Impressive Sounds

素敵な歌声や音楽を求めて。

「いい声」「歌うまい」をとっくに超えて:I wish. I want. ~NAOTO KAIHO sings Disney

「いい声」「歌うまい」なんて褒め言葉が陳腐に感じてしまうほど、どこまでもどこまでも歌の奥を目指す様が見えるような気がしました。


A Whole New World (from "I wish. I want. -Naoto Kaiho sings Disney")

というわけで、「やっと」というか、もはや「いまさら」だけど…。じっくり音源を聴くことができたので感想を。最近ライブもコンサートもミュージカルも行けていないので、音に集中するかつ文字に表すこと自体がわりと久しぶり。

全体的な印象でいうと、「声の裏返し」といったらいいのかな、ファンの方々は好きらしいそういう声は、全体的に随所に入っていたと思う。私はその「裏返し」が特別好きでもないので、半分くらい減らしてもらってもいいかなと思ったくらい。

声以外にオケにも触れると、オケはオケらしい音というか、破綻無く進行して耳当たりやさしくまろやか。そのぶん輪郭はどうしてもはっきりくっきりするわけではない。ので、個人的に打楽器や金管のシャープさもある程度ほしいアラジンのアップテンポ系ナンバーやヘラクレスなんかは、少し物足りないといえば物足りない。

でも全体を聴き終わってみると、たぶん1曲1曲に最適化した歌声・オケもしくはバンド演奏にしてしまうと、アルバム1枚を1つの作品として通して聴くときに調和が崩れるんだろうなぁとも思えた。作品ごとのいろいろなテンションを紡ぎ合わせながらつくったから、こうできあがったのだろうなと。だから、まとまり感はばっちり。

あとは曲ごとに。タイトルはユニバーサルのサイトからコピペさせていただいたため、「*」がついているのはオケ編成、「☆」がついてるのは日本語歌唱です。

■01. Aladdin Medley *☆
  -Overture
  -One Jump Ahead
  -Proud of Your Boy
  - A Million Miles Away
  -Somebody’s Got Your Back
  -A Whole New World
  -Act One Finale

Overtureについては、オケの長所短所が私には顕著に感じられて、音数が豪華なのはいいけど、打楽器系の音がもっとがっつり聴こえたらとっても好み。One Jump Aheadの歌い方、チャラさ増し気味のアラジン?芝居強めの歌に聴こえるパターンと芝居控えめの歌に聴こえるパターンとあるけど、後者に感じた。この曲については前者パターンが好きだな。

続くProud of Your Boy、「馬鹿にされても」の子音の「B」が強烈なのが印象的。A Million Miles Awayのサビへ向けての高揚感がとてもよくわかって、こちらまでわくわくする。原曲の音階が秀逸だというのはもちろんだけど、やっぱり歌う人でわくわく度合いも違う。一瞬デュエットで出てくる咲妃さんの声の可愛らしいこと…!さらに興奮。

Somebody’s Got Your Backはおちゃめな感じが出ていて楽しい。まあできれば複数人で歌ってくれたらもっと楽しい。A Whole New Worldは咲妃さん歌ってくれないの!?と思ったけど、09のほうでデュエットなのね。そしてシメのProud of Your Boyでもやはり子音というか、「息子に」の「m」を強烈に発音して聴こえた。


■02. If I Can't Love Her(Beauty and the Beast)*☆

この曲は個人的にさほど聴きこんでいないのと、もともとバックに鋭い音が鳴ってほしいというよりも荘厳な音の重なりが合うなぁと感じて、オケ編成がすごくしっくりきた。そしてとてもドラマティックで素敵な曲だなと。美女と野獣を一度も生で観たことがないので、観てみたくなった。

ライブでも海宝さんが歌うこの曲は好きだなと思っていて、少し落ち着いた年齢の青年が、震えるくらいの胸中の想いをひたひたと吐露している情景がうかぶ。ラストの「滅ぼせよこの身を」は、歌よりもオケが盛大にあおって聴こえた。あぁ美女と野獣観てみたい。


