Impressive Sounds

素敵な歌声や音楽を求めて。

その声を聴いただけで涙があふれた:The Voices of the West End 1/11

エストエンドのスターたちによる圧倒的な歌唱披露と、跳ねるようなコンダクタの指揮により流れるオーケストラが、なんとも贅沢なひとときだった。ちなみにコンダクタはしばしば曲終わりで本当に跳ねていた。笑

些細かもしれないけど、theは訳さなくてもいいとして、英題だと複数形なのに日本語だと「ザ・ヴォイス・オブ・ウエストエンド」と単数形になるのなんで?けっこうあるあるだと思うんだけど。

さて、こちらは1日1公演でこの日が3公演目、千秋楽(?)。出演者は以下5名。ベンは一昨年のミュージカル・ミーツ・シンフォニー2017で、ソフィーは去年のロンドン旅行でWickedのグリンダでみているので、他3名が初見。ケリーのエルファバは何度も何度もYouTubeでみてるけどね。

ジョン・オーウェン=ジョーンズ(JOJ)
ケリー・エリス(Kerry Ellis)
ハドリー・フレイザー(Hadley Fraser)
ベン・フォスター(Ben Forster)
ソフィー・エヴァンス(Sophie Evans)

オーチャードホール、3階席は初めて。サイドだったけど音の偏りとかはそんなに感じず、バランスに違和感なかったかな(1階座ったことないけど、以前座った2階センターとか意外と音が迫ってこなかった記憶なので)。ではセトリを追って感想を。

・The Greatest Showman Medley
 -The Greatest Show
 -Never Enough
 -A Million Dreams
 -This Is Me
個人的に最初のほうの曲ってどうしてもそうなっちゃうんだけど、会場の音響に耳がなれてないから&その公演の演奏の雰囲気がつかめてないから、The Greatest Showのアレンジは「高校野球の応援の吹奏楽部みたい」と思ってしまった。ややテンポがゆっくりで、金管木管もいて、大太鼓(ってオーケストラでもこんな呼び方するのかしら)がどっしり鳴らされたら、どうしてもそう聴こえてしまう。

まあそれにはほどなくしてなれたので置いておいて、歌いだしだけで全員歌がうまいのがよくわかった。低音で始まるけど、男性陣なんか余裕すら感じるくらい。女性陣はどうしても音域的に若干声が埋もれるけど、ソフィは声がけっこう輪郭はっきりしているほうなので、そんな中でも届いてくるように思った。とにかく「”オーオーオオオー!(出だしのコールアンドレスポンスのところ)”の響きがめっちゃゴージャス」と思った。

そして続くNever Enough、これはケリーのソロで。そう、タイトルにした、聴こえただけで涙が出てきてしまったのはケリーの声だった。なんだろう、もう全然言い表せない、なんて書いたらいいのかわからない。彼女の声は重唱だと他の声になじむというか埋もれるというか、もしかしたら少しペース配分的な意味もあったかもしれないけど、存在感をひそめてたのに。

Never Enoughでケリーが一人だけで歌い始めた途端、とにかく涙があふれて仕方なかった。彼女は私の好きなエルファバ女優の一人だし、Never Enoughも好きな曲だし、感動する要素はもちろんあった。けど、あんなに「わけもわからず」涙がどんどん出てきたことは、今までなかった。文字通り「心を震わす」、歌声の息の出し方・揺らし方が絶妙な、不思議なほどに魅力的な声。この公演は、他の出演者も尋常じゃなく歌がうまいにも関わらず、とにかくケリーの声に強烈な反応をしている私がいた。

