Impressive Sounds

素敵な歌声や音楽を求めて。

大きくてクラシカルなシアターで観る醍醐味が詰まってる!:42nd Street 8/25@Theatre Loyal Druly Lane

これ、書きかけで置きっぱなしになっていた!歌ではなくタップダンスがメインの作品なのでダンス経験のない私には見たことを書き表すのが難しい&さすがにもうことこまかなことは覚えていない…。とはいえこの滞在で一番「あー王道のミュージカル観た!」という満足感を得たことは間違いないので、今更ながらささやかながらup。

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2018年夏のロンドン3泊5日弾丸旅行。1晩に1本見る感じで3つ観賞。最後はコチラ、42nd Street!ロンドンラストの夜を飾るにふさわしい、ハッピーでゴージャスな作品だった。


42nd Street on ITV's Tonight at the London Palladium

たしか去年のウエストエンドでのオープンくらいからYouTubeで動画を見つけてて、こんなに華やかなタップダンスは一度観てみたい!と思っていた作品。とにかく冒頭のAuditionのシーンが好きだし、ラストのブロードウェイ作品の電光看板がたくさんぶら下がる中でのダンスも大好き。珍しく音楽二の次でタップダンスに魅了されちゃった珍しいパターン。

これも事前にネットでチケットとっていて、グランドサークル前から2列め、ちょっと視界に手摺が入るゆえのお値打ち価格35ポンド。大きい劇場なので出演者の表情を肉眼で捉えるのは微妙だけど、この作品はダンスや全体のフォーメーションが楽しめれば◎だったので、私にとってはとてもいい席だった。

さて、以下つたない感想いきます。あらすじはWikipediaでお願いしますすみません。

まずタイトルにも入れたけど、豪華なシアターと古き良きJazzyな楽曲がとてもマッチしていて、とにかくその雰囲気がとても楽しかった。前々日にキンキーブーツ、前日にウィキッドを観ていたけど、音響も一番良かった印象。何が違ったかなと思うと、おそらく「生っぽい音」に聴こえたなと。サックス、ラッパ、ドラムスなどビックバンドの生バンド感が、そのまま音としてグランドサークルまでいい意味でふわっと上がってきた感じ。ティンパニがいると奥行きが出ていいなぁと。

タップダンスはどうしてもタップチップの音をマイクが拾う関係でバンドほど生音感はさすがになくて音は鋭め。どうせマイク通すならもう少し角のとれた音に調整していただけたら耳にやさしかったかも。人の歌声は生音感も機械音感もなく、聴きやすかったかな。みんなあのダンスしながらなぜ歌えるのか、ダンスも歌も素人の私からしたらとっても不思議な偉業。

あとこれはこのカンパニーに限らずこの作品をやればある程度みんなこなすことだとは思うけど、趣向をこらした演出や装置、ダンスの見せ方がおもしろかった。舞台上部から鏡のような装置が下りてきて、舞台上で横になりシンクロのようにダンスをするダンサーたちを映して万華鏡のようにしていたり(42nd Streetの映画で取り入れられた「バークリーショット」というらしい、その後のミュージカル映画に取り入れられるようになるほどスタンダードになったんだとか)。「Honeymoon Express(ハネムーンエクスプレス)」という名をつけた列車に乗っているように見立てて、小窓全てに配されたキャストが歌や振付やリアクションをしたり。

キャストについての感想は…、登場人物多すぎて本当にメインのキャストしか追いつかなかったというのが正直なところ。男性キャストにはあまり特別感想がないかも。。どうしても華やかなダンスも華やかな衣装も、女性のほうが目立つ作品だと思うので。

この人良かった!と思ったのは、ドロシー役の方。ステフ・ペリーさんでいいのかしら?ドロシーは美人でベテランで実力はあるけど旬は過ぎていて…という感じがちゃんと伝わってきて、「困ったプリマドンナだな」というのに納得感があった。歌もダンスもできて、だけどわがままな感じ。

終盤ペギーに親切にアドバイスするところなんかは唐突にも感じたけど、これは演じ方じゃなくてそもそもの脚本がそういう流れになっているからだなと思った。そんな流れを、過剰すぎず適度にやさしくなったドロシーといった感じで演じていて、「この大味(悪い意味ではないです)の世界観のキャラクターなら若干唐突なリアクションをしてもまあおかしくないな」と思わせてくれた。最初から最後まできちんと大御所感があり説得力ばっちり。