■03. Colors of the Wind(Pocahontas)☆

ライブでも聴いたことがあるしそのときから思っていたけれど、女性らしい表現がどうしてこんなに巧みなのだろう。長い髪を揺らしていそう、とか、しなやかな所作で歌っていそう、とか、そういう連想ができそうなくらい、とても魅力的。音の高さとかいろいろいじったら、きっと本当に女性の声に聴こえるだろうと思う。このアルバムの中でもしかしたら一番好きな曲かもしれない。


■04. Go the Distance(Hercules)*

これもライブで何回か聴いていて、今回音源も聴いて、その度に同じ感想をもつのが、「どうしてサビの高音がちゃんと当たって聴こえないんだろう?」です。しばらく考えて思ったのが、I'll be there someday...でいうと、「there」の中で音階をカチッと上げずになだらかにしてるからかなあ、と。

そもそも実際は音域的にも限界ではないしちゃんと音当ててるんだけど、私の耳だとなだらかな部分を拾ってしまって「当たってない」と感じてるのかも。ラスサビのあたりで出てくるさらなる高音はちゃんとカチッと上げているのか気持ちいいくらい当たっている感じがする。盛り上がりもとてもよくて、オケ編成で豊かな音の構成になっているのが嬉しい。

あとこれはこの曲に限った感想ではなくて英語歌唱の歌に比較的あてはまる個人的感想ですが、発音がとっても丁寧。きっとご本人の話される英語はもっと軽やかなんじゃないかな勝手に想像しているのだけど、そういう軽やかな歌い方をしているのも聴いてみたい。


■05. So Close(Enchanted)*☆

前からライブで聴くたびに思っていたのだけど、この曲は男性女性どちらの側から歌っているとかあるのかな?歌い出しはとても女性っぽさを感じる歌声で、それがたまらなく好みです。1番サビ中盤から男性に寄って気がするけど、つぶやくように歌うところはまた女性に戻ってくる気もする。

ラスサビではドラスティックなまでの緩急のつけ方で、しかしそれを不整合なくつないでるのがすごい。「あなたのいない~」での聴くのもやっとな失意の声から「もうあと少しで~」の「う」と「あ」の間の声のかすれというか裏返りに現れる泣きそうなほど切実な感じ、そして最後の「美しい夢~」以降のやさしいビブラートでは「きっと涙したのだろうな」と瞼の裏で勝手に描いてしまうほど。

この曲はオケのアレンジがいろいろなところに細やかに入っていて素敵。特に間奏で細かく鮮やかに華やかに彩るような音がするのは、フルート?何羽もの白い鳥が弧を描きながら、空に高く高く舞っていく絵が見える気がする。この曲はかなり、情景が浮かぶ。


■06. Santa Fe(Newsies)*

英語歌唱の曲なので、やっぱり丁寧な感じ。軽やかバージョンがあれば聴いてみたい。ラストのほうはもうずっと泣いて訴えているような声で歌っていて、ラストのロングトーンは苦しくてどうしようもなくて抑えきれない心の叫びという感じで、聴いているこちらもしんどい気持ちになるほど。


■07. Something to Believe In(Newsies)* duet w/ Miyu Sakihi

咲妃さんの声、好きだなぁ。爽やかな風にのせてマイナスイオン届けてくれるような裏声もいいし、地声と裏声の間も本当に耳心地よい。少し台詞っぽく歌うところは、歌というよりはもう台詞という感じで、可愛らしい声。07のこの曲と09のホールニューワールドとを比べると、こちらの曲のほうが可愛らしい声、09のほうが少し大人びた声に聴こえる。

海宝さんの歌い出しもとってもやさしくて癒される。ぽつりぽつりとつぶやくような1番に比べて、2番では流れるように歌う進行に変わるせいか、海宝さんの「That's OK」より咲妃さんの「That's all right」のほうが説得力を感じるというかなんというか。感覚的に「うん、大丈夫」という納得感があったかな?

