れゆえか、すごく入り込んでた。
この曲ってただ怒りに任せて歌われるのもしっくりこないし、悲しさだけを全面に出されるのもしっくりこない。
彼女は曲中での気持ちの変化がちゃんとあって、最後には悲しみも怒りも空虚さも織り混ぜて歌にしてた。
やはり泣かせの声がどこかにあって、涙。

ロベールのWhat Have I Done、バルジャンの独白は、たしか前回もやってた。
これを観ると日本のバルジャンは歌唱力物足りなすぎるなぁと思う(YouTubeでみた範囲では)。
独白はこれくらい迫真と迫力でもって客席を圧倒してくれないとね。
こちらもフランス語で歌っていて、彼の力量ゆえか、フランス語特有の気品よりもちゃんとバルジャンの激情が前に出てた。

本編ラスト、アンコールともに知らない曲だったので、失礼ながらそちらは割愛。笑
タイトルにもしたけど、今回の5人はそれぞれの声の個性がとてもバランス良かった。

ローラ:やわらかで高音もノンストレスな声
ジュヌヴィエーヴ:芯がありつつもしなやかな声
ロベール:落ち着きと威厳のある声
マイケル:いろんな感情を内側にもっているようなマチュアな声
アンディ:若さとハリのあるストレートな声

声はいいんだけど音外すとか我の強さが出ちゃうとか、そういうこともなく、歌の技量をもって曲を丁寧に歌う人が多くて、すごくいいもの観たなという気持ち。
新年一発目から素敵なコンサートで幸せ。