あとは、ペギーの見方になってくれるコーラスガールたちの筆頭、おそらくキャストリストだとアニーとして表記されてる方。エマ・カフリーさんかな。冒頭のオーディションの場面での我が強い感じ、でもペギーの実力と人柄を認めてくれて助けてくれる感じ、どれも絶妙で、かなり目を引かれた。個性あるキャラクターとしての存在感があった。この作品は歌もダンスもできる人でないと厳しい役ばかりだと思うけど、メインキャストよりはアンサンブルに近いダンス量をこなしながら歌うのはこの人が一番大変なんじゃないかなと思った。

ひとつ誤算だったのは、主役のペギーがアンダーだったこと。読み方合ってるか不明だけど、ハンナ・フェイス・マランさん?タップダンスに詳しいわけではないのでたまたまそう聞こえただけかもしれないけど、タップチップの音がちょっとクリアじゃないような気がした。タイミングというかステップが時々ずれて聴こえた箇所もあったような。ただ、お顔は若々しくスタイル的にもすらりと可憐な感じで、田舎から出てきたうら若い娘という風貌にぴったりだったのはとても良かった。YouTubeみてると本役の方のほうがわりとお顔が大人っぽいし、がっつりタップを踊るせいかどちらかというと筋肉質でしっかりして見える。

キャストについては調べれば調べられたかもなんだけど、「登場人物多すぎてどの人がメインキャストでどの人がアンダーか調べてる暇がないや」「一番人気で盛り上がる土曜の夜公演を観にいけばアンダー率低いでしょ」と踏んだのが甘かった。まあでも初見だし作品もダンスも詳しくないから、ビジュアル的に好みのハンナさんで結果的に良かったかも。

今回全然歌とか音楽のことがほとんど書けてないけど、そのあたりはYouTubeで補完ということで。。笑


少し前に韓国でも韓国人キャストでこの作品を上演してたみたいだけど、イメージ的にこの作品は欧米系のダイナミックなパフォーマンスで観たいかも。歌やダンスがいくらうまくても、どうしてもパッと見たときのしっくり感は超えられない壁がある気がする。

いやしかしロンドンでやってたの観られて本当に良かった。ロンドンは来年初頭にクローズのようだけど、ツアーとか回らないのかしら?来日したら2回くらいは観るし友人知人にも宣伝するので、ぜひお越しくださいお待ちしております。笑


Cast List
Dorothy Brock:Steph Parry
Julian Marsh:Tom Lister
Peggy Sawyer:Hanna-Faith Marram
Billy Lawor:Ashley Day
Maggie Jones:Jasna Ivir
Bert Barry:Christopher Howell
Part Denning:Matther Goodgame
Andy Lee:Graeme Henderson
Abner Dillon:Bruce Montague
Mac / Doc / Thug:Thomas Audibert
Annie:Emma Caffrey
Phyllis:Clare Rickard
Lorraine:Ella Martine
Oscar:Paul Knight

どうか素敵なクリスマスを:海宝直人 in concert

ここしばらくミュージカルもライブも行ってなくて、だからけっこうワクワクして行ったコンサート。夏のバースデーコンサート以来かな?久しぶりに海宝さんの生歌を聴いてきた。

全体感としては、もちろん相変わらず素晴らしい歌唱力。そして表情が見えていたわけじゃないけど、とても楽しそうに歌ってた印象。ただ、(私の好みの)高音域が少なめだったなあというのと、ちょっとした音の端々の輪郭の曖昧さを感じたような気もした。一昨日まで風邪で壊していた私の耳で聴いてたからかも。

あと、上記を抜きにしてもなんかまた声の感じが変わっていきそうな気がした。よりマチュアに、深くなっていきそうな。少し青さの残る声が好きだから、切ねぇ、切ねぇです…でもやっぱりお歌素晴らしいからこれからも聴きます。

以下、Twitterで拝見したセトリを参考に見ながら感想を。
※「こう歌ってた」じゃなくて「こう聴こえた」なので、あしからず。


・Heaven on Their Minds
ジーザスのダークなメロディラインをモチーフにしたオーバーチュアからスタート。ロックのライブ始まるのかしらと思うくらい不穏でちょっとびっくり。ジーザス~をみたことないせいか前回も今回も実はあまりピンときていない曲。会場の歓迎はすごかった。

