Impressive Sounds

素敵な歌声や音楽を求めて。

ファンタジーの演出に目を奪われた:FINDING NEVERLAND来日公演 9/13マチネ

全然知らないのでスルーするつもりだったシリーズ(大半の作品でそう言ってるけど)。
SNSで絶賛の嵐しか見えないので、あとクレカの優待があったので、そして夜はケルティックウーマンのコンサートで渋谷に行く予定がもともとあったので、お昼はこちらに行くことに。

YouTubeで来日公演で主演をつとめるビリータイの動画をみたのも後押しになったかな。
高音がきれいそうな歌声してるなと思ったから。


ブロードウェイミュージカル『ファインディング・ネバーランド』主演ビリー・タイ生披露!

ちなみに、シアターオーブはでかすぎて席選びにいつも迷うので軽く座席について。
今回は20列下手ブロック。
このうしろの列くらいから2階かぶりはじめるけど、2階みたいに音が頭上を通りすぎていくこともなく、段差も大きくて視界良好。
もう2階は音のこもりが気になってしょうがないから1階って決めてる、3階は座ったことないけど来月ウィレマイン来日でとってみたので検証予定。

前にウエストサイドストーリーみたときは15列の端のほうで、今回のほうがセンター寄りだったんだけど、センターであればあるほど舞台中央を見てるとだと逆に両サイドの字幕が視野に入らない罠に気づいた。
バランスって難しい。
なのでいつもどおり基本音メインで字幕は時々追うようにした。

声について書くことをモットーにしてるんだけど、先に演出について。

※いつもどおり、がっつりネタバレあります。

タイトルにも入れたけど、歌よりも音楽よりもダンスよりも、一番演出に比重が置かれてる作品に見えた。
All That MattersとかNeverlandの星空はプラネタリウムかそれ以上に幻想的だし、ロンドンの空や大海原も背景映像で大いに表現しているし、かと思えば子供を人力でもちあげて飛んでいるように見せるところなんかは引き算的なアナログな見せ方で面白かった。

シルヴィアが病で助からないとわかるシーンのバックでAll That Mattersが流れる意味。
一幕でシルヴィアはその曲を歌ったわけだけど、そのときはなぜ「今をどういきるかが大事なの」と歌ったのかがいまいちわかっていなかった。
母と「体を大事にしなさい」というやり取りのあとにAll That Mattersを歌ったのが、「だからか(自分の死がわかっているからこそ子どもたちといられる今が大事なのか)」と二幕でわかったとき、同じタイミングで同じメロディーが聴こえて、彼女の想いがわかったような気がして切なかった。

舞台ピーターパンの初日後、ファンタジーの登場人物に扮した劇団をシルヴィアのところへ連れていったシーンはとても素敵だった。
ウェンディとピーターパンに魔法の粉かけられたシルヴィアが、キラキラとした風を受けるシーンは本当にきれいだった(ポスターに使われてるシーン)。

その場ではなぜピーターパンがシルヴィアを連れて窓の外に行ったのかわからなかったけど、ネバーランドに連れていった(亡くなった)のだと、終演後に飲み込んだ。
魔法の粉のキラキラと風の中を舞うシルヴィアのスカーフがきれいで、でもなんだかものさみしい感じがしたのもそれでだったのかと、やはり同じタイミングに合点がいった。

最後、子供たちとジェームズと祖母が手を取り合う未来が示唆され、Believeを歌うのが祖母なのが感慨深い。
彼女は厳格に振る舞ってものを言っていたけど、いつだって娘と孫たちを見守っていた。
娘がいなくなったときにこどもたちに夢と希望を与えてくれるジェームズがいたことは、彼女にとっても救いだったろうと思う。

彼女がBelieveを歌うのは、美女と野獣でミセスポットがBeauty and the Beastを歌うのと相通ずるところがあると思った。
物語の中心ではなかったけど、見守って包み込んでいたやさしさを感じるBelieveだった。

感動したところをドサドサと書いたけど、ストーリーがところどころスッと入ってこなかったのは、空想とリアルの行き来に腑に落ちないところもあったからかな。
大人に寄せてるのか子どもに寄せてるのか微妙な感じがして、基本大人寄せだけど、壁にぶつかったときの解決(最たるはStronger)はファンタジー寄りに見えて。
私が"grew up"し過ぎたのかも、そんなことも思いました。

では本題、声について。
まず4人の息子の母であり、JMバリのインスピレーションのきっかけになった、シルヴィア役のクリスティンドワイヤー。
ブロードウェイでWickedのエルフィーやってた動画はどれを見てもスパーンとしてなくて全然ピンとこない声だったんだけど、今日生で聴いたらいい声!
裏声からしてとてもきれいだし、まっすぐストレート系の声。
彼女のAll That Mattersが文句なしに本日No.1ナンバー。私の中で。

憶測にすぎないけど、エルフィーやるには声量と高音の安定感がいまひとつだったのかも。
シルヴィアみたいな、押し出すだけが全てじゃない、無邪気でありながら母でもあるっていうポジションの女性としてはとても適任な歌声だったと思った。
彼女のAll That Mattersまた聴きたい(もう行く予定ないけど)。


ミュージカル『ファインディング・ネバーランド』より「All That Matters」(日本語字幕付き)

