Impressive Sounds

素敵な歌声や音楽を求めて。

ドキュメンタリー映画を観てる感覚:エビータ 7/27ソワレ

もう来日公演終わってしばらく経ちますけど、みたので一応。シアターオーブにて、ミュージカル エビータ。

エマキングストン演じるエヴァとラミンカリムルー演じるチェは共にストロングボイス系だったからか、歌のうまさがすべて!みたいな印象を受けたかな。タイトルに書いたようにドキュメンタリーを見てるような感覚で、感じ入った感想は書けないなぁ。あらすじ細かく覚えられなかったのでWikipedia拾いながらで。


Evita | International Tour 2018

コンサートとかでDon't Cry for Me ArgentinaとかBuenos Airesとかは聴いたことあったけど、作品として観るのは初めて。仕事終わりに駆け込みの当日券、2階A席。2階S席前方だか中方がごっそり何列か空席になってて、関西の災害で来れなくなった団体さんかなとか思ったり。それ抜きにしても、少なくとも2階はスカスカだった。

開演前、緞帳に描かれている絵を見て、「あぁ、なんかちょっと胸がざわつきそうな作品かも…」と思ったのはあながち間違いではなかった。描かれていたのは、人々の死体の上に立つ軍隊、その上には上流階級の人たち。その後ろに、オレンジと白の太陽の光のような背景(朝日新聞のロゴみたいな感じの模様)。

幕が開いて、エビータの訃報のアナウンスと不協和音なRequiem、不穏な気持ちに。ラミンが現れて歌い出すOh What a Circus、余裕な歌唱で安定感抜群だけど、前から薄々気づいてたO行のこぶし?が強くてそこはあまり好きになれない。

ピピンのときも思ったけど、こういう狂言回しな役というのはどういうのが「うまい」んだろう。「下手だな」と思ったことは今までにないけど「これはうまいなぁ!」と思ったこともない。ピピンのオリジナルのリーディングプレイヤーだったパティーナミラーさえ。

エヴァブエノスアイレスに連れていってと男性歌手にお願いするOn This Night of a Thousand Stars、続くEva, Beware of the City、ビッグになるわと主張するBuenos Airesの流れは、なんだかちょっと冗長な感じがしたような。たぶんスコア的にほんとに(私にとっては)冗長なのと、「連れてってよ」「いややめときなよ」の繰り返しがしっくりくる翻訳になってなかったからかなぁと。Buenos Airesもリピート多いし。

あとなによりずっと変だなって思ったのは、エヴァは自分一人で成り上がっていけそうなくらい強かったこと。これはエマキングストンが歌うますぎゆえとも思うし、どういう役作りが正解とかわからないけど、彼女ならなんでも一人でやれてしまえそうだった。

話を戻して、チェがエヴァ、ペロンの躍進を説明(Goodnight and Thank You, The Lady's Got Potential , The Art of the Possible)。Goodnight~ではエヴァがめっちゃいろんな人と夜を共にしてのぼりつめていく様が面白かった(男達が部屋から出されてどんどん並んでいく)。The Art~は、完全に軍人の椅子取りゲームでそれも面白かった。

チャリティコンサートでペロンに近づくI'd Be
Surprisingly Good For Youも、翻訳のせいか、駆け引きが長くて少し間延びした感が。エヴァもペロンも最後の一押しを相手にさせたいのか、決定打を放たないのがもどかしかった!でもそうと決まったらあっという間に怖い女になってペロンの愛人ミストレスを追い出すあたり、あの強すぎるエヴァならやりかねない。笑

そしてこのミストレスの歌うAnother Suitcase in Another Hallがとっても良くて!ミストレスを演じたのはイザベラジェーン。個人的にたまらないくらい癒し系エンジェリックボイスだった!讃美歌を歌うような清らかさと、この先の自分に何が起こるのか不安な気持ちを隠せないでいる様子。今回の面々の中では一人だけ清らかすぎて若干場違い感もしたのだけど、あの声はぜひまた聴きたいなぁ。

一幕ラストのA New Argentina。大統領に立候補するペロンを鼓舞し、ペロンの応援演説のごとく国民を煽るエヴァは圧巻だった。YouTubeでこの曲を聴いたこと、そして「エマキングストンがすごい」というSNSの情報だけで観に行ってしまったようなものだけど、それだけの価値があった。低音もがっつり出してからの高音のパワフルな歌い上げは、あまりにも素晴らしくて「聴く麻薬」みたい。

二幕、大統領戦に勝利したペロンたちの演説。On The Balcony of Casa Rosadaではペロンを支持するペロンコールが入るのだけど、これがまた絶妙に不穏な不協和音だった。「ペロン…ペロン…」と3人が3人とも半音ずつずれて歌ってるような感じ。そして恐らく最も有名なDon't Cry for Me, Argentinaは、正解がわからないながらもエマキングストンエヴァは強すぎる感じがしていた。※歌はもちろんうまい。

そしてプロモーションでもラミンが歌ってたHigh Flying, Adored。歌ってるのは覚えてて、やっぱりうまいなーっていうのとやっぱりO行のこぶしきついなーっていうのは覚えてるけど、内容が全然頭に残ってない(Wikipediaにはエヴァのダンスの採点をする的なことが書いてあるけどよくわからない)。

ヨーロッパ外遊が失敗した後、エヴァ・ペロン基金をたちあげチャリティ活動を行ったAnd The Money Kept Rolling In。彼女はお金を政治以外の美容などの私用に使っていたようで、「たくさんチャリティでお金が出ていくから、細かい収支はわからないわ!」とやっていたらしい。そんな大雑把、意外とまかり通ってしまうものなのかしら?アルゼンチンだから?

どういうくだりだったか忘れてしまったしwikipedia見ても意味がわからなかったんだけど、子供達が歌うSanta Evitaは讃美歌のようで癒された。ウィーン少年合唱団ってこんな感じなのかな?A Waltz for Eva and Cheはエヴァとチェの歌なんだけど、詳細には覚えておらず。

ペロンの愛に気づくエヴァのYou Must Love Meは美しくかったけど、その愛への感謝というよりはとりつかれたように副大統領に立候補しようとするエヴァの心情が読み取れなかった(She is a Diamond, Dice are Rolling)。

結局、自身の病気により出馬断念(Eva's Final Broadcast)。亡くなるときの走馬灯のように、始めから今までの超圧縮ダイジェストのような歌と演出(Montage)。やはり「Evita Peron, Evita Peronista」の不協和音が不気味。チェが、エヴァのための記念碑がたてられることになったが、出来上がる前にエヴァの肉体はなくなってしまった後に台座だけが完成したと語り、幕。

そこかしこに不協和音や不穏な音をまぎれこませていて、なんだかホラー気味に感じてしまったくらい。正直、どんなに歌がうまい人がたくさん出てくれようが、あまり何度も観たいと思う作品ではないように感じた。

ただ、エマキングストンとイザベラジェーンの声を聴けたことに悔いはなし!ぜひまた聴く機会に恵まれたら嬉しいなと思う。声といえば、終演アナウンスのウグイス嬢がいい声だったみたいで、私なぜかメモしていた。笑