・Waving Through a Window
ぜひ聴いてみたい!と前々から思ってたから前奏始まったところでテンションup。ただこれが思ったような声を使っていなかったので少し意外だった。若さ、もろさ、不安さ、みたいなものを高くて細くて切実な声で歌ってほしかったというか。私はベンプラットの音源になれてたからそういう歌を聴きたかったのだけど、今回はそういう線形の声は使わず面で押していくスタイルだったように感じた。海宝さんに出せない音はないに等しいと思ってるので、これがオリジナリティというやつなのかな。

・Postman Medley
ストーリー説明にもメドレー自体にも時間を割いてた感じで、彼にとって大切な作品なんだなというのがわかる。パウロ?パオロ??のインスピレーションの曲(ポストマンの曲、どれもタイトルわからないのでざっくり)は開放的で、ソフィアの未完成の絵の曲は落ち着きとやさしさがあった。一人で全てを歌っても破綻がないというか、どのキャラクターも当たり前に描き出されたのがすごい。ただこれも細い声を使わず面積広めの声での歌唱だったので、個人的な好みだとYouTubeで聴ける水野貴以さんの弦をしなやかにこするような高音のほうが好き。

・Til I Hear You sing(日本語歌唱だけど邦題失念)
The Phantom of the Opera
ラブネバーダイズ観たことないのだけど、ファントムは今日の海宝さん(高めの音域を鋭く出さない、比較的中低音域をたっぷり鳴らす)の歌い方だととってもハマっていて素敵。しっかり聴かせつつ、ファントムの苦悩も見えた気がして、出演しているのを観てみたくなった。オペラ座の怪人はバイオリンとデュエットしていてクリスティーヌのソプラノまで出ていてすごかったけど、これが「歌う」じゃなくて「音を出す」に感じた曲。

なんかジーザスとかファントムとか、発声のレベルが理解の範疇を越えている~と思った。それゆえか、「地声に近い音量で高い音を出す」ことがゴールに見えて「歌」には感じなかった。ソプラノボイスを皆さん楽しまれていたようだけど、私には「歌ってる」感じにはきこえなくて「ビブラートが激しい高音」に感じて耳がつかれたかなぁ。やっぱり病み上がりで耳が敏感だったせいかも。そうそう、外タレさんて直線的に伸ばした後に声を揺らしていくけど、海宝さんは最初から声の揺らしを入れてる。

・Poland Medley
・愛の賛歌
・I’m here
ポーランド語が難しそうということだけわかった…難しかった笑。愛の賛歌がとてもやさしくて包容力のある深い歌声で素晴らしかった。これが一番感動したかもしれない。声音としてはチェロのようなバスクラリネットみたいな、ゆったりとした響きで息しっかり。I’m hereは昨年4starsでシンシアエリヴォ本人を聴いてしまったので、あの音調と力強さで歌ってもらわないとピンとこなくなってしまったという贅沢な悩みに気づいた。我ながら贅沢すぎる。


・Aladdin Medley
・Santa Fe
ここから2部。カジモドしか観れていないので、なにげにOne Jumpがチラ聴きできてよかった。理想の息子を聴きながらなんとなーく会場見渡しながら思ったのは、海宝さんはだれからも愛されるみんなの「proud of your boy」なんだなってこと。ただ、アラジンにしては少し素直さが影を潜めて地が飛び出ているような気がした今日でした。Santa Feは夏もやっていたなと。耳触りのいい歌い出しからの美声大放出。

・クリスマスメドレー
・陽ざしの中へ
・いつか
クリスマスメドレーはおしゃれ。歌い方のtasteは少し濃いめ?発音良すぎるゆえそう感じたのかも。そして陽ざしの中へ、いつか、ともにノートルダムから。歌い込んでいるからというのもあるし初めて観た作品だからというのもあると思うけど、やっぱり私はこの人のカジモトに心奪われるなぁと。感情移入がすごく、さながら本公演のような心の萎縮と解放があった。抑圧された心を表す声音や、溢れ出て吐露するどうしようもなさに、ぐっときた。いつかは、カジモドが歌ってると思ったらもう平木さんのソプラノボイスでフロリカ流してほしくなる。笑

・Sheridan Square
もともとはピアノアレンジのみだったSheridan Square、それだけでも十分素敵。それをさらにオーケストラアレンジにしてしまう、しかもまとまりがあって美しいという。森さんって指揮もピアノもアレンジもできるし、なんとはなしにいつもサポートメンバーとしているけど、毎回この人の演奏もっと聴きたいと思う。歌については、やさしくて、そばにいる友達を話しかけるように歌って見えた気がした。

・December 1963
ジャージーも観てないのだけど、オーディエンスの盛り上がりすごかった。確かになんだか楽しくなるね。ただ、What a nightの最高音の正解がよくわからなくて、どうも違和感あったかな?