次、ピーターパンの生みの親であり主人公JMバリを演じたビリータイ。
やっぱり思ったとおり高音がストレスなく聴けるいい声だったんだけど、なぜかバックの音量が上がるとそれに負けてしまう声だった。
座ってた席位置と音響の可能性もあるかもだけど、他の人はそうでもなかったんだよな。
Strongerなんか、歌うまいんだけど、お腹にくるような振動を感じるほどのドラムが鳴ってたりするので、圧するのは彼の声じゃなくてドラムの振動だったりして。

シルヴィアとのNeverlandやWhat You Mean to Me、ピーターとのWhen Your Feet Don't Touch the Groundなんかは、彼のやわらかく薄いベールみたいな声の良さがとても出てた。
そしてビリーは、というかJMバリ役は、かなり体力を要求される感じ。
逆さにされながら歌ったり、片足だちで上げてる足を地面と水平並みにキープしながら歌ったり、ベンチから落ちないように海賊に襲われたり。
そんないろいろをやってのけながらも、ビリーはなんだか余裕がありそうだったのですごかったなぁ。

あと、子どもたちの祖母でありシルヴィアの母であり慈善家のデュモーリエ夫人のカレンマーフィー。
最初は棒読みか?と思うような高圧的な一本調子の歌と芝居なのかと思ったけど、それが娘を思うゆえのものだったと納得させるにふさわしい貫き方。
彼女が歌うと、すごく場が締まる。
ベテランが出てきて大団円をまとめるような見え方がしっくりくる。

ほか、出番わかりづらかったけど、JMバリの妻であるメリー夫人のクリスティンリースも良かった。
声が特徴的で、その時代にいかにもいそうな、周りの評判が気になるプライド高い女性感を出してたと思う。
この方、PIPPINでキャサリン、Wickedでネッサローズもやってたこともあるみたい。
キャサリンもネッサも今回のメアリーも歌が多くないのでちょっともったいない気も。
でも声が特徴的だから、メインにはなかなか難しいのかな?

歌声的にはそんなところか。
子どもたちはみんな可愛くて、特にジョージがウクレレ持って歌うときに「美声で歌うまいな、背が高くしっかりもの感があり長男ぽさもあるな」と思ったかな。
なんと子どもたちは、ピーター、ジョージ、ジャック、マイケルをほぼみんなが代わる代わる演じるらしい、すごい。

あとは歌の韻がいいものがいくつか。
Circus of Your MindとかThe World is Upside Downあたりはすごく音のおさまりがよく、不穏さだったりファニーさだったりを表すにもうまく機能してたと思う。
ディズニーのホーンテッドマンション的な雰囲気もあったかな。
ハーモニーや音の重なりよりも個々をたたせていた印象があって、ミュージカルよりショーっぽいと思った。

ちょっとSNSの絶賛の嵐に期待値を上げすぎたので「思ったほど…?」なんてよぎったりもしたけど、やっぱり海外キャストの公演は好きだな。
声のパワーバランスの大小があったりしても、それを気にさせないレベルに歌声の素敵な人がいたり、日本ではなかなか見られない演出が見られたり。
これからも「行くつもりなかったシリーズ」はどんどん増えることでしょう。

メインキャストは以下。
J.M. Barrie(JMバリ):BILLY HARRIGAN TIGHE
Sylvia Llewelyn Davies(シルヴィア):CHRISTINE DWYER
Charles Frohman/Captain James Hook(フローマン/フック船長):JOHN DAVIDSON
Mrs. du Maurier(デュモーリエ夫人):KAREN MURPHY

Peter Llewelyn Davies(ピーター):CONNOR JAMESON CASEY
George Llewelyn Davies(ジョージ):COLIN WHEELER
Jack Llewelyn Davies(ジャック):WYATT CIRBUS
Michael Llewelyn Davies(マイケル):TYLER PATRICK HENNESSY

アンサンブルはキャストボート記載順に以下。
CHRISTINA BELINSKY
TURNER BIRTHISEL
CAITLYN CAUGHELL
SARAH MARIE CHARLES
ADRIANNE CHU
CALVIN COOPER
DWELVAN DAVID
NATHAN DUSZNY
BERGMAN FREEDMAN
VICTORIA HUSTON-ELEM
MELISSA HUNTER MCCANN
CONNOR MCRORY
THOMAS MILLER
NOAH PLOMGREN
MATTHEW QUINN
WILL RAY
KRISTINE REESE
COREY RIVES
DEE TOMASETTA
MATT WOLPE

たっぷり浴びたアイリッシュ音楽:ケルティックウーマン 9/13東京

ケルティックウーマン、6年ぶりの来日公演。
最新アルバム Voices fo Angelsをメインに。
会場は、シアターオーブ同様に距離を感じる席が多い(と個人的には思っている)オーチャードホール


Celtic Woman - Danny Boy (1 Mic 1 Take)


今回はバルコニーのかなり前の方にしてみたら、ステージに近いのはいいのだけど手すりが少し目にはいる位置で、気になるといえば気になった。
でも、自分の座高を多少調節すれば済むレベルだし、なによりなかなかこんなにステージに近い席は狙って座れたことがないので、4人の表情も肉眼で余裕で見れて良かった!
みんな美人さんだけど、個人的な好みとして特にタラがかわいかった、エイバのクールビューティーな感じとスタイルも素敵だった。