ケリーの声については、以前エルフィー特集で書いてた。そのときもやっぱり、「空気を震わせるような波長の声」って書いてる。それをまさにあの瞬間あの場で聴いて、ほとんど反射的に感動していたんだと思う。

impressivesounds.hatenablog.com

Never Enoughが個人的に強烈だったので、A Million DreamsとThis Is Meの記憶がけっこう飛んでいる。A Million~では、ソフィーの輪郭のはっきりした声がよく鳴っていたのは覚えてる。彼女、Wickedのグリンダしか知らなかったからてっきり声楽系のソプラノさんかと思ったら、けっこうロックやポップスが強そうな歌声だった。でも地声のところの輪郭感は、クリスティンに少し系統が近いかも。

・This Is The Moment
ミュージカル界隈ではとっても人気で有名なJOJさん、今回初めて拝見。基本的に一番リラックスしてて、「ホーム感」を持ちながら歌っていた印象。この曲なんかもちろんうまかったんだけど、リラックス感が目に見えるようなきがしたからかオケが若干スピーディーな気がしたからか、流して聴こえてしまったくらい。高音が少しきついのか、少しだけお腹のほうに手をあてる動きがあったかな?

・Anthem
これはケリーだったのでまた号泣。このアンセムの後の拍手はかなり長かったから、会場全体がすごくすごく圧倒された、心動かされたんだと思う。私はもっともっと拍手し続けたかったくらい。ケリーの声はふわっと面積が広くて、やさしく重ねたストールとかシルクとかガーゼをイメージするような声。そんな歌いはじめでまず涙、ラストの驚異的な高音とロングトーンの声のビブラートでまた涙。

・Moving Too Fast
ごめんなさい、JOJさんなんかは名前はよく見かけていたのだけど、ハドリーさんについてはほんとに今回初めて知ったの。そして初めて拝見。歌が抜群にうまい、声が渋め、という印象は受けた。ただこれはこの曲ゆえだと思うんだけど、低音ピアノとベースがかっこよくて、歌よりそっちに耳が奪われてしまった。

・Somewhere Over The Rainbow
ソフィーによる歌唱。彼女は去年ロンドンでみていて、その公演のグリンダは本当に感動した…。そんな彼女が、まさか日本にきてくれるなんて。今回はどちらかというと、ソフィー>ケリー>その他お3方という惹かれ具合でチケットをとったのだった。実際はケリーがさらにその上をいったわけだけど。

impressivesounds.hatenablog.com

この曲は他の曲に比べると起伏が少なく、どちらかというと素朴なメロディラインだと思う。そしてやはり、彼女は歌い上げはせず少しラフなアレンジで楽々と歌っていた。それで、他メンバーの持ち歌が大ナンバー系ということもあり、「なぜ彼女だけ歌い上げない系のこの曲なの?」と思った。Wikipediaで調べたら理由がわかって、彼女はBBCの番組で脚光を浴びて、オズの魔法使いのドロシーでウエストエンドデビューしてるからだった。なるほど。

・Til I Hear You Sing
ベンは既出のとおり2度目まして。この日も音のブレなんて感じさせずロングトーンだってばっちりな、絶好調の歌を聴かせていただいた。ただ前も思ったのだけど、やっぱりベンのファントムはただの男らしい、なんだったらイケメンっぽい男性に聴こえる。まず歌声がどうしてもシャープすぎるし、ファントムって人とうまくコミュニケートできなかった人だから多少の陰湿さやねちっこさがあるはずと思っているんだけど、それもない。ましてやあやしさもない。セクシーさはところどころ出している感じするので、ある意味オトナっぽさより青年っぽい清々しさがある感じ。後々謳うゲッセマネのほうが断然ハマっていると思う。

・The Music Of The Night
アルバム6枚出してファントムもいっぱいやってるJOJ、JOJより10歳若いからアルバム2枚しか出してないけどファントム(JOJほどじゃないけど)やってるベン、JOJより20歳若くてベンより10歳若いからアルバム出してないしファントムもやってないけど何にでもサインするよとハドリー。っていうのを自分たちでMCで言っていた、男性3名によるファントム。リラックスしてるのはいいことなんだけど、やっぱりJOJさんの我が出てる感じがちょっと。でも先述のように声がシャープすぎるベン、まだ演じていないせいか歌うまいけどファントムっぽさの薄いハドリーと比べると、まあやっぱりファントムっぽいのは彼かな。