・Gethsemane
・Christmas is My Favorite Time of the Year
アンコールはこのふたつ。ゲッセマネジーザスのくだりで触れた通り。観たことないしキリスト教の素養がないのでどうしても感想に乏しい…。あとどうしてだろう、シャウトの声は確かに出ているのに、これも歌に聴こえず音に聴こえた。クリスマス~はアバグネイルJr.とハンラティ、どっちも浮かんで微笑ましかった。Catch Me~、アーロントヴェイトがやっていたYouTubeみたことある。海宝さんできそうだなぁ。


私の耳の調子ゆえ?、少し不思議な声や音や楽器の聴こえ方だったかも。声量豊富すぎてもうちょっとマイクの音量下げてと思ったくらい笑。ご本人楽しそうだったし歌わずにはいられない性質なのだろうけど、たまにはお休みしないのかなぁ。勝手に私の想像した歌い回しじゃないところがあったというだけなんだけど、私だったらあんなにずっと活動していたら擦り切れそう。笑

日夜歌い演じて素晴らしいものをみせてもらえることに感謝をこめて、どうか素敵なクリスマスを!

歳を重ねる毎にグリンダに感情移入が強くなる:Wicked 8/24@Apollo Victoria Theatre

2018年夏のロンドン3泊5日弾丸旅行。1晩に1本見る感じで3つ観賞。2つめはウィキッド。通算9回目の観劇でした、意外と10回いってなかった。笑

私の中では曲、ストーリー、セット衣装の総合バランス的に不動のNo.1作品。今までもこれからもきっと好き。


Wicked UK | Official Trailer

これも事前にネットでチケットとっていて、1階ストールズの前から2列目最上手から1席内側、40ポンド強。表情までよく見えるし前の席の人の頭もほとんど気にならないしDefying Gravityなどでの見切れもないから私は良い席と思ったけど、初見にはおすすめできないかも。

私は何度も観てるから多少見えなくても問題なかったけど、

・No One Mourns The Wickedではアンサンブルがステージ手前までくるのでグリンダやエルファバ両親のシーンが見えない
・マダムモリブルやボックが上手セットの上でアクトするときは近すぎて顎を見る感じ
・ドロシーへの道案内するグリンダのシーンは全く見えず声だけ聴く
・話を追うのに支障はないけど、ドラゴンもかなり真上なのでいつ動くか知ってないと意外と見逃すかも

などなど。繰り返しますけど悪くない席、こういうのが些細と思うのであれば。そうそう、スピーカーが目の前なので楽器隊の音がとてもいい!ネッサの嵐のときなんか地響きレベルの音が出ていて、大音量の映画館みたいだった。歌声はそこからは出てなかったので、ステージ上の真ん中に吊ってるスピーカーから出してるのかも。

※キンキーでも書いたけど、Seat Planというサイト、ロンドンの主要な劇場の座席からの写真をユーザーが投稿するサイトで、超お役立ち。

今回とっても近かったから、アンサンブルさんたちのダンスも「群舞」ではなくて個々の「ダンス」と捉えてみることができてよかった。男性陣ってどうしても特徴が掴みづらいのだけど、女性陣でいうと赤毛の女性とひっつめヘアーの女性が、芯がありながらしなやかなダンスをしていて目が幸せだった。この作品はアシンメトリーなデザインの衣装とそれが揺れるダンスも楽しめるなとつくづく。

人力で動かすドラゴン、Dancing Through The NightやOne Short Dayでパッと華やかになる電飾、もちろんエルフィーが舞い上がるセット。ど頭の音楽、What Is This Feeling?のファニー感、No Good Deedのどうしようもないダーク感。好きがいっぱい詰まった作品。

