Impressive Sounds

素敵な歌声や音楽を求めて。

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いろいろ観た・聴いた感想を書いているわけだけど、無料版はてなブログWordpressみたいにメニューバーの項目を編集できないようなので。
(※ほんとはできるのかも。私が知らないだけなのかも。)
基本的には時系列にしか見えないのって見づらいなって自分が思って、整理のための記事、ディレクション

ちなみに…私がこのブログを始めたきっかけは最初にすでに書いていたりします。
impressivesounds.hatenablog.com


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まとめが雑だが素敵音楽が勝ち:Beetlejuice the musical 9/13

遅めの夏休みはニューヨークへ。ミュージカルは3本観て、その1発目がBeetlejuice。期待を裏切らずとっても楽しかった~!ゆえに?感想長いです。

あらすじは?と言うと、ベースはティムバートンの映画「Beetlejuice」をもとにしているので、大枠はそれ。私も映画とサントラで予習してから本番観ました。

※細かい設定や、ラストの結末は映画とは異なります。

日本でやってない作品ってネタバレ有無問わずあらすじもあまり豊富でないので、今回観たBeetlejuiceやHadestownは、全体のストーリーも別ポストでダイジェストできたらなと。

Beetlejuice Musical Broadway Trailer | First Look


まず、劇場に入った瞬間から雰囲気満点。ホーンテッドマンションみたいな少し不気味な音楽、暗めにしてあるけど照明は緑と赤であやしげ。緞帳には「Beetlejuice→」というネオンがぶらさがり、矢印の差す先には少しめくれた緞帳の隙間から緑の煙が出ていて、ビートルジュースが出てきそうな感じ。

日本のミュージカルってロングラン作品でもこういう作り込みはされてないし、今回これの他に見たHadestownやWickedは、舞台上は雰囲気づくりされてたけど客席やロビーはそれほど。6月にオープンしたばかりの「Moulin Rouge!」は真っ赤でネオンがギラギラらしいけど、Beetlejuiceと同じ監督が手がけたそうで納得。

playbillをもらって、特に代役の紙は挟まってないのを確認。念のため、入口のキャストボードの写真も着席してからしげしげ眺め、メインロール全てオリジナルキャストの出演を確信。嬉しい!


そんなこんなで始まる前からワクワクドキドキ、いざ始まったら、意外と音量はマイルドな印象で少し拍子抜け。ボーカルはいいのだけど、低音打楽器系がもっとビシバシきたらもっと嬉しかったかな。

と文句を言っておきながら、基本的にこの作品全体的に曲が好きなので、実際に目の前で繰り広げられる演奏・歌唱・演技・特殊効果…どれも楽しませてもらった。ずーっとYouTubeで見ていたものが現実になるというのは、いつになってもやはり感動的。


さてキャスト。まずはタイトルロールのビートルジュース、アレックス。この作品は彼無しには成り立たないんじゃないかと思わせるほどのハマりっぷりだと思う!

映画のビートルジュースは「まじで気持ち悪いゾンビおやじ」と個人的には思うのだけど、アレックスのビートルジュースは「ちょっと気持ち悪いけどかわいげもある小太りおやじ」って感じ。映画に寄せて歌うときも喋るときもちゃんと声潰してるけど、それでもどこかかわいらしくて憎めない。

小太りのくせに小走りうまくて動きが機敏。どこまでが台本通りでどこからがアドリブなのかはわからないけど、とにかく面白いことを(唾を飛ばしながらw)言いまくる。手元に収まるはずの小道具が滑り落ちてもそれさえネタにする。ちょいちょい自分の乳首触る。笑

タイトルに入れた通り、後半はストーリーがやや雑な感があって、特にビートルジュースの行動についてはそれが顕著なんだけど。アレックスのビートルジュースなら「うーんまあ、なんだかんだお人好しだし、おもしろおかしいことが全てみたいなキャラクターだから、こういう結末も有り得るのかな」とギリギリ許せる感じ。笑


そして実はビートルジュース並に出ずっぱりじゃん!という大活躍ぶりを見せてくれたのが、チャールズの娘、リディアを演じたソフィア。YouTubeでみたときからかわいくて、でもインスタとかみると大人っぽさもあったりして魅力満点で、彼女みるのもとても楽しみにしてた。

いやーしかしこの子、まだ17歳だって。意味わかんない(超ほめてる)。すごいの。歌のパワーがちゃんと最初から最後まで落ちずにいってくれるの。そういう指定なのか持ち味なのかは不明ですが、ロックな歌い回しが多いので、サントラ聴き慣れるまでは「ちょっとうるさいな」と思ったりもしたんだけど、いざ本物をみたら「これこそリディア!」でした。

リディアは母が亡くなってしまったばかりの女の子で、まず当たり前に悲しくて寂しい気持ちを持ち続けてる。加えて、母を忘れようとする父チャールズや、チャールズの恋人ですぐ「ハピネス!」とか言っちゃう脳天気系の女性デリアに、苛立ちや反抗心を持ってる。

