Impressive Sounds

素敵な歌声や音楽を求めて。

まとめが雑だが素敵音楽が勝ち:Beetlejuice the musical 9/13

遅めの夏休みはニューヨークへ。ミュージカルは3本観て、その1発目がBeetlejuice。期待を裏切らずとっても楽しかった~!ゆえに?感想長いです。

あらすじは?と言うと、ベースはティムバートンの映画「Beetlejuice」をもとにしているので、大枠はそれ。私も映画とサントラで予習してから本番観ました。

※細かい設定や、ラストの結末は映画とは異なります。

日本でやってない作品ってネタバレ有無問わずあらすじもあまり豊富でないので、今回観たBeetlejuiceやHadestownは、全体のストーリーも別ポストでダイジェストできたらなと。

Beetlejuice Musical Broadway Trailer | First Look


まず、劇場に入った瞬間から雰囲気満点。ホーンテッドマンションみたいな少し不気味な音楽、暗めにしてあるけど照明は緑と赤であやしげ。緞帳には「Beetlejuice→」というネオンがぶらさがり、矢印の差す先には少しめくれた緞帳の隙間から緑の煙が出ていて、ビートルジュースが出てきそうな感じ。

日本のミュージカルってロングラン作品でもこういう作り込みはされてないし、今回これの他に見たHadestownやWickedは、舞台上は雰囲気づくりされてたけど客席やロビーはそれほど。6月にオープンしたばかりの「Moulin Rouge!」は真っ赤でネオンがギラギラらしいけど、Beetlejuiceと同じ監督が手がけたそうで納得。

playbillをもらって、特に代役の紙は挟まってないのを確認。念のため、入口のキャストボードの写真も着席してからしげしげ眺め、メインロール全てオリジナルキャストの出演を確信。嬉しい!


そんなこんなで始まる前からワクワクドキドキ、いざ始まったら、意外と音量はマイルドな印象で少し拍子抜け。ボーカルはいいのだけど、低音打楽器系がもっとビシバシきたらもっと嬉しかったかな。

と文句を言っておきながら、基本的にこの作品全体的に曲が好きなので、実際に目の前で繰り広げられる演奏・歌唱・演技・特殊効果…どれも楽しませてもらった。ずーっとYouTubeで見ていたものが現実になるというのは、いつになってもやはり感動的。


さてキャスト。まずはタイトルロールのビートルジュース、アレックス。この作品は彼無しには成り立たないんじゃないかと思わせるほどのハマりっぷりだと思う!

映画のビートルジュースは「まじで気持ち悪いゾンビおやじ」と個人的には思うのだけど、アレックスのビートルジュースは「ちょっと気持ち悪いけどかわいげもある小太りおやじ」って感じ。映画に寄せて歌うときも喋るときもちゃんと声潰してるけど、それでもどこかかわいらしくて憎めない。

小太りのくせに小走りうまくて動きが機敏。どこまでが台本通りでどこからがアドリブなのかはわからないけど、とにかく面白いことを(唾を飛ばしながらw)言いまくる。手元に収まるはずの小道具が滑り落ちてもそれさえネタにする。ちょいちょい自分の乳首触る。笑

タイトルに入れた通り、後半はストーリーがやや雑な感があって、特にビートルジュースの行動についてはそれが顕著なんだけど。アレックスのビートルジュースなら「うーんまあ、なんだかんだお人好しだし、おもしろおかしいことが全てみたいなキャラクターだから、こういう結末も有り得るのかな」とギリギリ許せる感じ。笑


そして実はビートルジュース並に出ずっぱりじゃん!という大活躍ぶりを見せてくれたのが、チャールズの娘、リディアを演じたソフィア。YouTubeでみたときからかわいくて、でもインスタとかみると大人っぽさもあったりして魅力満点で、彼女みるのもとても楽しみにしてた。

いやーしかしこの子、まだ17歳だって。意味わかんない(超ほめてる)。すごいの。歌のパワーがちゃんと最初から最後まで落ちずにいってくれるの。そういう指定なのか持ち味なのかは不明ですが、ロックな歌い回しが多いので、サントラ聴き慣れるまでは「ちょっとうるさいな」と思ったりもしたんだけど、いざ本物をみたら「これこそリディア!」でした。

リディアは母が亡くなってしまったばかりの女の子で、まず当たり前に悲しくて寂しい気持ちを持ち続けてる。加えて、母を忘れようとする父チャールズや、チャールズの恋人ですぐ「ハピネス!」とか言っちゃう脳天気系の女性デリアに、苛立ちや反抗心を持ってる。

ビートルジュース、チャールズ(彼はほんとはそんなに脳天気系の人間じゃないけど)、デリア、後述のアダムとバーバラ、つまりリディア以外のキャラクターはわりと明るい人たち。なので彼らの中で1人だけ、急に怒ったり悲しくなったり、でも最終的には「家族」を見つけて「Home」に帰るリディアも、ビートルジュースほどではないけど少しストーリーに「雑さ」を感じた要因ではある。

「それもまあアリかな」と思えたのは、ソフィアの演じるリディアが、「お母さんを忘れたくない」という気持ちにブレのない演技を見せてくれたからかなって思う。


変な人たちが多い中で、比較的平々凡々なのがアダムとバーバラのメイトランド夫妻。彼らのナンバーはふつうのミュージカルっぽくてある意味毒はないけど、「Ready Set」なんかはよく聞いてると大喜利大会のようなおもしろさがあるし、「Barbara 2.0」の力強さは素晴らしかった!