バックバンド構成はこんな感じ、女性ドラマー以外みんな男性。

・ドラムおよびパーカッション:上手が女性ドラマー、下手が男性ドラマー
バグパイプ:上手に一人
・ギター(鍵盤兼務):上手に一人
・ピアノ(グランドとエレピ):下手に一人
・コーラス2人(どちらもタップもできる):ウーマンたちの4人のうしろに二人

ツアーだからしょうがないけど、女性コーラスもほしかったかな、あと男性コーラスももう少し。
なによりMAX5人いた歌い手が3人になってるので、音の厚みはどうしても物足りなさは否めない。
とはいえ少ないながらも歯抜け感はなくまとまってたかな。
以下曲ごとの感想。


■第一部(約50分)
・Mo Ghile Mea
ドラム2人のセッションから始まり(バクパイプもあったかしら…)。
なんかちょっと4人の歌声が機械音っぽかったけどPAのせいかな?

・My Heart Will Go On
YouTubeでも思ったけど、これはセリーヌディオンのオリジナルが強すぎるから、流れて聴こえちゃうんだよな。
でもね、エイバが歌い始めたら、そのミステリアスな声の響きに思わず目を見開いた。
なんなんだろうあの声、ハスキーなのにクリーンなの。

・Dulaman
マレードのソロ、可愛い声をしてるんだな!
スーザンもそうなんだけど、ケルティックウーマンではあれど、気持ちポップス寄りな気もする。
あと4人の中では小柄なほうなのでそれもかわいい。
この方は高音も楽々出るのに、時々ちょっと音程の微調整に違和感を感じることが。

・Isle of Hope, Isle of Tears
アイルランドからアメリカへ渡った小さな15歳の女の子の歌。
私がエイバびいきというのもあり、なんだか涙が出そうになった。
故郷を想う少女が成長して歌っているような、やさしさと哀愁を感じる歌。
前はクロエが歌ってたと想うけど、エンジェリックボイスのクロエも、癒しのハスキーボイスのエイヴァも、どちらもいいなぁ。

Amazing Grace
おなじみバクパイプ始まり、客席中央から演奏しながらステージへ。
去年スコットランドに行ったときのことを思い出したら、あちらではバクパイプの音って日常だったなと。

・Across The World
前メンバーのマレードの躍動感もすごかったけど、タラのフィドルはしなやかな音がする気がする。
背が高く手足が長いのでくるくる回りながら弾くのは少し大変そうなのかな?という感じがした。
いやしかし彼女は絵的にもとても美しく、対する演奏は軽快だった。

・She Moved Through The Fair
きれいな曲。
これはスーザンが歌ってたんだけど、実はスーザンの声は他2人よりも特徴が少ないように私には聴こえていて、つまりはそつなく聴けてしまうから正直印象がちょっと薄い…。
彼女で印象的だったのは、少しの振り付けなのに長い髪が揺れるせいかとても優雅に見えたダンスかな。

・Danny Boy
エイバ歌い始め、やっぱり初期メンバーのオーラと同じ役割だ。
やさしい子守唄のような曲だなといつも思う。

ケルティックバンド
アイリッシュバンドと言っていたかも、失念した。
バックバンドたちのセッションタイム。
アイリッシュタップもあって、タップダンスに興味がある私はすごく嬉し楽しかった!

Nil Sen La
これは定番、盛り上がるし曲もいいのだよね。
休憩を挟む旨だれか(スーザンだっけマレードだっけ)がアナウンスしてくれて、もっと聴きたい!と思いつつも第一部終了。


■第二部(約50分)
・Teir Abhaile Riu
実は最新アルバムもってないし聴いてもないのでこれは知らなかった。
(ニルシンラ系で盛り上がったと終演後のメモに書いてた)。
H.I.P.のレポを読んで思い出したけど、これはスーザンがスプーンのようなパーカッション、エイバが笛、マレードがアコーディオンを演奏していた。
https://www.hipjpn.co.jp/archives/live_report/celtic-woman

・Orinoco Flow
エンヤのイメージもあるけど、ケルティックウーマンくらいは人数いて躍動感ありつつ演奏されるのが好き。
歌い手はもっといてもいいくらい。

・For the Love of a Princess
タラの極上のフィドルタイム、これがすごく良かった!
彼女は軽快なパフォーマンスよりも、こういう情感たっぷりな曲がより合うんじゃないかな。
音を一つ一つ堪能した。

Ave Maria
マレードのアヴェマリア、これが圧巻で。
基本的に讃美歌ベースに歌われると思うんだけど、彼女のはオペラチック?
ちょっと迫力さえ感じた。
最高音がまぎれもなく良い響きで素晴らしかった!

・Walk Beside Me
前でもなく、後ろでもなく、もちろん私無しでもなく、ともに歩いてほしいという曲。
アイリッシュっぽくはない感じがしたけど、どういう部類の曲かな?

・The Voice
これはリサケリーver.が好きなのだけど、スーザンver.は1音下げで声が出しやすくなってるせいか、ロック寄りで面白かった。
アレンジも緑豊かな大自然イメージよりは、少し岩肌の見える大自然イメージ。

・Sadhbh Ni Bhruinneallaigh
これも最新アルバムかな、知らなかった。
→アルバム収録ではないけど今回のツアーでは歌ってるとのこと、Twitterで教えていただきました。
 ありがとうございます!