ビートルジュース、チャールズ(彼はほんとはそんなに脳天気系の人間じゃないけど)、デリア、後述のアダムとバーバラ、つまりリディア以外のキャラクターはわりと明るい人たち。なので彼らの中で1人だけ、急に怒ったり悲しくなったり、でも最終的には「家族」を見つけて「Home」に帰るリディアも、ビートルジュースほどではないけど少しストーリーに「雑さ」を感じた要因ではある。

「それもまあアリかな」と思えたのは、ソフィアの演じるリディアが、「お母さんを忘れたくない」という気持ちにブレのない演技を見せてくれたからかなって思う。


変な人たちが多い中で、比較的平々凡々なのがアダムとバーバラのメイトランド夫妻。彼らのナンバーはふつうのミュージカルっぽくてある意味毒はないけど、「Ready Set」なんかはよく聞いてると大喜利大会のようなおもしろさがあるし、「Barbara 2.0」の力強さは素晴らしかった!

ロブ演じるアダムは、やさしくてとてもマイルドな夫。心なしか見た目も少し男らしさ少なめで、ビートルジュースにも簡単に騙されてしまうことに違和感のない感じ。ついこのあいだアダムを卒業してしまったようだったので、オリジナルキャストで見られた私はラッキー!

後任者もやさしそうな感じでアダムっぽさあるけど、ロブのほうがもともとの表情のせいか、ひょうきんな感じがあるのもよかったんだと思う。
https://www.broadway.com/buzz/196799/david-josefsberg-to-replace-rob-mcclure-in-broadways-beetlejuice/

ケリー演じるバーバラ、癖がないけど意志は何気に強い、いかにもよく居そうな女性としてとても自然でかわいらしかった。そして何より彼女のスコーンと抜けるような高音を楽しみにしてた!本物の突き抜ける高音、最高でございました。

バーバラの高音が最高なので「Barbara 2.0」はたしかに「Barbara 2.0」って感じなんだけど、「私たち夫婦はレベルアップしていかなきゃ!立ち向かわなきゃ!」ということを歌っているので、個人的にはやっぱりプレビュー時のタイトル「Maitland 2.0
」がいいんじゃないの?と個人的には思う。夫妻の苗字はメイトランドなので。


アダム(さっきまでの劇中のアダムじゃなくて俳優アダム・ダンハイサーのこと)演じるリディアの父・チャールズは、堅物にみえて実はプレイボーイ、という感じのキャラクターだった。マイルドなロブとは反対に、ヒゲのせいか黙って立ってるとちょっとこわめに見えるのがギャップで良かった。

チャールズはそこまで歌で参加してこないのだけど、その堅物っぽさ・妻の死を「なかったことにする」方向で乗り越えようとする人間らしさ・そしてリディアと向き合いデリアも加えて乗り越えていく家族らしさ…どの演技も破綻がなかった。ベースがコメディなのでそちらに押されてしまいそうなものだけど、彼のチャールズにはちゃんと物語がありました。

レズリーのデリアは、実はYouTubeやサントラでの予習の段階では「なんだこいつ頭おかしいな」という程度だったのだけど、実際そうでした(ほめてる)。いつも「私の先生のオーソがこう言うんだけどね」と繰り広げる名言が毎回見事に迷言で、さらにデリア本人も不思議系ハピネスちゃんだから、もうずっとおかしい。

正直チャールズはデリアの何が良かったのかはわからないけど、彼女やさしいのはたぶんほんとだし、誰に対しても意地悪な気持ちを持たないんだよね。たぶんそういうとこなのかな。そしてデリア、めちゃセクシーだし。

そう、よくわからなかったゆえにノーマークだったレズリーは、歌もダンスもおそらく劇中誰よりもインパクトがあり、個人的にはそのギャップで影のMVPと思ったくらい。デリアの「No Reason」は不思議系でありながらパワフルに歌い上げ、Act.2ではMiss Argentinaとしてラテン訛りの歌唱と大胆なダンスを披露。思い出しても「What I Know」ラストの反り腰決めポーズはすごい。

あーあと、ダナのスカイ(ガールスカウトの女の子)がとってもかわいくてとってもふざけていて、それも最高でした!彼女、生年月日的に30代半ばくらいだと思うんだけど、身長が低い上に幼い声で歌って演じて、も上手。すごくハマってる。「just gonna ring the bell of this creepy looking house~(このおかしなお家の呼び鈴をならしちゃうよ~)」のところのふざけ具合が楽しい。

ソフィアがお休みのときはダナがリディアやることもあるようで、それも大変に興味ありますが、ビートルジュースたぶん何年もロングランしないだろうな。。


大変に長くなってしまいましたが、ニューヨークに行かれる方で楽しいミュージカル観たい人にはおすすめの作品。タイトルに入れたとおり、ちょっとストーリーは荒いところがあります。それでも、私はこの楽曲たちが好きだったので、「やっぱり観て良かった!」が感想です。

劇中は結構早口で喋るところやおそらくアドリブ、スラングが多いので、原作映画はぜひチェックしてから劇場へ!


