Impressive Sounds

素敵な歌声や音楽を求めて。

自身に近くて等身大な歌声:Gina Beck

またまたWicked女優だけど、今回はWEと北米ツアーでグリンダを演じていたGina Beck

Ruler of My Own- Stars of the West End Sing the Songs of Steven Luke Walker (The Young Victoria)

彼女のことは2013年夏にロンドンへ行った時にHayleyエルフィーと一緒に観た。
2階席中程から観たのではっきりみえていたわけじゃないけど、ネットに転がってる写真とか見ると絶妙に可愛い。
超絶美人とかじゃなくて愛嬌のある感じがにじみ出る可愛さ。

当時圧倒的エルフィー派だったこともあって、実は彼女の声については特筆するものが思い出せない。
(グリンダはオーストラリアのSuzie Mathersとか、日本なら劇団四季の苫田さんとかが好みかつ印象的。)
下手だなと思った覚えもないから、そのときの感想としては可もなく不可もなくだったかもしれない。
でも、帰国してから彼女の歌をYouTubeで探してみたら、ブックマークしておいて何度も聞きたくなるような歌がいくつもあるのだ。

なんでかなぁ、曲がいいのかなぁと、最近まで考えを巡らせてた。
それで、私のアンテナに止まる理由を言葉にしてみたら、「等身大な女性の歌」に聴こえるからじゃないかなぁというところに着地した。
ただきれいなだけじゃない、そこには一人の女性がいて、その彼女自身の語りのような歌に聴こえる。
壮大なテーマよりもそういう自分と地続きな曲のブックマークが多いので、少なくとも私にとってはそういうところが魅力なんだと思う。

いくつか見つけた彼女の歌うYouTube動画の中で、一番好きなのは冒頭に挙げたRuler of My Own。
Steven Luke Walkerの作曲で、この人の曲はけっこう好き。
Ruler of My Ownはヴィクトリア女王の映画「The Young Victoria」にインスパイアされてできた楽曲らしい。
曲がとても気に入ったのでてっきり映画に使われてるのだと思ってレンタルしてみたけど、それらしい曲は入ってなかったときは拍子抜けした。

映画の内容はお察しのとおりで、王家生まれゆえに何事も人に決められてきたヴィクトリアの話。
そして曲は、歌詞が見当たらないので一言一句聞き取れてるわけじゃないけど、ヴィクトリアが青年アルバートに出会って、誰のものでもなく自分の人生を生きようと歌い上げている。
出だしの不安で悲しそうな声から、彼に出会って彼に愛されて、自分を意のままに動かそうとする人たちに屈せず自分を律していくのだと強く言葉にするところまで、とても等身大。
最初から威厳や自信があったわけではなくて、様々な経験や出会いを経て得ていく女王としての風格。

若すぎても女王になっていく様との隔たりが気になるだろうし、年を重ねて貫禄が出てしまっても、迷いや不安から脱却する様が描けない。
Ginaがヴィクトリアと重なる若さが声や見た目にリンクしているから伝わる「身の丈」感だと思う。
少し歌というより地声で話してるように聴こえるところがまた然り。


Forever Child - Gina Beck - Music and Lyrics by Anderson and Petty

もうひとつ好きなのはForever Child。
Ginaに子どもはいない(と思う)けど、我が子が腕の中にいるのが見える気がする、優しい歌。
ベースは子守唄的なやさしさで、中盤から後半にかけては「私がなんとしてもこの子の手を引き導く」という決意や使命感も感じる。

これも、歌うにふさわしい絶妙な若さが活かされてる曲だと思う。
母になりたての真っ直ぐさといくらかの必死さ。
声の処理というか、音の角を丸くした声ならシエラとかのがより長けていると思うけど、この曲は変に丸みのある声でなくていい。
少しチューニング外の強さがかいまみえるような声が母の強さと余裕のなさにリンクしてる。

どちらも時々、特に癒されたい気分の時に聴きたくなる。
ロックでもポップでもミュージカルでもなくて、こういう曲にも出会えると、心の豊かさの引き出しが少しだけ増えた気がする。