アイリッシュ民謡みたいなものかと思う。
最初はソロで、次第にパーカッションとともに。
エイバはゲール語が話せるらしいし、持ち前のハスキー癒しボイスもあいまって、落ち着いたアイリッシュナンバーが特に合う。

・Time To Say Goodbye
マレードの歌い出し、音響がおかしかった…。
お風呂エコー的な感じで、本人も一瞬戸惑ってたと思う。
アヴェマリア同様素晴らしかったのにもったいない。
とはいえ出だし以外は持ち直して、4人のハーモニーがきれい。

・You Raise Me Up
代表曲だねやっぱり。
そもそもいい曲だね。
スーザンとエイバがずっとイヤモニをしきりに触っていて、もしかして何か不調があったのかな?
そのせいか、ハーモニーも3人でちょっと物足りないのと、これはどうしてもリサケリーのリードボーカルで聴きたいなって思っちゃった。

■アンコール
・The Parting Glass
「日本でこの時をシェアできたこと、本当にありがとう、Good Night and Joy Be With You」とスーザンが言葉を添えて、ラストはこの曲。
歌い終わって一度ハケたけど、もう一度軽快なアイリッシュバックバンドの音楽を受けて舞い戻り、みんなで優雅にお辞儀をして、わりかしあっさりと終演。


今回の収穫は、やっぱりエイバのミステリアスな声を堪能できたこと!
あの声、絶対マイナスイオン出てる。
ハモでも埋もれないし、安定感もあるし、圧倒するというより下から包み込んでくれる感じ。

そしてタラの情感たっぷりのフィドル
あとメモし忘れてしまってどの曲か覚えてないんだけど、彼女がハープを弾く曲がふたつくらいあって。
→Danny BoyとTime To Say Goodbyeで弾いてたとのこと、Twitterで教えていただきました。
 こちらもありがとうございます!

教えていただいたおかげでハープの音色も少し記憶が戻った。
Danny Boyはやさしいハーモニーに寄り添うようなハープ、Time To Say Goodbyeはオペラ歌手のドレスのフリルをはためかせている様を連想するようなゴージャスなハープだった。
絵的に美しいのはもちろん、ふつうは存在感の薄そうなハープが、美しい歌声との調和でなんとも素敵だった。
ハープに注目したのは今回が初めて。

それぞれの声、それぞれの音を、聴き逃さないように集中して観れたな。
海外旅行ついでじゃないとと観れないだろうなと思ってたけど、メンバー総入れ替えとはいえ、久しぶりに来てくれて良かった。
素敵な夜、耳が幸せだった。


Celtic Woman are Susan McFadden, Mairéad Carlin, Éabha McMahon, and Tara McNeill (in this show).

さらっと出てきてバシッときめてくすがすがしさ:THE LIPSMAX 9/5@下北沢440

THE LIPSMAXは女性3人構成のロカビリーロックバンド。
ロカビリーがなんたるかは詳しく知らないけど、とにかくこのバンドはロカビリーにあたるらしい。
音数少ないのに各々かっこいい音と声をアウトプットするバンド。


Devil's Sisters / THE LIPSMAX - LIVE@SHIMOKITAZAWA GARDEN
Vo&Gt:LOVE
Ba&Cho:TOKIE
Dr&Cho:Miyoko Yamaguchi

彼女らを知ったきっかけは、以前働いていた会社で流れていた東京FM。
LOVEちゃんがお昼の帯の番組DJを担当していて、SHELLYみたいな、落ち着いたクレバーな話し声が好きだった。
仕事片手間に彼女がバンドを組んだのが耳に入って、Youtubeで観て見たらいい感じで以前もライブに行ったことがある。
その後は自分の都合が合わなかったり、そもそも本人たちが各方面で多忙でライブ数が少なかったのもあったりで、今回はかなり久々のライブだった。

20時スタート、少し押してた。
けどOpening DJがいてそれに合わせてすでにノリノリで踊ってる人がいたので、それを聴いたり眺めたりビール飲んだりしていたら、わりとナチュラルに3人が登場しすぐ演奏。

全体の雑感として、TOKIEさんのベースは音がデカいとかいうことじゃなくて、輪郭がしっかりあるから芯が通った音がするなぁと。
エレベはそんなことないけど、ウッドベースはぼやぼやしてにじむような音の人が多い印象なので、詳しいことはわからないけどやっぱり上手なんだろうなと思った。

LOVEちゃんは、ラジオDJのときはそうでもなかったけど、MCのときの声が高くて少し末っ子感があった。
歌声は引出がいろいろある感じで、男前な声も出せれば猫なで声も出せるし、個人的に好きなのは出る音域だけどあえて裏声出しているときの声。

美代子さんは髪がさらに短くなられて、どこまでいっちゃうのかしらーと思ったり。
正直ライブ中は他二人に目も耳も奪われることが多いんだけど、叩きながらのハモもいい感じ(このバンドの曲はがっつりハモる感じでもないし、かといって空気でもいけないし、逆に難しいと思う)。
CD聴いてると、生よりもドラムの音の粒がちゃんと聴こえて、転がるような勢いを感じてそれも楽しい。