Beetlejuice: Alex Brightman
Lydia: Sophia Anne Caruso
Barbara: Kerry Butler
Adam: Rob McClure
Delia: Leslie Kritzer
Charles: Adam Dannheisser
Skye(Girl Scout): Dana Steingold
Maxine Dean/Juno: Jill Abramovitz
Otho: Kelvin Moon Loh
Maxie Dean: Danny Rutigliano

ネット記事とかだとスカイがキャストリストに入ってないことが多いんだけど、私的にはマキシーやオーソやジューノより好きなので、ぶちこんでおります。笑

歌の他の表現手段もますます充実:海宝直人 CONCERT 2019 『I hope.』2019/8/10公演

久しぶりの海宝さんの生歌。相変わらずの安定感とひたむきに歌や作品に向き合う様がやっぱり素敵だったなぁ。

今回はオープニングでタップダンスをしたり、終盤で弾き語りがあったり。今まで歌にフォーカスしていたように見えたところから、歌以外の手法にも取り込んでいて、表現の追求はどこまでも。

今回3階の最後列だったし、もともとオペラグラスとかで観劇しないほうなので、ほぼ完全に聴覚情報のみの感想。セトリはSNSでメモされてる方ので答え合わせさせていただきました。


■overture
海宝さんの素晴らしさを支えてる大きな要素のひとつは、間違いなく森さんだよなと。オーバーチュアにどんな作品が織り込まれていたかこと細かには覚えていないけど、ボリュームあって聴き応えあった印象。全編通してさりげなくチェロがおいしいアレンジだったように思う。

ちなみにジーザスも含まれてて「またなの?」(ごめんなさいジーザスそんなに好きじゃなくて…)と思ったら、本編に一切出てこなかった。

■that’s entertainment
ステージ中央の謎の白いドアから登場。the band wagonらしい古き良きミュージカル(みたことないけど)って感じのどっしりした感じで歌って、途中から終盤に軽やかにタップも挟んでた曲。

私たち観客はすでに出来上がったものを見せてもらってるから、「すごく練習した」と言っていても「またまた~」なんて思ってしまうけど、練習したのはきっと本当なんだろうな。

タップダンス詳しくないのであくまで個人的な感想だけれど、タップの音はけっこう重ための音、低めの音に聞こえた。タップチップの面積が広めだったのかな。軽くて高めの音が個人的には好きなんだけど、音に精通した海宝さんのことなので、そういう音づくりなんだろうなと思った。

■君住む街で
ミュージカルの歴史をたどる形式でのコンサートですとのことで、次はマイフェアレディから。the band wagon同様にみたことがないので、あとでYouTubeでみてみて記憶を再生。

これもクラシカルというか、少しjazzyなバック音楽がおしゃれで、ノーブルな感じの海宝さんによく合ってた。たぶんこの世界観の衣装も似合うんじゃないかなぁ。

■maria
エストサイドストーリーは、去年?一昨年?シアターオーブの来日公演で、すごく感動した、個人的に思い出深い作品。ソフトで夢見心地で歌われたうっとりソングだったのだけれど、心なしかラストの小さな音での長音前後がかすれて聴こえた気が。

この後数曲、ソフトなアプローチをする中~高音において、なんとなく同じような印象。ストロングに張り上げるような音や、もっと高い音はちゃんと出てたので、音響の問題?張り上げる音は若干割れて聴こえたところもあって、声量すごいと思った。

■my favorite things
■edelwiss
サウンドオブミュージックから。my favorite thingsも、出だしがかすれてというか、ほんのちょっと音程がぴたっとはまらないような?my favorite~や、edelwissみたいな、歌い上げでもないししっとりでもないし、みたいな曲をコンサートに組み込むのって勇気が要る気がする。

edelwissは、ぽつりぽつり音を置くような歌い方をしてたのが素敵だなぁと思って、海宝さんの声そのものを味わうように聴いていた。ただ声を出しただけでも素敵な声なのに、その声でつむがれる歌なんて、やっぱりとんでもないことだ(ほめています)。

■send in the clowns
リトルナイトミュージックという作品から。みたことないけれど、日本でもちょこちょこやっているらしい。これが「愛の賛歌」を歌うようなアプローチで、とっても好きだった。海宝さんの歌う「愛の賛歌」、大好きなので。

初めて聴いた曲だからかもうどんなふうに歌ってたかほとんど記憶できてないんだけど、とにかく女性の少し呆然としたような感じというか、歌い込むというよりはため息の延長が歌になっているような。

あと曲そのものもたぶん私の好きなタイプで、森さんのピアノがまたふとそこにいる感じが心地良かった。冒頭でオーボエクラリネットのソロが少しあったのはこの曲だったかな?それもやわらかで寄り添うような音で、好きだった。

■街灯の下で
me & my girlという作品から。これは「(彼女は)ワンダフルでマーベラスでビューティフルで」っていう日本語訳の音の並べ方が可愛らしい歌詞でとっても印象的。のらりくらり、ゆらりゆるり、好きな娘のことを歌う感じ。

メロメロになりながら流れるように歌う様に、本編ではベタボレなんだろうなという想像が簡単にできる。本役やったらもとてもハマりそうな、そんな声の裏返し&音の運びでした。

■the music of the night
歌の抑揚もたっぷりで、特に低音域の美声を堪能という感じ。個人的にファントムは若干気持ち悪い粘着質な感じがあったほうが説得力ある気がするので、それを考えるとけっこう爽やかなようにも思った。ただのイケメンファントム(と個人的に思っている&ほめている)ベンフォスターの歌唱にイメージ近いかも。

最後の弱音でのロングトーンが、やや早めに聴こえなくなってしまったのが少し残念だった。オケがかき消したというほどの音量ではなかったし、数曲手前で感じた声のかすれもあったように思ったので、マイクの問題?