ロブ演じるアダムは、やさしくてとてもマイルドな夫。心なしか見た目も少し男らしさ少なめで、ビートルジュースにも簡単に騙されてしまうことに違和感のない感じ。ついこのあいだアダムを卒業してしまったようだったので、オリジナルキャストで見られた私はラッキー!

後任者もやさしそうな感じでアダムっぽさあるけど、ロブのほうがもともとの表情のせいか、ひょうきんな感じがあるのもよかったんだと思う。
https://www.broadway.com/buzz/196799/david-josefsberg-to-replace-rob-mcclure-in-broadways-beetlejuice/

ケリー演じるバーバラ、癖がないけど意志は何気に強い、いかにもよく居そうな女性としてとても自然でかわいらしかった。そして何より彼女のスコーンと抜けるような高音を楽しみにしてた!本物の突き抜ける高音、最高でございました。

バーバラの高音が最高なので「Barbara 2.0」はたしかに「Barbara 2.0」って感じなんだけど、「私たち夫婦はレベルアップしていかなきゃ!立ち向かわなきゃ!」ということを歌っているので、個人的にはやっぱりプレビュー時のタイトル「Maitland 2.0
」がいいんじゃないの?と個人的には思う。夫妻の苗字はメイトランドなので。


アダム(さっきまでの劇中のアダムじゃなくて俳優アダム・ダンハイサーのこと)演じるリディアの父・チャールズは、堅物にみえて実はプレイボーイ、という感じのキャラクターだった。マイルドなロブとは反対に、ヒゲのせいか黙って立ってるとちょっとこわめに見えるのがギャップで良かった。

チャールズはそこまで歌で参加してこないのだけど、その堅物っぽさ・妻の死を「なかったことにする」方向で乗り越えようとする人間らしさ・そしてリディアと向き合いデリアも加えて乗り越えていく家族らしさ…どの演技も破綻がなかった。ベースがコメディなのでそちらに押されてしまいそうなものだけど、彼のチャールズにはちゃんと物語がありました。

レズリーのデリアは、実はYouTubeやサントラでの予習の段階では「なんだこいつ頭おかしいな」という程度だったのだけど、実際そうでした(ほめてる)。いつも「私の先生のオーソがこう言うんだけどね」と繰り広げる名言が毎回見事に迷言で、さらにデリア本人も不思議系ハピネスちゃんだから、もうずっとおかしい。

正直チャールズはデリアの何が良かったのかはわからないけど、彼女やさしいのはたぶんほんとだし、誰に対しても意地悪な気持ちを持たないんだよね。たぶんそういうとこなのかな。そしてデリア、めちゃセクシーだし。

そう、よくわからなかったゆえにノーマークだったレズリーは、歌もダンスもおそらく劇中誰よりもインパクトがあり、個人的にはそのギャップで影のMVPと思ったくらい。デリアの「No Reason」は不思議系でありながらパワフルに歌い上げ、Act.2ではMiss Argentinaとしてラテン訛りの歌唱と大胆なダンスを披露。思い出しても「What I Know」ラストの反り腰決めポーズはすごい。

あーあと、ダナのスカイ(ガールスカウトの女の子)がとってもかわいくてとってもふざけていて、それも最高でした!彼女、生年月日的に30代半ばくらいだと思うんだけど、身長が低い上に幼い声で歌って演じて、も上手。すごくハマってる。「just gonna ring the bell of this creepy looking house~(このおかしなお家の呼び鈴をならしちゃうよ~)」のところのふざけ具合が楽しい。

ソフィアがお休みのときはダナがリディアやることもあるようで、それも大変に興味ありますが、ビートルジュースたぶん何年もロングランしないだろうな。。


大変に長くなってしまいましたが、ニューヨークに行かれる方で楽しいミュージカル観たい人にはおすすめの作品。タイトルに入れたとおり、ちょっとストーリーは荒いところがあります。それでも、私はこの楽曲たちが好きだったので、「やっぱり観て良かった!」が感想です。

劇中は結構早口で喋るところやおそらくアドリブ、スラングが多いので、原作映画はぜひチェックしてから劇場へ!


Beetlejuice: Alex Brightman
Lydia: Sophia Anne Caruso
Barbara: Kerry Butler
Adam: Rob McClure
Delia: Leslie Kritzer
Charles: Adam Dannheisser
Skye(Girl Scout): Dana Steingold
Maxine Dean/Juno: Jill Abramovitz
Otho: Kelvin Moon Loh
Maxie Dean: Danny Rutigliano

ネット記事とかだとスカイがキャストリストに入ってないことが多いんだけど、私的にはマキシーやオーソやジューノより好きなので、ぶちこんでおります。笑