Impressive Sounds

素敵な歌声や音楽を求めて。

壮大なような個人的なような:レディ・ベス 10/22マチネ

台風接近により土日の予定がキャンセル。
というわけで、暇だしどっかのタイミングで観ておこうかなーと思ってたレディベスへ。
和音美桜さんの美声を聴いてみたかったので。

ちなみにライブとかも好きなのに最近すっかり映画やミュージカルに偏ってるなと思ってなぜかを考えたら。
席が決まってるから直前に行ってもいいし、腕降ったり飛んだりして汗かかないで済むし、ライブ行くのとそんなに金額変わらないし…というなんとも合理的かつ省エネ的な理由だった。



『レディ・ベス』2017プロモーション映像


ストーリーの軸は主に2つ。
・国王ヘンリー8世と淫売(史実は知らないけど少なくとも劇中では彼女は潔白なのだけど)といわれたアン・ブーリンの間に生まれたエリザベスと、義姉メアリーの確執
・王室のエリザベスと流れ者ロビン・ブレイクの恋の行方
義姉との確執をどう乗り越えるのか、ロビンとの結婚と女王即位のどちらを選ぶのか、みたいな。
細かくは公式とか他の人の感想で見てください。
今回もいつもどおり基本ネタバレ、ひたすら自分のためだけに備忘録として出演者の声や感想を残すのみです。

全体的な印象としては、役者は悪くないと思うけど、いまいち作品として面白くないというか、こじんまりしてる感じがした。
人が多すぎたのかしら。
かといってだれを削ればいいのやらという感じだけど。
メアリー、ガーディナー、スペイン大使、あと一応フェリペと、“思惑”のある人が多すぎたのかな。
全編にわたって、ベスが両親の評判に悩まされながらも自分の人生を生きようとしたことはよくわかった。

あと私にとって致命的なのはとりたてて好きな曲がなかったこと、これは痛い。
音楽が良くないということではなくて特筆する曲がないという意味。
いろんな人が出てきていろんな曲歌うし、なんだかアレンジが演歌っぽく感じたような(特にフェリペ王子のクールヘッドは、侍みたいな片腕はだけの衣装でビリヤードのキューを振り回すのもあって時代劇かと)。
クンツェさんとリーヴァイさんのタック作品を観るのも初めて、ふだん英米系ミュージカルを観るのでウィーン系を観るのも初めて。
ある意味ウィーン系に過度の期待をしないよう免疫ができて良かったかも。

舞台は傾斜のある横回転する盆で、春に観たパレードみたいで見やすかった。
個人的に盆舞台はほどよく変わっている感じと見やすさが両立する気がして好き(斜めだし回るし役者は大変だろう)。
あと受けた印象としては、ファンシーだなー!ってところかな。
ストーリーは夢とか幽霊で進むところがあるし、みんな王族貴族だし、衣装もドレスフリフリのキラキラ。
ウィキッドノートルダムが好きな私とは全く別のベクトルであった。
あ、星空とかアスカム先生の説明タイム(?)の床の照明がきれいだったのもメモ。

さて、さくさく個人感想。
ベスは花總さん。
海宝さんと共演してたラジオドラマのルスダンで、さんざんお声は聴いてた。
観るのは初めてで、遠目にはずーっと「プリンセス」感が強かったかな?
「クイーン」よりも「プリンセス」。

歌は想像したとおり、歌えないんじゃないけど地声と裏声の行き来が不安定なことがあったかな。
ロングトーンは伸ばすことを優先して音程が半音くらい低かったかなぁ、ビブラートかけ始めるとちょうどいい音程だっただけに惜しい。
ルスダンのときも思ったけど、最初はわざと声を若くしてる感じ。
歌より演技の人かな?
王女が女王になるという設定も共通してるし、ルスダンを先に聴いたせいか「ルスダンっぽいな」と思った。

ロナン、いくさぶさん。
TVでは何度も見かけたけど生は初めて。
美女と野獣の吹き替えのときから思ってたけど、世間で言われるほど歌うまいとは思ってなくて(失礼)。
でも生来もってる雰囲気とか、切ない演技とかかなり持ち味だと思うし、顔とスタイルなどのバランスも良くて重宝されてるのかなと。
コミカルなキャラクターもできるし(むしろ個人的にコミカルが一番しっくり)。

ロナンという役があまりおいしくない役かなと思うので、もっとど真ん中の役も観てみたいかも。
ちなみにどうしても笑っちゃったのが、ベスにまた会いに来るよということを伝えるときに「また来るYO!」って聞こえちゃったとこ、面白かった。
あとベスが男装を解いたときに「(いつもつけてる花を外してたのを俺が)つけてやるよ」って言うところ、めっちゃイイ声だった。