■対決
ゲストの吉原光夫さんがいらして、楽しいお話をいろいろと。「トークゲスト」とアナウンスされてたけど、レミゼから一部歌ってくれた。吉原さんがジャベール、海宝さんがバルジャン。

レミゼに限らずミュージカルの重唱って、ものによってはどの人物の歌詞も拾えないやつがあるんだけど、対決はまさにそれ。私の耳では、吉原さんの歌詞も海宝さんの歌詞もろくにキャッチできず無念。お二人ともエエ声っぽいなということしかわからず。

■ありのままの私
ラ・カージュ・オ・フォールから。そんなに没入して歌ってる感じはしなかったんだけど、思い出してみるといい塩梅で歌のメッセージが声にのっていたような気がした。

周りからどう見られようと、私は私!というメッセージは、海宝さん自身からそういう類の主張を感じたことはないけど、この曲によって歌で伝えてくれると、なんだか説得力があった。

■someone to watch over me
ここから二部。これはなにかのCMかなんかで使われているような?とにかく聴いたことがあった。今回、少しjazzyな曲が数曲セトリに入っていたけど、とっても合ってると思った。ブルーノートとかモーションブルーでジャズライブやってたら行きたい。

■愛せぬならば
劇団四季では野獣はけっこうベテランさんが演じられるようだけど、王子って青年なんだし海宝さんがやっても全然いいと思う。野獣のお面や衣装じゃないけど、野獣のビジュアルの中で苦悩する様のように見えてくるし、かなりはまっていると思う。

ラストの「滅ぼせよこの身を」のロングトーンは、少しの不安もなくストロングに音が飛んできて素晴らしかった。なんなら強すぎてビリビリとした音もちょっと混ざってしまってはいたけど。あの強さで音を前に飛ばすなんて、イディナを思い出すほどの音圧だった。

■自慢の息子
CD音源ほど子音(mとかbとか)が強くなくてよかった。本編で海宝さんがアラジンを演じてるのをみたことがないのでなんとも…だけど、品行方正な彼がまさか落ちこぼれボーイだなんて、コンサートでみている限りはどうしても信じられない。笑

■feed the birds
女性の歌をとても美しく歌うなぁと思うし、ブロードウェイ作品も良いけれど、持って生まれた雰囲気とかも加味すると、海宝さんはウエストエンド寄りな気がする。穏やかに諭すような「tuppence(2ペンスのことなの初めて知った)」の繰り返しとその声で、ロンドンのセントポール大聖堂の前の階段に佇んでる様が浮かんだ気がした。

■自由を求めて
これをやることは事前にアナウンスされていたのでとても楽しみにしてた。大好きで大好きで、私の中で一生殿堂入りのwicked。圧巻の歌声だったとは思うのだけど、wicked好きすぎて「ここはこう歌ってほしい」「ここはこういう音の長さにしてほしい」という好みがありすぎて、ちょっとそれとは違った(苦笑)。

というか、意外と細かな部分で譜面と違う音の運びで歌われた印象だったので、私は案外「譜面どおりに歌われる、(天才のではなくて)秀才のDefying Gravity」が好きらしい。ラストのシャウト?ロングトーン?も、音源どおりが好きだから、たぶんそう。

■vienna
smashというドラマの曲らしい。弾き語りを披露。これとても良かった!個人的に、海宝さんの英語歌唱曲は滑舌が良すぎるように感じることがあって。だからむしろ、ピアノ弾きながら少し流し気味で歌ってくれるくらいがすごく耳触り良かった。特に出だしの、柔らかく語り出すようなところ。また聴きたい。

■my Petersburg
これもとてもいい!歌の高揚感がしっかりあって、とにかくラストのロングトーンの音の当たり方、音質、これだけで「あぁなんかもうオールオッケー!」という感じでとても合っていると思った。アナスタシアのディミトリ、絶対観たい。楽しみ。

■stars
アンコール。以前バルジャンのbring him homeを聴いたとき、とても美しい曲を美しく歌っていた印象で、ただ、なんかバルジャンにはそれなりに老いていてほしかったのでそこだけが少しアンマッチな気がしてた。それでいうとジャベールにしてはまだ若い。

のだけど、なんかbring him homeはもう少し歳とってからやってほしいと思ったのに、starsはもうやってほしいと思った。意志の強さ、少しだけ混ざる戸惑い、それでも自分の芯の信念を持ち直すロングトーン、どれももう持っているような。まあ、実際はやっぱりまだしばらく先なんだろうけども。