そして海外では圧倒的な声量と歌唱力も堪能できるし、やっぱりゴージャス感も違うし、大きな拍手や笑い声や歓声・指笛もすごく盛り上がる。ただ、エルフィー誕生シーンでの爆笑は、日本人の私にはどうしても心からは笑えないけど(「ハハッ」くらいの笑いにはなってきた)。笑

さて、今回特に良かったキャストはソフィ・エヴァンス演じるグリンダとメラニー・ラ・バリー演じるマダムモリブル!アリス・ファーンのエルファバも悪くなかったのだけれど、こちらはもっと私好みのキャストが歴代たくさんいるので。

まず、ソフィのグリンダ。劇団四季のグリンダでガッツある人は見たことがないけど、海外グリンダってけっこうお胸があるせいか腕ががっちりしている(そして割と足もがっちりしている)人が多くて。しかしソフィはクリスティン・チェノウェス系のお胸ありつつも手足の細い可愛いグリンダで、まずビジュアルがとても良かった。

歌声は、高音はそこまでストロングではないのでときどき若干ハモり負けしそうな気配があったもの、十分良かった。地声と裏声をあからさまに行き来するといったことはなかったし、高音の多いグリンダでも「うるさい」と感じさせないストレスレスな発声だった。

そして特によかったのがキャラクターづくりや演技。NOMTWでも笑顔の合間にすごく不安そうな顔や、エルフィーを悪く言われて悲しそうな顔をのぞかせて。学生時代は本当におバカなブロンドという感じで、Popularをはじめとしたファニーなキャラクター造形がとてもハマっていた。二幕でいろんな経験を経てのラスト「I'd like to try to be... Glinda the Good.」なんかもう…。どんだけ辛い決断をしたんだあなたは!と声をかけてあげたくなるくらい、複雑な顔をしてから決意の顔になる強さが際立っていた。

そしてもう一人とっても満足度の高かった、メラニーのマダムモリブル。彼女も衣装からしてまずとても似合っていた。時々マダムモリブルって、バカ殿みたいなメイクになっちゃってる人とかいるから…。あとスタイルが貧相すぎても衣装がマッチしない。そういうところもちょうどよかった。

シズ大学の先生としてニコニコ良い人そうに、面倒見のよさそうに見せておきつつ、去り際、最後の最後に目がこわいのがとっても良かった。マダムモリブルにあまり歌のうまい人がいてももったいないようにも思うんだけど、この人は二幕でも重要なカギを握るのでしっかり歌ってほしい人。そこも、しっかり旋律をなぞって歌ってくれていたし、凄みをきかせた声やエルファバの悪評を伝染させるときや悪役らしいシャウトなど、やっぱりダークさを出すのが上手だった。

アリスのエルファバは、けっこう怒ってるイメージが強かった。Youtubeでチェックしたときはあまり好みでないエルフィーだと思ったけど、怒りっぽさがあるとはいえ、見て見れば比較的王道のエルフィーだった。Defying Gravityでは「Take a message back from MEEEEE!」がやっぱりうるさかった感じで、ちょっとe音のビブラートが大きいのに細かくて耳にやさしくなかった。陽より陰がうまいエルファバなので、No Good Deedの影のある大人な女性の動揺と怒りは素晴らしかった。

他キャストはそんなに良い印象も悪い印象も強くないかな。ただ、女性陣は比較的安定感あるキャスティングなことが多い気がするのに、なんでウィザードって安定してイマイチなんだろう?ロンドン、シドニー、日本と3箇所で見てきたけど、良かったなぁと思ったウィザードは日本で1回みた人くらいだったよ(劇団四季の…どなただったかは忘れてしまった)。あとエルフィーパパも80%くらいの確率でイマイチな気がする。

フィエロは、及第点という感じ?特別歌が上手いわけでも下手なわけでもなく、ダンスも特筆するところはなく。まあ私がフィエロのダンスをジャッジできるのはカカシダンスの一瞬だけなのだけど…。フィエロといえば、オフブロードウェイのヘザースでオリジナルJ.D.だったRyan McCartanが、Wickedのフィエロ役でブロードウェイデビューだそうな。まだ25歳…ヘザースの頃は20歳そこそこだったんだぁすごいわぁ。

今回9回目の鑑賞だったWicked、10回目はどこかな?ブロードウェイでも観てみたい気持ちはあるのだけれど、ウエストエンドよりだいぶチケットがお高い感じがするんだよなぁ。。何か仕事があればそのついでに行けたらいいのに。

