Impressive Sounds

素敵な歌声や音楽を求めて。

ファンタジーの演出に目を奪われた:FINDING NEVERLAND来日公演 9/13マチネ

全然知らないのでスルーするつもりだったシリーズ(大半の作品でそう言ってるけど)。
SNSで絶賛の嵐しか見えないので、あとクレカの優待があったので、そして夜はケルティックウーマンのコンサートで渋谷に行く予定がもともとあったので、お昼はこちらに行くことに。

YouTubeで来日公演で主演をつとめるビリータイの動画をみたのも後押しになったかな。
高音がきれいそうな歌声してるなと思ったから。


ブロードウェイミュージカル『ファインディング・ネバーランド』主演ビリー・タイ生披露!

ちなみに、シアターオーブはでかすぎて席選びにいつも迷うので軽く座席について。
今回は20列下手ブロック。
このうしろの列くらいから2階かぶりはじめるけど、2階みたいに音が頭上を通りすぎていくこともなく、段差も大きくて視界良好。
もう2階は音のこもりが気になってしょうがないから1階って決めてる、3階は座ったことないけど来月ウィレマイン来日でとってみたので検証予定。

前にウエストサイドストーリーみたときは15列の端のほうで、今回のほうがセンター寄りだったんだけど、センターであればあるほど舞台中央を見てるとだと逆に両サイドの字幕が視野に入らない罠に気づいた。
バランスって難しい。
なのでいつもどおり基本音メインで字幕は時々追うようにした。

声について書くことをモットーにしてるんだけど、先に演出について。

※いつもどおり、がっつりネタバレあります。

タイトルにも入れたけど、歌よりも音楽よりもダンスよりも、一番演出に比重が置かれてる作品に見えた。
All That MattersとかNeverlandの星空はプラネタリウムかそれ以上に幻想的だし、ロンドンの空や大海原も背景映像で大いに表現しているし、かと思えば子供を人力でもちあげて飛んでいるように見せるところなんかは引き算的なアナログな見せ方で面白かった。

シルヴィアが病で助からないとわかるシーンのバックでAll That Mattersが流れる意味。
一幕でシルヴィアはその曲を歌ったわけだけど、そのときはなぜ「今をどういきるかが大事なの」と歌ったのかがいまいちわかっていなかった。
母と「体を大事にしなさい」というやり取りのあとにAll That Mattersを歌ったのが、「だからか(自分の死がわかっているからこそ子どもたちといられる今が大事なのか)」と二幕でわかったとき、同じタイミングで同じメロディーが聴こえて、彼女の想いがわかったような気がして切なかった。

舞台ピーターパンの初日後、ファンタジーの登場人物に扮した劇団をシルヴィアのところへ連れていったシーンはとても素敵だった。
ウェンディとピーターパンに魔法の粉かけられたシルヴィアが、キラキラとした風を受けるシーンは本当にきれいだった(ポスターに使われてるシーン)。

その場ではなぜピーターパンがシルヴィアを連れて窓の外に行ったのかわからなかったけど、ネバーランドに連れていった(亡くなった)のだと、終演後に飲み込んだ。
魔法の粉のキラキラと風の中を舞うシルヴィアのスカーフがきれいで、でもなんだかものさみしい感じがしたのもそれでだったのかと、やはり同じタイミングに合点がいった。

最後、子供たちとジェームズと祖母が手を取り合う未来が示唆され、Believeを歌うのが祖母なのが感慨深い。
彼女は厳格に振る舞ってものを言っていたけど、いつだって娘と孫たちを見守っていた。
娘がいなくなったときにこどもたちに夢と希望を与えてくれるジェームズがいたことは、彼女にとっても救いだったろうと思う。

彼女がBelieveを歌うのは、美女と野獣でミセスポットがBeauty and the Beastを歌うのと相通ずるところがあると思った。
物語の中心ではなかったけど、見守って包み込んでいたやさしさを感じるBelieveだった。

感動したところをドサドサと書いたけど、ストーリーがところどころスッと入ってこなかったのは、空想とリアルの行き来に腑に落ちないところもあったからかな。
大人に寄せてるのか子どもに寄せてるのか微妙な感じがして、基本大人寄せだけど、壁にぶつかったときの解決(最たるはStronger)はファンタジー寄りに見えて。
私が"grew up"し過ぎたのかも、そんなことも思いました。

では本題、声について。
まず4人の息子の母であり、JMバリのインスピレーションのきっかけになった、シルヴィア役のクリスティンドワイヤー。
ブロードウェイでWickedのエルフィーやってた動画はどれを見てもスパーンとしてなくて全然ピンとこない声だったんだけど、今日生で聴いたらいい声!
裏声からしてとてもきれいだし、まっすぐストレート系の声。
彼女のAll That Mattersが文句なしに本日No.1ナンバー。私の中で。