オーチャードホールの3階最後列、顔が見えなくても良ければ、音はそのへんのS席より良かった気がする。2階席に何度か座ったけど、2階センターとかだと、意外と音が素通りしていくというか、手を伸ばすとそこに音がありそうなんだけど、自分のほうに来ずに上に吸い込まれてしまうような感じ。

ほんの一部だけど、声がかすれたり割れたりして聴こえたのが、やっぱりちょっと残念だったかな。あと森さんのピアノ大好きで、今回も楽しませてもらったんだけど、ちょっと音の粒の輪郭がぼんやりな感じで、これも会場や音響によるのかな。

ミュージカルの歴史をたどる、みたいなテーマで、歌い終わった後はすぐに流暢な説明が入っていたから、ちょっと余韻がほしかったかも。あとは前半の曲なんかは「没入」というのとは少し毛色の違う曲だったせいか、比較的ライトな印象のコンサートだった。

作品でまたお目にかかるのが楽しみです。あと、いつかジャズライブもやってみてもらえたら嬉しいなぁ。

「いい声」「歌うまい」をとっくに超えて:I wish. I want. ~NAOTO KAIHO sings Disney

「いい声」「歌うまい」なんて褒め言葉が陳腐に感じてしまうほど、どこまでもどこまでも歌の奥を目指す様が見えるような気がしました。


A Whole New World (from "I wish. I want. -Naoto Kaiho sings Disney")

というわけで、「やっと」というか、もはや「いまさら」だけど…。じっくり音源を聴くことができたので感想を。最近ライブもコンサートもミュージカルも行けていないので、音に集中するかつ文字に表すこと自体がわりと久しぶり。

全体的な印象でいうと、「声の裏返し」といったらいいのかな、ファンの方々は好きらしいそういう声は、全体的に随所に入っていたと思う。私はその「裏返し」が特別好きでもないので、半分くらい減らしてもらってもいいかなと思ったくらい。

声以外にオケにも触れると、オケはオケらしい音というか、破綻無く進行して耳当たりやさしくまろやか。そのぶん輪郭はどうしてもはっきりくっきりするわけではない。ので、個人的に打楽器や金管のシャープさもある程度ほしいアラジンのアップテンポ系ナンバーやヘラクレスなんかは、少し物足りないといえば物足りない。

でも全体を聴き終わってみると、たぶん1曲1曲に最適化した歌声・オケもしくはバンド演奏にしてしまうと、アルバム1枚を1つの作品として通して聴くときに調和が崩れるんだろうなぁとも思えた。作品ごとのいろいろなテンションを紡ぎ合わせながらつくったから、こうできあがったのだろうなと。だから、まとまり感はばっちり。

あとは曲ごとに。タイトルはユニバーサルのサイトからコピペさせていただいたため、「*」がついているのはオケ編成、「☆」がついてるのは日本語歌唱です。

■01. Aladdin Medley *☆
  -Overture
  -One Jump Ahead
  -Proud of Your Boy
  - A Million Miles Away
  -Somebody’s Got Your Back
  -A Whole New World
  -Act One Finale

Overtureについては、オケの長所短所が私には顕著に感じられて、音数が豪華なのはいいけど、打楽器系の音がもっとがっつり聴こえたらとっても好み。One Jump Aheadの歌い方、チャラさ増し気味のアラジン?芝居強めの歌に聴こえるパターンと芝居控えめの歌に聴こえるパターンとあるけど、後者に感じた。この曲については前者パターンが好きだな。

続くProud of Your Boy、「馬鹿にされても」の子音の「B」が強烈なのが印象的。A Million Miles Awayのサビへ向けての高揚感がとてもよくわかって、こちらまでわくわくする。原曲の音階が秀逸だというのはもちろんだけど、やっぱり歌う人でわくわく度合いも違う。一瞬デュエットで出てくる咲妃さんの声の可愛らしいこと…!さらに興奮。

Somebody’s Got Your Backはおちゃめな感じが出ていて楽しい。まあできれば複数人で歌ってくれたらもっと楽しい。A Whole New Worldは咲妃さん歌ってくれないの!?と思ったけど、09のほうでデュエットなのね。そしてシメのProud of Your Boyでもやはり子音というか、「息子に」の「m」を強烈に発音して聴こえた。


■02. If I Can't Love Her(Beauty and the Beast)*☆

この曲は個人的にさほど聴きこんでいないのと、もともとバックに鋭い音が鳴ってほしいというよりも荘厳な音の重なりが合うなぁと感じて、オケ編成がすごくしっくりきた。そしてとてもドラマティックで素敵な曲だなと。美女と野獣を一度も生で観たことがないので、観てみたくなった。

ライブでも海宝さんが歌うこの曲は好きだなと思っていて、少し落ち着いた年齢の青年が、震えるくらいの胸中の想いをひたひたと吐露している情景がうかぶ。ラストの「滅ぼせよこの身を」は、歌よりもオケが盛大にあおって聴こえた。あぁ美女と野獣観てみたい。


