Impressive Sounds

素敵な歌声や音楽を求めて。

オペラを観て、舞台装置(演出?)に泣く:東京二期会ローエングリン 2/24

久しぶりのオペラ、難しいところもあったけど、なかなか堪能できた。この公演は、ドイツオペラの名匠の準・メルクル氏指揮、映画監督の深作健太氏演出というのも目玉というか話題というかアピールポイントだったみたい。私はオペラもオケも日本の映画監督も詳しくないので、そのすごさはよくわからないんだけど、でも見ごたえあって満足だったなぁ。

あらすじ公式にあります。
http://www.nikikai.net/lineup/lohengrin2018/index.html



新国立劇場オペラ「ローエングリン」ダイジェスト映像
これは新国立劇場オペラなので、今回観た東京二期会のとは別です。参考までに。


オペラ詳しくないけど留めておきたい公演だなと思ったので、私なりの感想を。

基本高音域がきれいな声が好きなので、まずエルザの林さん。第一声から思わず聴き惚れるような素敵な声!感情を前に前に出すような歌もあったけど、それよりも感情が漏れ出るような、言葉をはっきり発音しないようなシームレスな歌の方が、その角がない声がより美しく聴こえた。あと少し紫寄りの青いドレスがすごくきれいだった。

最初、演出がちょっと難しくて、なんか人が倒れたり(たぶん白鳥に変身させられてしまったエルザの弟・ゴットフリート?)、よくわからないけど本持ってるおじさんだと思ってたらローエングリンになっていきなり高らかに歌い出したりして。でも、エルザの声がすごく良かったから、とりあえずほっとしたのだった。

そしてタイトルロールのローエングリン、福井さん!5階のお安い席かつ裸眼だったので正直どの人もざっくりとした衣装と髪型くらいしか見えなかったので、遠目だと正直「だれこのおじさん?」(失礼)。さっき書いたように突然ローエングリンになるからよくわからないし。だけど、一度歌い出せばばすさまじくイイ声!なんかこの人は格が違う…と素人ながら感じた。ハリがあって、まろやかに豊かに響く声。

キャストはとにかくこの二人が歌ってると私の満足度は高かった。エルザの声にはとにかくうっとり。ローエングリンなんか、別にハッピーな歌歌ってるわけじゃないときでも、「なんかこんな素晴らしい歌を生で耳に流し込んでいるということ自体が幸せ…!」って思ってた。

エルザを陥れようとする悪女オルトートと、夫テルラムントは、エルザ・ローエングリンの存在感に負けて聴こえて。特にオルトートは、演技というかオーラは良くて、特に2幕のラストなんかは素晴らしく不穏な雰囲気を醸し出していたのだけど、歌声は配役の割にはパンチがない感じ。オペラって配役によって音域が決まっているからドスをきかせるわけにもいかないし、私が素人だから「物足りない」と思っただけかも。

すでに書いたように、舞台装置や演出の意図をくみとるのは難しかった。白鳥に変身させられてしまったゴットフリート(か分からないけど、とりあえず少年)がずっと舞台上にいるな、とか、ローエングリンやエルザが急にコスプレしてるみたいに見えるな、とか。でもまあ、それはそれで逆に面白くて良かった。個人的には「オペラってストーリーが面白いとはわけじゃないし、歌や演奏を楽しむもの」って思ってたけど、今回は「今のどういう意味だろう?次はどうなるんだろう?」って興味を持って最後まで観れた。

舞台装置といえば、マラソンとかでよく見るデジタル時計が一幕頭と三幕終わりに舞台上方にあった。それが、頭は23:23:59からカウントダウン、終わりは00:00:00からカウントアップしていた(5階席だから見えたんじゃないと思ってるんだけど…あれはわざと見せてたよね…?)。

ラストはローエングリンが素性を知られてしまったから去っていくという流れで、頭上の大きなコンクリートのような三角の舞台装置が民衆やエルザのいる地面の方に向かってゆっくり降りてきて、00:00:00からカウントアップしているのが見えたわけで。そしたらなんだか、「この演出と舞台にこの装置、なんだかぴったりで素晴らしい…」と、まさかの謎の涙が。装置で泣いたのは初めてかもしれない。笑

あとは、会場。この日は5階の下手ほぼセンターというお安い席で観た。下手が見切れるけど全然見えないということもなかったけど、舞台左右に置かれてた字幕はちょっと見づらかったかな。そして、このホールが良いのか演奏が良いのかわからないけど、弦がかなりきれいに聴こえた気がする。

ピアノやギターの、1音伸ばして鳴らしてるようなまっすぐな音と違って、何本(というか何人)かが弓を動かし続けて音が鳴ってるのがわかる感じ。弦の一本一本に存在感があったような。ただ、演者全員歌うとことかはときどきオケの音量が勝ちすぎてしまい、歌組がほとんど聴こえないときもあった。

いろいろ書いたけど、感想はこんな感じ。あぁ、観れて良かった、書けて良かった。

ところでオペラって、落ち着いた年齢の男性のオーディエンスがすごく多いんだなぁと。いつも行くようなミュージカルはもちろん、バンドのライブだってけっこう女子多くてトイレ待ちが面倒なんだけど、今回は休憩2回ともスイスイで楽だった。


ローエングリン」オペラ全3幕
日本語字幕付き原語(ドイツ語)上演
台本・作曲:リヒャルト・ワーグナー
会場:東京文化会館 大ホール

指揮:準・メルクル
演出:深作健太

装置:松井るみ
衣裳:前田文子
照明:喜多村 貴
合唱指揮:増田宏昭
演出助手:太田麻衣子
舞台監督:八木清市
公演監督:大野徹也
公演監督補:牧川修一

ハインリヒ・デア・フォーグラー:小鉄和広
ローエングリン:福井 敬
エルザ・フォン・ブラバント:林 正子
フリードリヒ・フォン・テルラムント:大沼 徹
オルトルート:中村真紀
王の伝令:友清 崇
4人のブラバントの貴族:吉田 連、鹿野浩史、勝村大城、清水宏
ローエングリン(青年時代) :丸山敦

合唱:二期会合唱団
管弦楽東京都交響楽団