Cast List (in order of appearance)
Glinda:Sophie Evans
Witch's Father:Rhidian Marc
Witch's Mother:Jennie Abbotts
Midwife:Kerry Enright
Elphaba:Alice Fearn
Nessarose:Rosa O'reilly
Boq:Jack Lansbury
Madame Morrible:Melanie La Barrie
Doctor Dillamond:Chris Jarman
Fiyero:David Witts
The Wonderful Wizard of Oz:Andy Hockley
Chistery:Chris George

ライブハウスのショーに来たような盛り上がり!:Kinky Boots 8/23@Adelphi Theatre

2018年夏のロンドン3泊5日弾丸旅行。1晩に1本見る感じで3つ観賞。まずはキンキーブーツ。

去年来日公演も日本人キャスト公演もやってたけど、YouTubeで見たシンディローパーの曲がいまいちなじめず行かずじまいだった作品。しかし周りには来日公演やNYで観た人が何人もいて、口を揃えて絶賛するので、すすめられるままにチョイス。


Kinky Boots | West End Live 2018

エストエンド公演は2019年1月でクローズらしい。アデルフィシアターは小さい感じで、それはロンドンの劇場ってどこもそんな感じのところが多いんだけど、ここは特に舞台の横方向の長さが短い気がした。

事前にネットでチケットとっていて、2階ドレスサークルの1列目上手。深く腰かけると若干演者たちの足元が見切れるけど、当日並ばずに済んでほとんど障害物なしでこのビューで40ポンドちょいなら全然OK。
Seat Planというサイト、ロンドンの主要な劇場の座席からの写真をユーザーが投稿するサイトで、かなり役に立った!

感想、なじめなかったシンディローパーの楽曲は生で聴いたら歯切れがよくてすごくテンション上がった!すごく盛り上がる!あちこちでたくさんの拍手や「ヒュー!」「フゥー!」が発生するのもやっぱり海外観劇の醍醐味。さながらローラたちのライブのよう。

衣装は小さいハコで見るせいか意外とゴージャス感や完成度はさほど…という感じ。下町の靴工場の話なので、ローラとエンジェルズ以外は普段着っていうせいもある。セットはEverybody Say~のベルトコンベアが少し変わったセットだったかなというところ。

この作品はとにかくローラがメインなのかなーと思ってたけど、チャーリーが清涼感あるハイトーンやわらかめボイスでとっても好きな声だった!個人的にMatthew James Thomas系かと。

チャーリーの演技については、後述するけどお話自体のテンポがかなり早かった印象なので、伝わりやすい演技には見えなかったかなぁ。私が観た公演はアンダーのジョーダンがやってたから、メインのオリバーだったらまた印象違ったのかも。

もちろんローラの存在感はばっちり。Land of Lola, Sex Is In the Heelはもちろん、Everybody Say Yeah のソウルフル?ゴスペル?な歌い回しもしびれるほどかっこよくて、こういう曲はやっぱり海外キャストの歌で聴きたいなと思った。それからドラァグクイーンゆえ、下ネタ的なものもちりばめれていて、それっぽいことを言うと鳴る「チーン」の音もナイスタイミング。

ただ、2幕のローラソロの場面、大変申し訳ないことに眠くてよく覚えてない…会場の拍手と歓声はあったような気がする。チャーリーのソロも同様、惜しいことをしたけど、到着日の疲れには勝てなかったなぁ。

あと、特にキャラクターとして面白かったのがローレン。演じていたナタリーはエルファバのアンダーだった頃の音源を聴いたことがあって、そのときは高音だけ突然抜けるようなスコーンとした歌声がとっても印象的だった。今回観れて嬉しい。

歌はエルファバをやっていたくらいだから、キンキーで出てくるくらいの高音域なら楽々という感じ。ファニーで強めの声で終始歌い演じていたのがとっても良かった。

エルファバと違ってキンキーのローレンはかなりコメディな役回り。ドライヤーで脇乾かす、恋する様子を歌いながら舌をべろべろetc…。キンキーはロンドンの下町の靴工場という設定だけど、このキャラクターはアメリカンコメディによくいるファニーな女性という感じ。

その他耳触り的に良かったなぁと思うのは、The Most Beautiful Thing in the Worldの子役チャーリーの幼くて可愛らしい声とか、その曲中に大人女性陣が応酬するI Know~。たぶんナタリー以外にも強めのアタックで高音を歌える人が揃っていて、はまり具合がしっくりだった。あとはRaise You Upのハーモニー。