■03. Colors of the Wind(Pocahontas)☆

ライブでも聴いたことがあるしそのときから思っていたけれど、女性らしい表現がどうしてこんなに巧みなのだろう。長い髪を揺らしていそう、とか、しなやかな所作で歌っていそう、とか、そういう連想ができそうなくらい、とても魅力的。音の高さとかいろいろいじったら、きっと本当に女性の声に聴こえるだろうと思う。このアルバムの中でもしかしたら一番好きな曲かもしれない。


■04. Go the Distance(Hercules)*

これもライブで何回か聴いていて、今回音源も聴いて、その度に同じ感想をもつのが、「どうしてサビの高音がちゃんと当たって聴こえないんだろう?」です。しばらく考えて思ったのが、I'll be there someday...でいうと、「there」の中で音階をカチッと上げずになだらかにしてるからかなあ、と。

そもそも実際は音域的にも限界ではないしちゃんと音当ててるんだけど、私の耳だとなだらかな部分を拾ってしまって「当たってない」と感じてるのかも。ラスサビのあたりで出てくるさらなる高音はちゃんとカチッと上げているのか気持ちいいくらい当たっている感じがする。盛り上がりもとてもよくて、オケ編成で豊かな音の構成になっているのが嬉しい。

あとこれはこの曲に限った感想ではなくて英語歌唱の歌に比較的あてはまる個人的感想ですが、発音がとっても丁寧。きっとご本人の話される英語はもっと軽やかなんじゃないかな勝手に想像しているのだけど、そういう軽やかな歌い方をしているのも聴いてみたい。


■05. So Close(Enchanted)*☆

前からライブで聴くたびに思っていたのだけど、この曲は男性女性どちらの側から歌っているとかあるのかな?歌い出しはとても女性っぽさを感じる歌声で、それがたまらなく好みです。1番サビ中盤から男性に寄って気がするけど、つぶやくように歌うところはまた女性に戻ってくる気もする。

ラスサビではドラスティックなまでの緩急のつけ方で、しかしそれを不整合なくつないでるのがすごい。「あなたのいない~」での聴くのもやっとな失意の声から「もうあと少しで~」の「う」と「あ」の間の声のかすれというか裏返りに現れる泣きそうなほど切実な感じ、そして最後の「美しい夢~」以降のやさしいビブラートでは「きっと涙したのだろうな」と瞼の裏で勝手に描いてしまうほど。

この曲はオケのアレンジがいろいろなところに細やかに入っていて素敵。特に間奏で細かく鮮やかに華やかに彩るような音がするのは、フルート?何羽もの白い鳥が弧を描きながら、空に高く高く舞っていく絵が見える気がする。この曲はかなり、情景が浮かぶ。


■06. Santa Fe(Newsies)*

英語歌唱の曲なので、やっぱり丁寧な感じ。軽やかバージョンがあれば聴いてみたい。ラストのほうはもうずっと泣いて訴えているような声で歌っていて、ラストのロングトーンは苦しくてどうしようもなくて抑えきれない心の叫びという感じで、聴いているこちらもしんどい気持ちになるほど。


■07. Something to Believe In(Newsies)* duet w/ Miyu Sakihi

咲妃さんの声、好きだなぁ。爽やかな風にのせてマイナスイオン届けてくれるような裏声もいいし、地声と裏声の間も本当に耳心地よい。少し台詞っぽく歌うところは、歌というよりはもう台詞という感じで、可愛らしい声。07のこの曲と09のホールニューワールドとを比べると、こちらの曲のほうが可愛らしい声、09のほうが少し大人びた声に聴こえる。

海宝さんの歌い出しもとってもやさしくて癒される。ぽつりぽつりとつぶやくような1番に比べて、2番では流れるように歌う進行に変わるせいか、海宝さんの「That's OK」より咲妃さんの「That's all right」のほうが説得力を感じるというかなんというか。感覚的に「うん、大丈夫」という納得感があったかな?

最後は2人のハモりになっていたのだけど、どうしてだろう、2人ともノイジーな声を出しているわけではないと思うのに、ロングトーンの耳触りに違和感があった。咲妃さんがハモりボイスになっていることは間違いなかったので海宝さんの地声がガサガサしてるのかとも思ったけど、もちろんそんなわけないし。もしかしたら咲妃さんパートも地声でがちっと同じ強さで声を出しにいったほうがきれいに聴こえる、とかいうこともあるのかな?というか自分の耳がおかしい??


■08. Proud of Your Boy(Aladdin)*

英語歌の中では比較的軽やかに語るように歌われていて、聴きやすいなぁと思った。01のメドレーよりもけっこう「若い」アラジンに聴こえて、なんだかその少年に戻ったような語り声がとても素敵だった。「Mom...」のつぶやきとか。


■09. A Whole New World(Aladdin)*☆ duet w/ Miyu Sakihi

海宝さんの感想メインのはずが、咲妃さんが登場するトラックは「咲妃さんの声すてきーすきー」が先行してしまう(笑)。07.で書いたように、こちらはほんのり大人な女性に寄せて歌ってらっしゃる…ように個人的には思う。「心が躍る」を、「おどーる」と歌っていて、実感込めて音を置いて歌っているところもとても好き。

海宝さんのハモりのアレンジ(アレンジじゃなくて譜面どおりかもしれないけど)もかなり好みで、「夢のような」とか「いつまでもふたりで」に出てくる、半音だけの細やかな装飾音譜がたまらなく好き。海宝さんの声もやわらかいし咲妃さんの声もやわらかいし、とてもとてもマッチしていて聴いていて癒される!


