今回はフロローの物語感が強かった:ノートルダムの鐘 5/26ソワレ
ちょうど1年ぶりくらい?ひっさびさのノートルダムの鐘。海宝さんカジモドやるかな~と思ってチケットとってみてたんだけど、ウエストエンドデビューされてもはや横浜はおろか日本にいらっしゃらないという。
でも私の世界で一番好きな場所(暫定)であるロンドンで歌われているというのは、それはそれで素敵なことだなぁと。そしてなんだかんだ言って新しいカジモドである金本さん、デビューから2回目の川口さんフロロー、横浜でデビューの光田さんフィーバスと、なかなかアタリな回だったんではないかな。
KAATは初めて行ったんだけれど、会場までけっこうのぼるのね…というのが印象的。席は10列め前半で肉眼でそれなりに表情もわかる距離で観やすかった。席位置の問題か音響調整の問題かそれともクワイヤ自身の問題か、最初のオーリムの男声が、生声とスピーカーからの声がかなりバラバラに聴こえて気持ち悪かった。だれか1/2小節くらい食いぎみで歌ってたのかもしれない。
浜松町の頃4回観ているのでこれで5回目、残念ながら今回は特筆して声に特徴や魅力を感じたキャストさんはいないんだけど、メインキャストで初見の方々の感想を。
フロロー役、川口さん。去年レミゼのジャベールで観てたけど、あまりしっくりこず印象にも残ってなかった方(すいません)。しかしタイトルどおり、今回私には彼が主役に見えた。
歌は若干ピッチ低めなのが気になりつつ、今まで見たフロローたちよりも息がちゃんと続いて、伸ばすとこ伸ばしてたからそれは良かった。お芝居的には一番普通な人物を演じてる感じで、納得感があった。
特に冒頭の自分の生い立ちやカジモドを手に抱いたその後までのお芝居が素晴らしくてすごく引き込まれた。あまりにも普通な青年が聖職者となり、弟を守れず罪滅ぼしのように甥を育てるまでのシームレスな見せ方。たぶん開始5分で泣いてた。笑
ヘルファイアからはちょっとずつ狂っていく様がわかりやすく(だから逆に言えばヘルファイア時は最狂ではないので歌うまいけどいまいちパンチが弱かった気もする)、牢屋のあたりなんかはかなり気持ち悪くなっていて宮田エスメラルダの怯えもかなり切実だった。彼女の死後に平穏な生活の訪れを口にしホッと微笑むところも、もう何かのネジが外れてなくなっちゃってた感じ。クレイジー。
ちなみに川口さん、歌もうまいがそもそも全体的にエエ声で話すし、目も大きいし、なんだか若くてかっこいいフロローだった。フロローってさえないおじさんイメージだったので予想を覆された。
カジモド役、金本さん。歌に不安なところがなくて聴きやすくて、カジモドへの変身と演者の青年とのギャップもしっかりあって、総じてよかったなぁ。
SNSで「海宝さん飯田さん田中さんのどれも参考にしつつ新しいカジモドになってる」と見かけたけど、個人的にはある意味王道でプレーンなカジモドだったかな?ディズニー映画版に近い、わりと愛情も憎悪も色濃くなくてノーマルで素直な、ただしバットエンドで終わるタイプのカジモド。
まあ確かに声は海宝さん田中さん寄りの高めの声だったし、表情は(もちろんちゃんと歪んではいるんだけど)可愛らしい感じだったから、ビジュアルの印象は田中さんや飯田さんっぽかったなかな。海宝さんはベースとして悲しそうに見えてた印象がある。
歌は音程もちゃんとあてているし高いところもスコーンと出てたんだけど、少し特徴的?と思ったのは、重唱だと最初声が埋もれてるところ。でも後からぐぐっと抜けて聴こえてくる。若干スロースターターってことかしら?
あと高音しっかりあてていて聴いていて不安はなかったんだけど、やっぱりそういう難しい音のときは「演じる声」よりも「その音を出すための声」に聴こえたかも。これはやっぱり海宝さんが一番素晴らしいと思う、贔屓目かもしれないけど。ちなみに「サンクチュアリー!聖域だー!」は金本さんがダントツ一番かっこよかったしグッときた。
フィーバス、光田さん。すみません、好みの問題だと思うけど、今回の他メイン(金本カジモド川口フロロー宮田エスメラルダ阿部クロパン)と違って一人だけ「ん?」って感じだった。日本の方じゃないのかな?と思うくらい、彼が話すとそこかしこの意味がちゃんと届けられてない気がした。
そういう話し方のせいか、陽すぎるフィーバスというか、最後まで深刻さの薄い飄々としすぎたフィーバスというか。ある意味自己中でおいしいところだけいただく映画版フィーバスっぽい。でも歌は今まで見た清水フィーバス佐久間フィーバスよりうまかったかも。個人的には、繊細そうですごく人の痛みをわかってくれそうな佐久間フィーバスが大好きだわ。
何回も観てると好みが出てきてしまってよいこともありよくないこともあるなぁとそろそろ思い始める。でも「もうお腹いっぱい」ってならないのは、ノートルダムの素晴らしい音楽が聴きたくなっちゃうのと、最初と最後の素晴らしい演出(演者とカジモドの行き来・アンサンブルたちとのコントラスト)が見たくなっちゃうから。そこに尽きるような気がした公演だったかな。
【ノートルダムの鐘 5/26ソワレ】
カジモド 金本泰潤
フロロー 川口竜也
エスメラルダ 宮田 愛
フィーバス 光田健一
クロパン 阿部よしつぐ
【男性アンサンブル】
塚田拓也
安部三博
大空卓鵬
賀山祐介
高桝裕一
平良交一
佐藤圭一
大木智貴
【女性アンサンブル】
小川晃世
杉山由衣
時枝里好
小島由夏