・I Know Him So Well
・Losing My Mind
・I'll Be There
I Know~は、YouTubeでイディナとケリーが歌ってるのを何回か見た。今回はソフィーとケリーで。どうしてもグリンダとエルフィーだと思うと、別の感動が出てきてしまうね。Losing~はケリーだったかな?何の曲だろう、知らないな…と思っていたせいか感想飛んでしまった。そしてI'll Be~はハドリーだったかな?こちらも細かくは覚えてられなかったんだけど、彼のストロングな声が活かされるような、聴きごたえのある曲だったような気がする。

・Maria
・Tonight(quintet)
マリアはJOJが。この曲も少し高音が弱かったかなぁ。あとどうしてもキャリアのある方なので、青年のフレッシュ感よりはどっしりベテラン感があったような。トゥナイトの5重唱の前、ウエストサイド~の曲が短くメドレーのようになってとっても楽しかった!やっぱウエストサイド~って曲がいい、結末がつらいのでホイホイ観られないけど。そして5重唱、この歌うまメンバーだもの、ゴージャス!ウエストサイド~の1幕ラストの、各々の登場人物が居るベランダや部屋などのセットが見えるような気がした満足感。


・Entracte-Musical Medley
ここから2部。このミュージカルメドレーで演奏されたラインナップや編曲、アレンジが素敵だった気がするのに、なんの曲やってたか全然思い出せないのはなぜ。。

・Let It Go
・Evermore
ディズニー2曲。レリゴーはソフィー。日本人もそうだけど、海外の方もこの曲歌うの大好きだよね?お気に入りの曲っぽいな~という感じがした。持っている声が可愛いから、エルサほどの凄みというよりかは、等身大のレリゴーという感じ。イディナが地声で出している最高音、意外とソフィーは出ないみたいで、その音だけは裏声?ファルセット?(正しい言い方がわからない)で歌っていた。でも、声を置き換えているからって音量が減らないよう、そこは息の量多めでカバーしてたみたい。EvermoreはJOJが。とにかくこの曲は曲そのものがいいと思うので、誰が歌っても基本的に素敵~と思っている。ほんと、いい曲だよなあ。

・Come What May
・I Don't Remember You / Sometimes A Day Goes By
Come What May聴いたことあるけどこれなんだろうなと思ったら、ムーランルージュの曲だったか。確かレンタルで見たんだけど、時間あなくて1.5倍速とかで見たからいまいち魅力がわからなかったのだった。でもこの曲は好き。I Don't~とSometimes~はごめんなさい、忘れてしまった。でも覚えていないということは、男性陣、おそらくハドリーかベンあたりが歌っていた曲だと思う。あとで思い出したら追記する。


・For Good
・Defying Gravity

持ち歌のターン再び。ケリーとソフィーのWickedコンビ。ソフィーがケリーのことを「My favorite Elphaba」と言っていて、そっかあそれくらいキャリア違うのかあと思った。そしてケリーと歌えること、ソフィーはすごく嬉しそうだった。そんな色々を見ながら、想像しながら聴いたFor Good。そしてケリーのDefying Gravityはやっぱり圧巻だった。原キーより下げていたのと、どうしても歌い込んでしまっているのでけっこうアレンジが入っていてそのあたりは王道のが聴きたかったといえばそうなんだけど。彼女のラストの「Ahhhhh~!」の、ハートがざわざわするほどの魅力的なシャウトが聴けたからそれだけでもうオールオッケー。

・The Prayer
The Prayerはソフィーが。あれ、JOJも一緒に歌っていたような気もするけど何か別の曲と間違えているのだっけ。この曲はたまたまCeltic Womanで聴いてたから知っているのだけど、ミュージカルナンバーなのかな?知らなかった。どうしても音が通常音域から高音域へいったりきたりするので、どちらかというとソフィーの得意そうなちょい高めくらいの音域でガツンと聴かせる曲があってもよかったんじゃないかな。というかこの曲も歌い上げ系じゃないし、ソフィーだけ出番少なくない!?確かに一番若いけど、声のへたりも全然なかったし、もっと見せ場をあげてほしかった!