■10. Out There(The Hunchback of Notre Dame)*☆

ノートルダムの鐘のサントラ版が絶望から始まるとしたら、こちらは諦めから始まる感じ。全体的にはきっとサントラ版よりも心の余裕をもたせているのだろうけど、ところどころの語気が強くなるのを聴く度に、2017年年始に海宝さんカジモドで観たときのヒリヒリするような感覚がよぎる。

もうどんな声で歌っていたか、どんな表情だったか、具体的に書き表せるほど記憶留めていないけど、そのときの観劇体験が衝撃的だったことだけはずっと残っている。

■11. Someday(The Hunchback of Notre Dame)☆

適切に表現できているかよくわからないけど、慈愛を感じる歌というの?そんな感じ。本編では死に向かうエスメラルダが歌うけど、このトラックは死んだあとのエスメラルダが歌ってるような気がした。たとえるなら海外レミゼ絶唱系ファンティーヌが生前のエスメラルダで、日本レミゼの儚くてか弱いファンティーヌが死後のエスメラルダ(伝わらないかな)。

ちなみに海宝さんのは、死後のエスメラルダの穏やかな祈りといった歌唱でありつつ、すぐには叶いそうもない諦念のようなものもまじっているような気が勝手にしている。


■12. How Does a Moment Last Forever?(Beauty and the Beast

セリーヌ好きなので、この曲を歌ってくれて、しかも収録してくれて、嬉しい。これ以前のトラックでも女性の歌がとても魅力的だと書いていて、この曲も多分に漏れずそうで、その中でも落ち着いたマダムをイメージするような歌。これも英語なので、もう少し軽やかだともっと好みかも。

最後のほうに出てくる「Minutes turn to hours, days to years and gone」が、歌詞の意味も相まって、個人的に最たるグッとくるポイントだった。turnの裏返りからのhoursの揺り戻し、少しずつ花が朽ちるようなdays to years and gone…たまりません。

この曲で終わることで、私からすると「少し切なくてなんともいえない気持ちで幕が下りるアルバム」という感じなのだけど、「ちょーハッピー!」だけで終わらないところがある意味海宝さんっぽいかも、なんて勝手に思っています。


アルバムの感想ここまで。書き始めるとつい冗長になってしまうな…。


最後に海宝さんの生歌を聴いたのはたぶんイヴサンローランが最後で、あの作品1回しか観てないうえに曲が難しくて歌声をあまり堪能する余裕がなかったから、久しぶりに生歌聴いたらきっと感動しきりだろうな。夏のコンサートはできれば行けたらと思っているので、楽しみ。

タイトルロールはシャルロットだったかも:ウェルテル@新国立劇場オペラパレス 3/21

どうしても音源あるものよりライブなものを先に書くことになってしまう今日この頃…忙しいのもおさまらなくて。

さて、年に1回もしくは2回くらいのスパンで行きたくなるオペラ。気が向いてふっと行くタイプなのでもちろん今回も初見です。そんな「ウェルテル」。


新国立劇場オペラ「ウェルテル」 Werther, NNTT


【キャスト】
ウェルテル:サイミール・ピルグ
シャルロット:藤村実穂子
アルベール:黒田 博
ソフィー:幸田浩子
大法官:伊藤貴之
シュミット:糸賀修平
ジョアン:駒田敏章

合唱指揮:三澤洋史
合唱:新国立劇場合唱団
児童合唱:多摩ファミリーシンガーズ
管弦楽:東京交響楽団

【スタッフ】
指揮:ポール・ダニエル
演出:ニコラ・ジョエル
美術:エマニュエル・ファーヴル
衣裳:カティア・デュフロ
照明:ヴィニチオ・ケリ
再演演出:菊池裕美子
舞台監督:大仁田雅彦


「若きウェルテルの悩み」をもとにしたマスネの作品。オペラや文学に明るくない私でもついていける、シンプルでストレートなお話に見えた。あらすじはこちらに。
https://www.nntt.jac.go.jp/opera/werther/

オペラって時に登場人物たちの感情や行動に全然ついていけないことがあって、それってとても古風な思考・発想・それから宗教観によるものなのかなぁと思ってた。だから今回ウェルテルにもシャルロットにも感情移入しやすくて、現代劇を観てるような気分に。

ハコは新国立劇場オペラパレス。お値打ちな3階バルコニー席はけっこうステージから遠く高いため、今回はいつも以上に視覚情報少なめ、音と声にフォーカスして感想を。

まずオケ。弦の人数が潤沢だったのか、そもそも奏者たちが息ぴったりだったのか、それとも音響なのか?弦の一本一本の音は聴こえるタイプではなくて、複数人の弦の音が融合していて弓の行き来もなめらかな、まとまった音だった。わざと悪い言い方をするなら、エレクトーンでバイオリン弾くときみたいな感じ。