【Sumertime Blues】
のっけから知らない曲、というかYoutubeで見れる以外の音源は持ってなかったので大半は初聴きの曲だった。
ここがこのバンドの不思議なところで、どの曲も耳馴染みがいいもんだから、帰りに買ったCDをちらっと聴いただけで「あぁこれやってた、これもやってた」と思い出せるのだった。
まあこの曲はCDに入ってないから忘れちゃったんだけど。
曲名から調べるに、THE WHOのカバーなのかな、とりあえず美代子さんセレクトのカバーと言ってた気がする。

【Fantasy in Blue】
陽気なナンバー。
今回みたいにウェルカムソングにもいいし、お別れのフェアウェルソング的な感じでアンコールにあってもいいような、陽気さの中にセンチメンタルさも感じる曲。
他の曲でもそうなんだけど、TOKIEさんの派手さを押し出しはしないけど適度にリズミカルなベースが心地よい。

【I Know What You Did】
んー、忘れちゃった。
わりと聞き取れる簡単な英語の歌詞かなぁということだけなんとなく覚えている。

【Sugar High!!!】
コール&レスポンスある感じの曲。
よくわからないけどSugar High! Sugar Sugar High!!とマネして言っていた。
クライマーズハイならぬお砂糖ハイってことなのね、かわいかった。

【Perfect】
こちらはTOKIEさんセレクトだったか。
そういう話をしていた気がするのに演奏や歌声のことは忘れてしまった。
さすがにこの曲名だけでは何の曲のカバーだったかを思い出すことはできないわ。

【Sweet Chilli Chilli】
西海岸の解放感とけだるさを感じる一曲。
オールディーズが好きなおじさまにもウケがよさそう。

【Y-O-U】
ベースもドラムもギターも、もちろん歌も、かっこよかった!
女性が乱暴に「YOU」に向かって語りかけるナンバー。
乱暴なんだけど、最後の最後「あなただけ」と女性の本音と弱みが見え隠れするような歌詞と声のリンクが素敵。

【Fever】
これはLOVEちゃんセレクト、Peggy Leeのカバー。
LOVEちゃんが「熱、フィーバー!」っていうくだりにハマってしまったらしく、何度も同じくだりを繰り返して曲紹介。
指ぱっちんとTOKIEさんのムーディーなベースが大人の雰囲気を醸し出してて、これはバーでウィスキー飲みながら聴きたいと思った。

【Risky Whisky】
私がウィスキーのこと考えたのはたまたまだろうけど、次の曲はこれ。
LOVEちゃんの素敵な裏声が何度も聴ける、サビ前も大人な女性のしっとりした声が聴ける、個人的お気に入り曲。

【Utano Mamani】
心のままに~みたいなことを歌った曲。
おだやかなロックソングっぽいのに、途中でシャウトや軽いコール&レスポンスがあるのが面白い。

【J.T.Beat】
いろんなところを旅したい曲、サビ前とサビの曲調の感じが違って面白い。
前半はちょっとラップっぽい感じで、サビで開放して広く遠く伸びていくような音と歌詞。
LOVEちゃんはこれを歌いながら北朝鮮の昨今のあれこれが一瞬頭をよぎったらしく、悔しがっていた。

【Meow Meow】
CDを買って気に入って特にリピートしているものの一つ。
リズム隊がかっこよくて、一定リズムでカッティングするギターもパワーコードっぽくて、全体的に音が厚い感じ。
ライブ中はかっこよさに気をとられて気が付かなかったけど、最後は「meow meow meow~(ミャオウ ミャオウ ミャオウ~)♪」と言ってるのだとCD聴いて知った。

【Long tall sally】
残念ながらひとつも覚えていることがない曲。

【Poor Little Billionaire】
カウベルが登場した時点でこの曲だと思った。
ロカビリーがなんたるかわかってないけど、ロカビリーっぽいなと私が思っている曲その1。
美代子さんの転がるようなドラミングが楽しめるありがたいナンバー。

【Devil's Sisters】
LIPSMAXといえばコレ、と私が思っている曲。
3人のかっこいいところがそれぞれ入っていて、やっぱり聴きごたえがある。
TOKIEさんのソロもあるし、美代子さんのドラムは振れ幅があっていろいろ楽しめる。
あと、LOVEちゃんがラストに「Thank you for calling!」って言うのもかっこよくて好き。

【The Lip Smacks】
本編ラスト、これもLIPSMAXといえばコレ、シリーズ。
LIPSMAXとLip Smacksをかけてておもしろい。
これもラストに向けての迫力が素晴らしいのと、シメ前のTOKIEさんのベースがおいしい。

【Miss Bunny】
本編終了の拍手がそのままアンコールの拍手になってアンコール待ち、1~2分拍手してたらバンドTシャツを衣装の上から着て戻ってきた面々。
ラストは投げつけるような歌と、テンション上げにかかってくるリズム隊が楽しい曲。
これも、よくわからないながらに「ロカビリーっぽい」と思った。
CDの中でこれもよくリピして聴いている。


主観どころか私しかわからない程度にしか残せてないけど、とりあえず平日夜定時ダッシュに成功してのTHE LIPSMAXライブ、最高でした!