憶測にすぎないけど、エルフィーやるには声量と高音の安定感がいまひとつだったのかも。
シルヴィアみたいな、押し出すだけが全てじゃない、無邪気でありながら母でもあるっていうポジションの女性としてはとても適任な歌声だったと思った。
彼女のAll That Mattersまた聴きたい(もう行く予定ないけど)。


ミュージカル『ファインディング・ネバーランド』より「All That Matters」(日本語字幕付き)

次、ピーターパンの生みの親であり主人公JMバリを演じたビリータイ。
やっぱり思ったとおり高音がストレスなく聴けるいい声だったんだけど、なぜかバックの音量が上がるとそれに負けてしまう声だった。
座ってた席位置と音響の可能性もあるかもだけど、他の人はそうでもなかったんだよな。
Strongerなんか、歌うまいんだけど、お腹にくるような振動を感じるほどのドラムが鳴ってたりするので、圧するのは彼の声じゃなくてドラムの振動だったりして。

シルヴィアとのNeverlandやWhat You Mean to Me、ピーターとのWhen Your Feet Don't Touch the Groundなんかは、彼のやわらかく薄いベールみたいな声の良さがとても出てた。
そしてビリーは、というかJMバリ役は、かなり体力を要求される感じ。
逆さにされながら歌ったり、片足だちで上げてる足を地面と水平並みにキープしながら歌ったり、ベンチから落ちないように海賊に襲われたり。
そんないろいろをやってのけながらも、ビリーはなんだか余裕がありそうだったのですごかったなぁ。

あと、子どもたちの祖母でありシルヴィアの母であり慈善家のデュモーリエ夫人のカレンマーフィー。
最初は棒読みか?と思うような高圧的な一本調子の歌と芝居なのかと思ったけど、それが娘を思うゆえのものだったと納得させるにふさわしい貫き方。
彼女が歌うと、すごく場が締まる。
ベテランが出てきて大団円をまとめるような見え方がしっくりくる。

ほか、出番わかりづらかったけど、JMバリの妻であるメリー夫人のクリスティンリースも良かった。
声が特徴的で、その時代にいかにもいそうな、周りの評判が気になるプライド高い女性感を出してたと思う。
この方、PIPPINでキャサリン、Wickedでネッサローズもやってたこともあるみたい。
キャサリンもネッサも今回のメアリーも歌が多くないのでちょっともったいない気も。
でも声が特徴的だから、メインにはなかなか難しいのかな?

歌声的にはそんなところか。
子どもたちはみんな可愛くて、特にジョージがウクレレ持って歌うときに「美声で歌うまいな、背が高くしっかりもの感があり長男ぽさもあるな」と思ったかな。
なんと子どもたちは、ピーター、ジョージ、ジャック、マイケルをほぼみんなが代わる代わる演じるらしい、すごい。

あとは歌の韻がいいものがいくつか。
Circus of Your MindとかThe World is Upside Downあたりはすごく音のおさまりがよく、不穏さだったりファニーさだったりを表すにもうまく機能してたと思う。
ディズニーのホーンテッドマンション的な雰囲気もあったかな。
ハーモニーや音の重なりよりも個々をたたせていた印象があって、ミュージカルよりショーっぽいと思った。

ちょっとSNSの絶賛の嵐に期待値を上げすぎたので「思ったほど…?」なんてよぎったりもしたけど、やっぱり海外キャストの公演は好きだな。
声のパワーバランスの大小があったりしても、それを気にさせないレベルに歌声の素敵な人がいたり、日本ではなかなか見られない演出が見られたり。
これからも「行くつもりなかったシリーズ」はどんどん増えることでしょう。

メインキャストは以下。
J.M. Barrie(JMバリ):BILLY HARRIGAN TIGHE
Sylvia Llewelyn Davies(シルヴィア):CHRISTINE DWYER
Charles Frohman/Captain James Hook(フローマン/フック船長):JOHN DAVIDSON
Mrs. du Maurier(デュモーリエ夫人):KAREN MURPHY

Peter Llewelyn Davies(ピーター):CONNOR JAMESON CASEY
George Llewelyn Davies(ジョージ):COLIN WHEELER
Jack Llewelyn Davies(ジャック):WYATT CIRBUS
Michael Llewelyn Davies(マイケル):TYLER PATRICK HENNESSY

アンサンブルはキャストボート記載順に以下。
CHRISTINA BELINSKY
TURNER BIRTHISEL
CAITLYN CAUGHELL
SARAH MARIE CHARLES
ADRIANNE CHU
CALVIN COOPER
DWELVAN DAVID
NATHAN DUSZNY
BERGMAN FREEDMAN
VICTORIA HUSTON-ELEM
MELISSA HUNTER MCCANN
CONNOR MCRORY
THOMAS MILLER
NOAH PLOMGREN
MATTHEW QUINN
WILL RAY
KRISTINE REESE
COREY RIVES
DEE TOMASETTA
MATT WOLPE