Impressive Sounds

素敵な歌声や音楽を求めて。

演劇的に満足度が高かった日:ノートルダムの鐘 5/14マチネ

年始にたまたま気が向いて行ってみたら、
重厚な音楽もクワイヤの重なりも楽しめる本作がすっかり気に入った。

劇団四季:ノートルダムの鐘:プロモーションVTR

初めて観たカジモドが海宝さんで、
「四季にも歌の上手な俳優さんいるんだぁ」
などと本当に印象的だった(失礼)。
海宝さんは四季じゃないけど。
華美でなく創造力を借りる演出もとても好きで、
最初と最後のカジモド・民衆の変貌もたまらない。

海宝さん、飯田さんと観て、
それぞれカラーが違うのは知っていた。
田中さんはスコーンと抜ける高音が評判と聞き、
それってもしや私の好きな声の部類では?
と気になって、確かめに行った。

結論、声としてはけっこう好きな部類。
高音域でも喉が狭まる感じや力業っぽさはなく、
抵抗なく素直に音が出てくる感じ。
ロングトーンも比較的長めかなと思った。
ただ、音程が半音~半半音くらい低くて、
絶妙に気になった。
飯田さんは音域的にギリギリ感あったけど、
田中さんは音域的には出るんだけどうまく当たってない感じ。
そう思うとやっぱり、海宝さんが音程と音域のバランス的には聴きやすかったかな。

演技・歌ともに他2人よりあっさりめだけど、
心ここにあらずなカジモド像なのかなと思わせるところがあって、
田中さんは田中さんなりの魅力があった。

二幕が特に良くて、自分をあきらめ茫然、
悲しみとか怒りとかもあるけどとにかく自暴自棄感が強い。
からのひきこもり・救出・そして喪失はとても心動かされた。
エスメラルダもフロローもなくしてしまった後の
脱け殻感は突出してると思う。
田中さんのカジモドは、
現実を悟って二重人格みたいになってる感じ。

そして、実はこの日は本当に宮田さんエスメラルダに感動していた。
彼女が私の意識の大半をもっていった。
もともとしなやかなダンスが素晴らしかったうえに、
今回は歌もとても良かった。
前は地声ギリギリの音だと急に乱暴に歌っているように聴こえたけど、
要領を得たのか、感情をのせたままそれがさりげなく処理されるようになっていた。

凛としたふりから耐えきれず泣き出すのとか、
エスメラルダが実在したら本当にこんな表情をしそうだと容易に想像できた。
ごく自然にエスメラルダだった。
なんかすごくいいお芝居観たという感じ。
この役だけは宮田さんしか見れてないけど、
岡村さん見なくても満足できるくらい素晴らしかった。

野中さんフロローはやはり父より校長先生的な厳格さ。
嫌らしさほぼ皆無なので男の欲とかいうより、
アンコントローラブルなことを許せないという印象。
弟を愛していたといっているし実際愛してたんだろうけど、
彼をコントロールしておかなかったから彼は死んだと思ってそう。
だから意のままにできないエスメラルダやカジモドを許せなくて、
しかも近づこうとしたらエスメラルダに性的な意味にとらえられて、
そんなはずはないけどもしかしてそうだったら恐ろしい、という発想。
カジモドへは八つ当たりはあれど憎んだりしている気配はなく、
正しく導こうとしか考えてなさそうな。

フィーバスは、滑らかに声が出るのは清水さん。
でも清水さんはセリフの抑揚が微妙かなぁ。
佐久間さんフィーバスのほうが誠実な男っぽく、
個人的には好み。
クロパンに助けられて民衆を鼓舞するところとか、
断然佐久間さんで涙が出る。
そうそうクロパン、阿部さん素晴らしい。
リトルマーメイドのシェフといい、
イロモノのパフォーマンスがよくハマるし、いつも安心して集中できる。

フロリカのラストのソロがとても好き。
声でいえば、小川さんはクワイヤに溶け込んでしまいそうなソプラノだったので、
前に観た平木さんのほうがオペラ歌手的な存在感があって好みだった。
あそこはコーラスではなく讃美歌のソロ的な認識。

フレデリックの鈴本さん、何度か観ているのに気づかなかったのか記憶になく。
今回初めてとても好青年顔だなと気づいた。
目立つ歌を歌うタイプではないのか声にはさほど印象がないけれど、
演技がとても自然で目が行った。
特にフィーバスへの忠誠とか信頼において。
カーテンコールではけていくとき、
2,3階席に向かってありがとうございますって言っているのが口の動きでわかって、
この人いい人~と印象深かった。

メイン・アンサンブルともに安定感ある集中しやすい公演で、観られたことがとても嬉しくありがたかった。
しばらくはいいかなぁと今は思っているけど、
ウィキッドもそう思いつつまた観たくなってたから、やっぱり気が変わるかもしれない。

ノートルダムの鐘 5/14マチネ】
カジモド 田中彰
フロロー 野中万寿夫
エスメラルダ 宮田 愛
フィーバス 清水大
クロパン 阿部よしつぐ

【男性アンサンブル】
鈴本 務
奥田直樹
小田春樹
賀山祐介
中橋耕平
平良交一
宇龍真吾
吉田功太郎

【女性アンサンブル】
小川晃世
久居史子
町島智子
原田真理