ピッチが~とかいう話ではないのでこれはもう単純な好みなのだけど、個人的には弦の音の粒が多少耳で拾えるほうが好きなので、その部分でいうと去年「ローエングリン」に行った上野の東京文化会館のほうが好きな音かもしれない。

そしてタイトルロール、ウェルテル。今回この役をピルグさんが演じること、シャルロットを藤村さんが演じること、この二つが目玉だったよう。実際、YouTubeでウェルテルの歌のシーン(演者はピルグさんではない)見て「行ってみよう」と思ったので、楽しみにしていた。

どちらかというと内向的な人物描写をされてるウェルテルにふさわしく、鋭さや迫力を押し出すというよりもまろやかでマイルドな美声だった。癒やしを感じる声。ウェルテル登場前に男性3人が歌うのだけど、ウェルテルが歌い出したらやっぱり頭抜けて素敵な声~という印象。

時々なぜか音量が沈むところがあったり、若干ロングトーンが物足りない感じがしたりは多少あり。ラの音(って書くとださいけど他になんて書いたらいいのかわからない…)でのクレッシェンドは得意みたいで、音の最後のクォーターでブァッと広がる。楽曲の音域のせいか人物設定のせいか、憂いのある感じも声や佇まいに感じられハマってた。

しかし、その後のシャルロットの登場で正直ウェルテルが少しかすんだ。それくらい、シャルロットがすごく素晴らしい歌で…!しっかり声が飛んでくるのに、鋭角なところは全然ないからうるさくないし聴きやすい。そしてなによりとても品のある、美しい声。

美しい声というと、わたしの中ではアリエルやムーランやジェーンの声をされてた、すずきまゆみさんが筆頭なのだけど。それをオペラ仕様に変換して落ち着きと品性をさらに増し増しにしたイメージ(伝わらないかと思いますが)。

藤村さん、海外の名だたる劇場で主役をいくつもやってこられた方のようで、経歴観てたらもはや海外からの逆輸入という感じ。シャルロットはソフィーのお姉さんなわけだけど、藤村さんの実年齢もあるのかかなり控えめで落ち着いていて、引きで見ていると年の離れた姉妹か母娘という印象。

第三幕でウェルテルからの手紙を読むシーンがあり、シャルロットのかなりの見せ場なのだけど、ここが私個人としても会場としても一番盛り上がっていたと思う。「素晴らしいパフォーマンスみてるー!」という意味で。あまりにも完璧そうなのに1,2箇所少し音が「?」となったところがあったのが意外なくらいだった。

タイトルにも書いたように藤村さんの素晴らしさがピルグさんより目立って感じられたので、人によっては「バランスが悪い」と思ったかも。でも個人的には藤村さんクオリティがとても良いと思ったし、そこに合わせるように全体が引き上げられていくのだとしたらそれはそれでOKではないかなと考えた。ピルグさんの内向的で憂いのあるウェルテルも好印象だったし。

さて、シャルロットの妹、ソフィー。席的にかなり引きで見ているのでお顔や衣装はあまりよく見えなかったけど、登場前から揺れるポニーテールがずるいと思った。もうそれだけで可愛い妹の雰囲気ばっちり笑。オペラって今まであまり演技を前に出した演出に出会ってなかったせいか、今回はどの人物も演技がしっかりあって見やすかった。

ソフィーを演じた幸田さん、すでに書いたように天真爛漫さがあって明るい妹としてよく描かれていた。ただ、ちょっとビブラートが大きくて多めだからか、シンプルにストレート寄りなメゾソプラノのシャルロットに比べると聴きづらい声に聴こえたかな?せっかくちゃんと声出てそうなのに、音が飛んできてない気がした。でもこれ、ソプラノの人に思うこと多い感想だから、もしかしてソプラノ歌唱をわたしがちゃんと聴けてないだけかもしれない。

あとはシャルロットの夫、アルベールは黒田さん。この日の男性陣ではダントツに好きな声だった。音域のせいかすごい「いい男」感がして!ダンディ、と表現しようと思ったけど、声のかすれたざらつきはないんだよな。でも重量はある感じ。ウェルテルとシャルロットのやりとりを知ったときの激昂も、いい意味でとっても怒りを感じる迫力だった。

他にも登場人物いたのだけど、メイン4人はこんな感じ。この4人のいずれも、「歌う」だけでなくて「演技」や「歌を通しての演技」をしていた気がする。これまで見たことあるオペラって「ストーリー付きの歌」のほうがイメージが近くて、鑑賞後はコンサート感覚だった。それが今回、オペラで初めて感情移入ができたし、鑑賞後の感覚は「ミュージカル」に近かった。どちらが良い悪いとかではなくて、新しい感覚を覚えることができたのが楽しかった!

書くのが最後になってしまったけど、あと2公演あります。3/24と3/26。特に藤村さんの声は素晴らしいと思うし、どちらかというと海外のご活躍が多そうで次いつ日本で歌われるかわからないから、少しでも気になる方はぜひに。藤村さんのコンサートなんかがこの先あったら、私も行ってみたいなぁって思っています。それくらい大収穫な「ウェルテル」でした。