お話の進みとしては、映画で予習してはいたのだけどかなりテンポが早かった。ブーツをつくろうと決めたところ、チャーリーと恋人との亀裂やいつの間にやらのローレンとのくっつきエンドなど、ちょっとついてけなかったな。あと、ローラのボクシングのところも映画にはなかったような。

まあそのあたりは置いておけるくらい、ライブ感覚で歌とダンスが楽しめる、明るく終われるいい作品だと思った。日本人キャスト公演だとどんな感じになるのかな?というのが、今回ウエストエンド公演を見てめっちゃ気になる作品でもありました。

Cast List (in order of appearance)
Mr. Price : David Haydn
Young Charlie : Jude Muir
Young Lora : Samson Wakayu
Simon Snr : Momar Diagne
Nicola : Suzie Mcadam
Charlie Price : Jordan Fox
George : Antony Reed
Don : Sean Needham
Lauren : Natalie Mcqueen
Pat : Rosie Glossop
Harry : Ben Jennings
Lola : Simon-Anthony Rhoden
Angels : Jon Reynolds, Tom Scanlon, Daniel Downing, Jed Berry, Jak Allen-Anderson
Trish : Abbey Addams
Richard Bailey : Jonathan Carlton
Milan Stage Manager : Anna Stolli
Ensemble : Olivia Winterflood, Hannah Price, Christopher Parkinson, Keith Higham

Conductor : Jim Henson

ドキュメンタリー映画を観てる感覚:エビータ 7/27ソワレ

もう来日公演終わってしばらく経ちますけど、みたので一応。シアターオーブにて、ミュージカル エビータ。

エマキングストン演じるエヴァとラミンカリムルー演じるチェは共にストロングボイス系だったからか、歌のうまさがすべて!みたいな印象を受けたかな。タイトルに書いたようにドキュメンタリーを見てるような感覚で、感じ入った感想は書けないなぁ。あらすじ細かく覚えられなかったのでWikipedia拾いながらで。


Evita | International Tour 2018

コンサートとかでDon't Cry for Me ArgentinaとかBuenos Airesとかは聴いたことあったけど、作品として観るのは初めて。仕事終わりに駆け込みの当日券、2階A席。2階S席前方だか中方がごっそり何列か空席になってて、関西の災害で来れなくなった団体さんかなとか思ったり。それ抜きにしても、少なくとも2階はスカスカだった。

開演前、緞帳に描かれている絵を見て、「あぁ、なんかちょっと胸がざわつきそうな作品かも…」と思ったのはあながち間違いではなかった。描かれていたのは、人々の死体の上に立つ軍隊、その上には上流階級の人たち。その後ろに、オレンジと白の太陽の光のような背景(朝日新聞のロゴみたいな感じの模様)。

幕が開いて、エビータの訃報のアナウンスと不協和音なRequiem、不穏な気持ちに。ラミンが現れて歌い出すOh What a Circus、余裕な歌唱で安定感抜群だけど、前から薄々気づいてたO行のこぶし?が強くてそこはあまり好きになれない。

ピピンのときも思ったけど、こういう狂言回しな役というのはどういうのが「うまい」んだろう。「下手だな」と思ったことは今までにないけど「これはうまいなぁ!」と思ったこともない。ピピンのオリジナルのリーディングプレイヤーだったパティーナミラーさえ。

エヴァブエノスアイレスに連れていってと男性歌手にお願いするOn This Night of a Thousand Stars、続くEva, Beware of the City、ビッグになるわと主張するBuenos Airesの流れは、なんだかちょっと冗長な感じがしたような。たぶんスコア的にほんとに(私にとっては)冗長なのと、「連れてってよ」「いややめときなよ」の繰り返しがしっくりくる翻訳になってなかったからかなぁと。Buenos Airesもリピート多いし。

あとなによりずっと変だなって思ったのは、エヴァは自分一人で成り上がっていけそうなくらい強かったこと。これはエマキングストンが歌うますぎゆえとも思うし、どういう役作りが正解とかわからないけど、彼女ならなんでも一人でやれてしまえそうだった。