最後は2人のハモりになっていたのだけど、どうしてだろう、2人ともノイジーな声を出しているわけではないと思うのに、ロングトーンの耳触りに違和感があった。咲妃さんがハモりボイスになっていることは間違いなかったので海宝さんの地声がガサガサしてるのかとも思ったけど、もちろんそんなわけないし。もしかしたら咲妃さんパートも地声でがちっと同じ強さで声を出しにいったほうがきれいに聴こえる、とかいうこともあるのかな?というか自分の耳がおかしい??


■08. Proud of Your Boy(Aladdin)*

英語歌の中では比較的軽やかに語るように歌われていて、聴きやすいなぁと思った。01のメドレーよりもけっこう「若い」アラジンに聴こえて、なんだかその少年に戻ったような語り声がとても素敵だった。「Mom...」のつぶやきとか。


■09. A Whole New World(Aladdin)*☆ duet w/ Miyu Sakihi

海宝さんの感想メインのはずが、咲妃さんが登場するトラックは「咲妃さんの声すてきーすきー」が先行してしまう(笑)。07.で書いたように、こちらはほんのり大人な女性に寄せて歌ってらっしゃる…ように個人的には思う。「心が躍る」を、「おどーる」と歌っていて、実感込めて音を置いて歌っているところもとても好き。

海宝さんのハモりのアレンジ(アレンジじゃなくて譜面どおりかもしれないけど)もかなり好みで、「夢のような」とか「いつまでもふたりで」に出てくる、半音だけの細やかな装飾音譜がたまらなく好き。海宝さんの声もやわらかいし咲妃さんの声もやわらかいし、とてもとてもマッチしていて聴いていて癒される!


■10. Out There(The Hunchback of Notre Dame)*☆

ノートルダムの鐘のサントラ版が絶望から始まるとしたら、こちらは諦めから始まる感じ。全体的にはきっとサントラ版よりも心の余裕をもたせているのだろうけど、ところどころの語気が強くなるのを聴く度に、2017年年始に海宝さんカジモドで観たときのヒリヒリするような感覚がよぎる。

もうどんな声で歌っていたか、どんな表情だったか、具体的に書き表せるほど記憶留めていないけど、そのときの観劇体験が衝撃的だったことだけはずっと残っている。

■11. Someday(The Hunchback of Notre Dame)☆

適切に表現できているかよくわからないけど、慈愛を感じる歌というの?そんな感じ。本編では死に向かうエスメラルダが歌うけど、このトラックは死んだあとのエスメラルダが歌ってるような気がした。たとえるなら海外レミゼ絶唱系ファンティーヌが生前のエスメラルダで、日本レミゼの儚くてか弱いファンティーヌが死後のエスメラルダ(伝わらないかな)。

ちなみに海宝さんのは、死後のエスメラルダの穏やかな祈りといった歌唱でありつつ、すぐには叶いそうもない諦念のようなものもまじっているような気が勝手にしている。


■12. How Does a Moment Last Forever?(Beauty and the Beast

セリーヌ好きなので、この曲を歌ってくれて、しかも収録してくれて、嬉しい。これ以前のトラックでも女性の歌がとても魅力的だと書いていて、この曲も多分に漏れずそうで、その中でも落ち着いたマダムをイメージするような歌。これも英語なので、もう少し軽やかだともっと好みかも。

最後のほうに出てくる「Minutes turn to hours, days to years and gone」が、歌詞の意味も相まって、個人的に最たるグッとくるポイントだった。turnの裏返りからのhoursの揺り戻し、少しずつ花が朽ちるようなdays to years and gone…たまりません。

この曲で終わることで、私からすると「少し切なくてなんともいえない気持ちで幕が下りるアルバム」という感じなのだけど、「ちょーハッピー!」だけで終わらないところがある意味海宝さんっぽいかも、なんて勝手に思っています。


アルバムの感想ここまで。書き始めるとつい冗長になってしまうな…。


最後に海宝さんの生歌を聴いたのはたぶんイヴサンローランが最後で、あの作品1回しか観てないうえに曲が難しくて歌声をあまり堪能する余裕がなかったから、久しぶりに生歌聴いたらきっと感動しきりだろうな。夏のコンサートはできれば行けたらと思っているので、楽しみ。