素敵ボイスにたくさん出会えた日:ビューティフル 8/26千秋楽

歌手・キャロルキングの公私のストーリーをもとにつくられた、ジュークボックスミュージカル「ビューティフル」。
実はこれも「パレード」同様、観るつもりじゃなかったシリーズ…
でも、千秋楽かけこみで観れて良かった。


ミュージカル『ビューティフル』8/26(土)千穐楽カーテンコール

プリンシパルたちは作詞家や作曲家の役で、ふつうの作品ならバックでコーラスしたりダンスしたりのアンサンブルたちが当時のスター歌手たち。
そのアンサンブルナンバーがどれもこれも歌うまで良いと聞いて、歌好きな身としてはやっぱり行っとくか、と思って行ったのでした。
歌うまいだけじゃなくて素敵な声をお持ちだなぁという方を何人も発見できたので、貴重な機会を逃さなかった自分をほめたい。笑

ストーリーは公式でもご覧いただくとして。
http://www.tohostage.com/beautiful/
先に歌や音楽以外の感想をザザっと。

キャロルが若かった頃はつくり手と歌い手が分かれているのが当たり前だったこと、どんな曲を誰に歌ってもらうかがキーだったこと。
そして時代の変化と自身の変化から、自分の曲を最も表現できるのは自分と気づき歌い始め、最終的にカーネギーホールでのライブまでたどり着くこと。
ミュージカルって日常とはかけ離れたところの出来事のように見えることも多いけど、この作品は各々がいろいろな公私の喜びや苦難を経て生きてる様を、ファンタジーやスペクタクルではなくドキュメンタリーのような感じで見せてくれた。
すごく私たちの日常に寄り添った作品だったなと思う。

セットは、ピアノをステージ中央に置いて上手半分を明るめに照らしてキャロル&ジェリー夫妻、下手半分をローライトな感じにしてシンシア&バリー夫妻で区切ったシーンはおもしろかった。
ピアノは2夫妻で1つなので、ジェリーもバリーもピアノのところにきているけど、あたかもピアノは壁を背に配置されてるかのように別夫妻の部屋とは別物として見せていた。

それとライティングも良くて、休暇で4人が訪れた雪山のシーンでは降り注ぐ雪がきれいに舞って見えたり、ラストのカーネギーホールでのライブではキャロルを後ろから照らすいくつかのスポットライトがクレッシェンドみたいに強くなったりしていた。
特に後者はライブおよび本編の最後の最後というのもあり、なんだか目頭が熱くなったりして。

あとは衣装やウィッグも見ていて楽しかった。
柄物ワンピースだったシュレルズが数秒死角に入って戻ってくるだけで、ピンクのゴージャスなドレスになったのにはびっくり!
シュレルズはブルーグリーンのドレスもあってそっちもきれいで、あとはベビーシッターがロコモーションの衣装になるのはミュージカル版シンデレラのドレスと同じ仕組みだろうけどやっぱり一瞬で楽しかった。
シンシアの衣装はどれもスタイル良くて、キャロルの地味な衣装とは一貫して対になっていた。

男性陣は、当時の格好をして当時の髪型をして当時のダンスをすると、本国本家のドリフターズじゃなくて日本のお笑いの方のドリフターズに見えてちょっと笑ってしまった。
でも描写としては間違ってないと思うし、日本人がやるとどうしてもああなると思う。

マイナスというほどではないんだけど、気になったのは、かなり場面転換が多く感じたことかな。
別に不自然ではなかったからダメとも思わなかったけど、あんなに何度もピアノや人を行き来させなくても済む流れにもできたのでは?と。
アメリカナイズな感じを意図的に出したようなセリフと早口なのもあり、バタバタとせわしない印象が残った。

雑感はこのあたりにして、本題である素敵ボイスたちの感想、印象的だったこの3人をpick!

・伊礼彼方さん@ジェリー・ゴフィン(キャロルの夫)
平原綾香さん@キャロル・キング
・菅谷真理恵さん@Up Townのソロ

まずはこの日歌った途端に私の興味関心を一気にもっていった、ジェリー(キャロルの夫)役の伊礼彼方さん。
ざらつきがなくてあまりにも自然で、少しだけミステリアスさもしくは影が漂うような声、彼が歌い出した途端に私の耳はダンボに。
もはや「声を出す」ということさえしていなくて口を開けただけで音が出てくるんじゃないか、体とマイクとスピーカーが一体化してるんじゃないかというくらいの音ストレスのなさ。

残念ながらソロをがっつり聴かせるナンバーがなかったのだけど、私の耳を、いや心をかっさらったのはUp On The Loof。
後半はドリフターズが歌うから途中までしか伊礼さんじゃないんだけど、「高いところにのぼると心が落ち着くんだ」と先述の素敵ボイスで歌われたら耳と心に半端ない量のマイナスイオンが流れ込んだ気がした。
二幕のPleasant Valley Sundayも歌ってたけど、そちらは退屈から逃れたいという鬱憤を歌っていたから、歌い方がだいぶちがって、こちらはロックバンドでフロントできそうな声量と余裕さ。
劇中でなくてライブでいろんな歌声をもっと堪能したいところ。

あと歌じゃないけど、彼のジェリーの役作りはけっこう好きだった。
クスリやって浮気しちゃうダメ男ではあるんだけど、彼なりの考えや軸があるというか。
常にいいものや新しいものを追い求めて刺激や情報を取り入れようとしていただけで、キャロルや家族を裏切りたいと思ってそれらをしてたわけではなかった。