アンの和音さん、ほんとはレミゼのファンティーヌで観たいなと思ってたけど出演スケジュールと私の都合が合わなくずっと観れてなかった。
初めて観て歌声をお聴きしたわけだが…素晴らしい…今日ダントツに感動した。
個人的に癒し系の声だったり、もともとの“声質勝ち”してるような人の声がけっこう好きだったりするけど、彼女はそういう部類ではないかな。
でも、確かにこちらの感情を動かす歌声なのでした。
一幕終盤でベスの幽閉が決まったときの「一人じゃないわ」的な歌を皮切りに、基本的に彼女が歌うとじわーっとした。

輪郭はそれなりにあるけど強すぎるわけではなく、万年筆でもクレパスでもなく水彩筆って感じの、しなやかで少しだけしっとりした声。
娘を心配し、守り、ただやさしく諭してた。
傷つくベスをいつも見守る優しい聖女のような演出だったのもあって、二幕なんかもはやアンの姿が見えただけで涙が…。
ただね、可能ならエコーなしで聴きたかったところ。
(幽霊の役みたいなものだから、それをかもし出すために全ての歌にエコーがかかっていた。)

フェリペは平間さん、飄々としたクレバーなスペイン王子という感じでかなり良かった!
けっこう出番が短かったのでもっと出てきてほしかったくらいだし、短かったせいか歌声もかなり余裕ありそうで、もっと聴いてみたい。
何度も「アタマ使え」みたいな、頭をトントンと指で軽く叩いて相手のほうを指差すジェスチャーが効いてた。
演出なんだろうけどやり過ぎず適度で良かった。
基本人を心から愛しているわけではなくて、ベスをほんとに「若くてきれいと思ってただけ」なのもわかる。
ただしクレバーだから適度に恩と義理を売っておくし、不誠実な判断は下さない。

こっからは、さらにさくさくさく。

アスカム先生、山口さん。
元四季の方ですごく人気でかっこよかったと会社のお姉さんが言っていたっけ。
声は基本6割くらいで歌ってるのでは?というくらい、爆音出せそうな余裕。
ただ、本領発揮したらすごそうだけど1曲で果てそうな感じもあるし、音程迷子気味なのが常だから基本徐行運転なのかなと。
王室のこととか詳しくないからか、いまいち先生の地位とキャラクターがわからず。
キャットアシュリーも「見守ってたんだな」くらいしかわからなかった。

ガーディナー、禅さん。
パレードでも悪役で拝見したけど、ものすごい安定感。
でも死んじゃうんだよな~悲しい。
この方好きなのでちゃんと生ききるいい人の役も観てみたい。
歌がうまくてやさしそうなおじさまのイメージ。

メアリーの未来さんもパレードでも観てた。
持ち歌がもともとゴスペル系なのか彼女がゴスペル系歌唱なのかわからないけど、声量あるし迫力あるし良かった。
王室の人とは思えない、もはやかなりのヴィランズに見えてちょっと怖すぎるくらい?
ただ「嘘つき娘だから~」の高音が上がりすぎてたので惜しかった。
こんなに歌がうまくてもあそこの声のコントロールは難しいのね。

パレードの話ばっかでアレだけど、パレードで発見した素敵ボイスの持ち主、吉田萌美さんがアンサンブルで出演されてたみたい。
楽しみにしてたけど、遠くてお顔もわからなかったし、ソロもなさそうだったので、今回は残念ながらその美声が聴けなかった。
次またどこかで聴けたら嬉しいな。

あと、帝国劇場のB席(一番お安い席)って見やすいのね!
四季劇場はS席~B席しか座ったことないからちょっと微妙だけど、四季のC席とかよりも見やすいのでは?
舞台全体がちゃんと見えて、段差もほどよくて、でも舞台が横に広めだからすごく遠い感じもしなかった。
高いお金払って中途半端な距離の席とか死角が出ちゃう席に座るより、そこそこのお値段でそこそこの視界のほうが個人的には納得感あるなぁ。

作品としてすごく好きかというとあまりそうではなかったんだけど、和音さんと平間さんが素敵ボイスってことがわかったのが今日の収穫。
特に和音さんの歌が素晴らしかったので、いつか何かの作品で主演してガンガン歌ってくれないかな~という夢ができた。
また聴きたいな。

キャスト
レディ・ベス:花總まり
ロビン・ブレイク:山崎育三郎
メアリー・チューダー:未来優希
フェリペ:平方元基
アン・ブーリン和音美桜
シモン・ルナール:吉野圭吾
ガーディナー石川禅
キャット・アシュリー:涼風真世
ロジャー・アスカム:山口祐一郎