・Gethemane
ベンの一番の持ち歌、かな?ジーザスみたことないし、海宝さんがあれだけ何度も歌っていてもいまだに音源をちゃんと聴いてないジーザスなわけだけど、この日思った。彼こそジーザス。苦悩と途方に暮れる歌いだしから、心情を露わにして死へ向かっていくそのドラマティックな心と音楽の動きがダイナミックに表現されていて、本当に圧倒された。なんでそんな高い音にしたの?っていつも思ってしまう高音でさえ、「ああ、これはジーザスの心の叫びゆえ自然にこの高さまで声が高くなってるんだ」とすごく腑に落ちた。個人的に彼のファントムにしっくりきてないからこそ、このジーザスのハマり具合が素晴らしくて素晴らしくて…感動した。

Les Mizerables Medley
 -Stars
 -I Dreamed A Dream
 -Bring Him Home
さっきベンで書いたことを今度はハドリーで書く。ハドリーこそジャベール。Stars歌いだした瞬間から、「あ、この渋さと厳格さを感じる声はジャベールだ」と感じた。私はレミゼを数回しか観てないし、なんなら映画しか知らなかったときなんかはラッセル・クロウのジャベールに違和感なかった(今は少し違和感ある、彼のジャベールはどちらかというとマイルドだから)。だから「ジャベールはこうあるべし」という理想像もなかったんだけど、この日ハドリーのジャベールを聴いて、ジャベール像が確立した。

I Dreamed~はケリーが。この曲、どの人で聴いてもちょっと強すぎるように感じてしまうんだよな。たぶんそういうふうにつくられた曲だからだと思うけど。それで、ケリーは前半~中盤まではそこまで強くなくて「お、これは」と思ったし、ラストも強すぎなかったんだけど、直前二人のようなハマった感はなかったような気がする。歌う人じゃなくて、これは私の感じ方によるものだといつも思う。Bring~のJOJさんは、やはりバルジャン歴があるだけあってとても「らしさ」を感じた。若干、ラストのやわらかな祈りの歌のような歌唱部分が、おじいちゃんに寄った気がしないこともない。笑

Les Mizerables Epilogue
・One Day More
エピローグが本編ラスト。はけたと思ったらすぐ戻ってきてアンコールのワンデイモア。

聖母のように空から歌いかけるケリーのファンテーヌ、今にも召されそうなJOJバルジャン、芯の強そうな(笑)美しいソフィーのコゼット、バリケートから自力で帰還しそうな(笑)ベンのマリウス、厳格さを保つハドリーのジャベール。全員表舞台に現役で出ている人たちなので、世界に出れば各々の歌は聴くことはできるけれど、この5人の組合せではおそらく今までもこれからもこの公演限りであろう組合せの、貴重なレミゼエピローグ、ワンデイモアだった。ちなみにテナルディエ夫妻はケリーとコンダクタが楽しそうに、アンジョルラスはJOJがバルジャンと兼任だった。最後までJOJさんの比率高いわぁ。苦笑


この公演はトピー工業さんpresentsとのことで。この会社さん存じ上げなかったのだけど、鉄鋼メーカーさんなのね。そして規模も大きいみたいで。なぜ今回の企画が生まれたのかは全く想像がつかないのだけど、素敵な企画、素敵な公演をありがとうございましたとここでひっそりとお礼申し上げます。もちろん、来日してくれたキャストさんやプレイヤーさんやスタッフさんたちもね!Thank you!