なので私には全然悪いやつには見えなくて、よくいるアーティストのひとりだなと思った。
アーティストってこだわり強かったり「かくあるべし」を持ってるイメージがあるから。
ラストにカーネギーホールの楽屋でキャロルに会いに来るシーンがあったけど、彼がいたからキャロルはいろんな曲がつくれて、そして自分が歌うという選択に辿り着いたんだなと思ったら、なんだかダメ男ジェリーがとってもいとおしかった。

…伊礼さんだけで尺使っちゃったけど、主役キャロルの平原さん。
学生の頃はライブによく行ってて、今回久しぶりな彼女の生歌を聴いた。
若い頃の喋り声や歌声がとても可愛らしくて、It Might as Well Rain Until Septemberのプル♪プル♪プル♪プル♪っていう雨の音もとい声が特に愛らしかった。
彼女がふつうに歌うと落ち着きのあるハスキー寄りの声というのを知っているから、年代によって声音を変えているのがよくわかった。

対して、一幕最後のOne Fine Day、二幕で自分が歌うと決めた(You Make Me Feel Like) A Natural Woman、ラストのBeautiful、カーテンコールのI Feel the Earth Move。
これらは本人の本領発揮という感じ。
クラシックの印象強かったけど、ソウルっぽい拍の取り方も感じて迫力あり。
歌うまいのでさながらほんとにライブに行ったみたいでとても満足感高かった!

ただこれを言っていいのか微妙だけど、本人の歌唱であってキャロルの歌唱ではなかったかな。
キャロル本人はかすれ気味の声のカントリーな歌い方をする人で、大人な味のあるかっこよさは感じても大声量でスコーンと聴かせて大迫力!というのは少し違うかなと。
でもラストかつライブという設定だし本人に寄せて歌って盛り上がりに欠ける…というのももったいない話なので、本人の本領発揮モードで良かったなと私は思った。

あとはアンサンブルの方、菅谷真理恵さん。
シュレルズのときは声は特定できなかったんだけど、身のこなしはカンパニー全体の中でも特に目を引いたかも。
昔の振り付けなので今どきのハードなダンスみたいな動きは全然ないんだけど、手足の優雅さというのか、なんならカーテンコールでの立ち姿まで、いつ見てもきれいでついつい目で追ってしまった。
きっとダンスがお得意な方なんだろうなぁ、もっと見てみたい。

そしてこの方の声を唯一ちゃんと特定して聴けたのが、Uptown。
バリーとシンシア夫妻のつくった曲を、バンドをバックにボーカル彼女で歌う曲。
あまり長くないし1曲まるまる歌に集中するようにできているシーンじゃなかった気がするので細かくは思い出せないんだけど、とにかくこの方の声はドラマチック!

歌い始めたところから、「やばいこれはこの後すごく感動する声が聴ける予感がする…」って思って、そして思った通りだった。
なんといったらいいのだろう、MISIAの歌声に似てるのかな、なんだか音をなぞるだけじゃない何かを感じる声だったのだよねぇ。
イメージとしては地響きのような、上っ面じゃない、もっと深いところから響かせるような声がとっても素敵と思ったのでした。

pickの3人は以上だけど、歌うまい人たくさんいたのでもうちょっと触れたい。
まず、シュレルズのメインボーカル、高城奈月子さん。
Will You Love Me Tomorrowのしっとり大人な女性の声がとても素敵で。
あとたぶんOne Fine Dayでは高音のコーラスをしてたと思われるけど、そちらも音がピシッと当たってて気持ち良かった。
そのOne Fine Dayではエリアンナさんがジャネール・ウッズとしてメインをとってて、こちらもとても素敵。
歌唱がパワフルで、でも余裕があって、あと手足も長いしお化粧も似合ってて美人さんだなあと。
歌がうまい方って、ブラックの方の役やっても平然とブラックっぽい歌い方してくれて嬉しいし説得力がある。

あと最後に、バリー・マン役の中川晃教さん、やっと拝見&拝聴できた。
歌うまオバケと聞いていたのでずっと見て見たかった彼、たしかに歌うまオバケだった。
前は歌手をしていたのね~知らなかった。
それを差っ引いても尋常じゃないくらい歌がうまいことがわかった。

でも今回は歌よりも、コミカルな演技がとてもハマっていて楽しかった!
病気持ちでちょっと空気が読めなくて金儲けのこともすぐに口に出しちゃうキャラクター、間違うとただのヤな奴になりそうだけど、彼のはそのあたりのさじ加減が絶妙。
バリー&シンシアカップルは登場するたびに面白かった。

観てない人にはなんの魅力も伝わらない気しかしないけど、ゆるしてほしい。
なぜなら素敵ボイスが多くて、しかし各々が持ち歌短くて、ちゃんと描写できるほど耳が覚えてられなかった。
起承転結はもちろんあるけどミュージカルにしてはそれらがあっさりしてはいるので、何度も何度も観たいかというと正直そうでもないかも。

でも、歌唱力の洪水にのまれたいわーというときや、あの人の歌が聴きたいわーというとき、やっていてくれたら軽率に観に行ってしまいそう。笑
再演予定は今のところないようだけどまたあったら観に行きたいし、今回発見した素敵ボイスさんたちを他の場所でももっと観たいなぁと思える、とても収穫ある観劇でした。