話を戻して、チェがエヴァ、ペロンの躍進を説明(Goodnight and Thank You, The Lady's Got Potential , The Art of the Possible)。Goodnight~ではエヴァがめっちゃいろんな人と夜を共にしてのぼりつめていく様が面白かった(男達が部屋から出されてどんどん並んでいく)。The Art~は、完全に軍人の椅子取りゲームでそれも面白かった。

チャリティコンサートでペロンに近づくI'd Be
Surprisingly Good For Youも、翻訳のせいか、駆け引きが長くて少し間延びした感が。エヴァもペロンも最後の一押しを相手にさせたいのか、決定打を放たないのがもどかしかった!でもそうと決まったらあっという間に怖い女になってペロンの愛人ミストレスを追い出すあたり、あの強すぎるエヴァならやりかねない。笑

そしてこのミストレスの歌うAnother Suitcase in Another Hallがとっても良くて!ミストレスを演じたのはイザベラジェーン。個人的にたまらないくらい癒し系エンジェリックボイスだった!讃美歌を歌うような清らかさと、この先の自分に何が起こるのか不安な気持ちを隠せないでいる様子。今回の面々の中では一人だけ清らかすぎて若干場違い感もしたのだけど、あの声はぜひまた聴きたいなぁ。

一幕ラストのA New Argentina。大統領に立候補するペロンを鼓舞し、ペロンの応援演説のごとく国民を煽るエヴァは圧巻だった。YouTubeでこの曲を聴いたこと、そして「エマキングストンがすごい」というSNSの情報だけで観に行ってしまったようなものだけど、それだけの価値があった。低音もがっつり出してからの高音のパワフルな歌い上げは、あまりにも素晴らしくて「聴く麻薬」みたい。

二幕、大統領戦に勝利したペロンたちの演説。On The Balcony of Casa Rosadaではペロンを支持するペロンコールが入るのだけど、これがまた絶妙に不穏な不協和音だった。「ペロン…ペロン…」と3人が3人とも半音ずつずれて歌ってるような感じ。そして恐らく最も有名なDon't Cry for Me, Argentinaは、正解がわからないながらもエマキングストンエヴァは強すぎる感じがしていた。※歌はもちろんうまい。

そしてプロモーションでもラミンが歌ってたHigh Flying, Adored。歌ってるのは覚えてて、やっぱりうまいなーっていうのとやっぱりO行のこぶしきついなーっていうのは覚えてるけど、内容が全然頭に残ってない(Wikipediaにはエヴァのダンスの採点をする的なことが書いてあるけどよくわからない)。

ヨーロッパ外遊が失敗した後、エヴァ・ペロン基金をたちあげチャリティ活動を行ったAnd The Money Kept Rolling In。彼女はお金を政治以外の美容などの私用に使っていたようで、「たくさんチャリティでお金が出ていくから、細かい収支はわからないわ!」とやっていたらしい。そんな大雑把、意外とまかり通ってしまうものなのかしら?アルゼンチンだから?

どういうくだりだったか忘れてしまったしwikipedia見ても意味がわからなかったんだけど、子供達が歌うSanta Evitaは讃美歌のようで癒された。ウィーン少年合唱団ってこんな感じなのかな?A Waltz for Eva and Cheはエヴァとチェの歌なんだけど、詳細には覚えておらず。

ペロンの愛に気づくエヴァのYou Must Love Meは美しくかったけど、その愛への感謝というよりはとりつかれたように副大統領に立候補しようとするエヴァの心情が読み取れなかった(She is a Diamond, Dice are Rolling)。

結局、自身の病気により出馬断念(Eva's Final Broadcast)。亡くなるときの走馬灯のように、始めから今までの超圧縮ダイジェストのような歌と演出(Montage)。やはり「Evita Peron, Evita Peronista」の不協和音が不気味。チェが、エヴァのための記念碑がたてられることになったが、出来上がる前にエヴァの肉体はなくなってしまった後に台座だけが完成したと語り、幕。

そこかしこに不協和音や不穏な音をまぎれこませていて、なんだかホラー気味に感じてしまったくらい。正直、どんなに歌がうまい人がたくさん出てくれようが、あまり何度も観たいと思う作品ではないように感じた。

ただ、エマキングストンとイザベラジェーンの声を聴けたことに悔いはなし!ぜひまた聴く機会に恵まれたら嬉しいなと思う。声といえば、終演アナウンスのウグイス嬢がいい声だったみたいで、私なぜかメモしていた。笑