【キャスト】
キャロル・キング平原綾香
リー・マン中川晃教
ジェリー・ゴフィン:伊礼彼方
シンシア・ワイル:ソニン
ドニー・カーシュナー:武田真治
ジーニー・クライン:剣幸

伊藤広祥/神田恭兵/長谷川開/東山光明/山田元/山野靖博/清水泰雄(SWING)
エリアンナ/菅谷真理恵/高城奈月子/MARIA-E/ラリソン彩華/綿引さやか/原田真絢(SWING)

「カジモドだけが心清らか」説に違和感を覚える話

ウィキッドと同じくらい曲もストーリーもどはまりしたミュージカル、ノートルダムの鐘。
観てないなら人生損してるから一度は観たほうがいい。
イマイチだと思ったらそれで最後にしたらいいし、心に刺さるものがあれば折に触れてまた観たらいい。


Making of "The Hunchback of Notre Dame" Studio Cast Recording

ノートルダム、もうほんとに音楽が豊かだし観るたびに何かしら戒めを感じるしウィキッドと共通点がすごく多いと思う。
自分の決断と無名の群衆の反応によって人生や運命は動いていくのだと。
だから絶えず自分の決断に責任を持つこと、人々の操作不能な反応にのまれるかもしれないこと。
私はそういうようなことを観るたびに思う。

そんなミュージカルであるノートルダムの鐘、ネットをはじめ様々なところでたくさんの解釈を見かける。
そしてその中でも、舞台上でのとある演出に絡む「解釈」に私は違和感がある。

※今さらだけど大いなるネタバレあり。

カジモト役者は冒頭「ふつうの青年」として舞台に現れ、観客の目の前で顔を墨で汚しコブを背中に装着し、顔と体を歪ませて「カジモド」になるという演出がある。
そうして一度カジモドになったら、ずっと汚れた顔で歪んだ顔体のまま。
要するに「醜い」。
そしてフィナーレで民衆たちが顔を墨で汚し体を歪ませる一方で、カジモドだけが墨を落としたきれいな顔になり、まっすぐな姿勢で舞台中央に立ち上がる。

この演出についてネットで見かけることがあるのは、「カジモドだけが心清らかだからきれいな顔なんだ」という解釈。
正解・不正解とかないと思うし、こう思った人が多いことにも不思議はない。
私も部分的にその解釈はわかるから。
ただ、それよりももっと複雑でやり場のない気持ちがするのだ。

だってカジモドはフロロー・エスメラルダ・フィーバスたちに出会い共に過ごしたことで、いろんな経験をしいろんなことを感じるようになった。
だからエスメラルダと一緒にいたいという気持ちばかりが強くなって周りが見えなくなるし、フロローに不信感を持つのはまだしも、最終的には彼を殺してしまう。
いかなる理由であれ彼がまっさらで真っ白だとはとても思えないし、むしろなんの制御もきかなくなって狂気にのまれてダークサイドに堕ちたともいえる。

だから私から観ればあの演出は、こちらを動揺させ揺さぶるもの。
今まで人々がふつうの人間でカジモドが人ならざるもの(怪物)に見えていたのに、ラストの演出でそれが逆転するといとも簡単にものの見え方は180℃反転するし、人の善し悪しなんて紙一重だという衝撃。
自分も人なんだから彼らと同じじゃないかという絶望に似た救われない気持ち。

ちなみにノートルダムは海外ではまだ観ていなくて、東京で海宝さん、飯田さん、田中さんそれぞれのカジモドを観た。
飯田さんのカジモドは、ぼんやりとした子どものような青年がしかるべき経験と感情を得ていくような見せ方だった。
田中さんのカジモドは、異形の生まれつきゆえどこか最初から諦観して空虚な青年が、エスメラルダに出会うことで束の間人間らしい温度感を垣間見せるような表現だった。
彼らの場合は終わりの演出で「人ならざるもの(怪物)の姿から人間の姿に戻してもらえた」ように見えるので、少しフィナーレでも安らぎを感じる部分があった。

一方で初めて観たカジモドが海宝さんだったからというのはあるかもしれないけど、最も印象深く衝撃が大きかったのは彼のカジモド。
青年⇔カジモドのギャップがひときわ大きく、スタート時点のカジモドがとてもおびえた青年で、他人に影響を与えたり傷つけたりすることから最も距離を置いているカジモドだった。
だからフィナーレでそれを覆してしまったこと、そして「ふつうの青年」に戻ったときの見え方がスケルトンな抜け殻みたいだったこと、「響け鐘よノートルダム」と全員で歌っているときになんだか人の業を担ったキリストのような険しい顔をしていたことがあいまって、哀れで救われないような後味だった。
レミゼを観終わった後の、人のせいとも時代のせいともつかぬ、言い様のない感覚に似ている。

ほんと、最初に観たのが海宝さんカジモドで彼の解釈と歌と演技にとても感動したから、こんなにノートルダムに深入りした。
来年の横浜公演おそらく出てくれるんじゃないかなと思ってるけど、一般発売でチケット取れるかしら…(超絶不安)。
あぁ。
私に彼のカジモドをもう一度観る日が、コンサートじゃなくて劇中で歌うのを聴ける日が、ちゃんときますように。