Impressive Sounds

素敵な歌声や音楽を求めて。

なにかとリフが素晴らしい:Alyssa Fox

ほんとはGina Beckのエントリを書いてる途中だったのだけど、遅ればせながら嬉しいニュースを知ったので。


Alyssa Fox's LAST Defying Gravity on the 2NT

【Alyssa Fox、「Frozen」のエルサ(スタンバイ)役に決定!】
http://www.playbill.com/article/full-cast-announced-for-broadways-frozen

いやーめでたい!
なぜ本役じゃなくてスタンバイなんだよアメリカってそんなに逸材ばっかりなのかよ意味わかんないよと思いつつもめでたい!
だって初演だもんね!しかもアナ雪!
まずはアメリカのデンバーでこの夏トライアウト公演だそう。
いやーブロードウェイにきたらしばらくチケット取れなかろうね。

さて、興奮して言ってますけど、この方、生で観たことはない。
いつものようにWicked動画をあさってて、北米ツアーのプロモーションか何かで目にしてから気に入ってて。
タイトルにも入れたけど、リフにすごくセンスがあって、そしてそのセンスをちゃんと歌声としてアウトプットする力のある人だなと思ってる。
基本音の確認はWickedとか、私みたいな一般人が辿り着ける程度のYouTubeだけど。


Alyssa Fox - "The Wizard and I" - Wicked
たとえばThe Wizard and I。
後半盛り上げの「Feeling things I've never felt~」のところ、I'veで譜面より2コ上げて階段を下りるようにfeltで譜面の音に戻ってくる。
もともと高い音をさらに上げてしかもぱしっと当てるの、すごいし聴いてて気持ちいい。
オーストラリアカンパニーで長年エルフィーやっていたJemma Rixも似たアレンジしてて好きだった。

他にはみんな大好きDefying Gravity。
これは冒頭にYouTube貼ったやつ。
いろんな人がいろんなアレンジを加えるいっちばんさいごのAhhhhh!じゃなくてその手前。
「…is ever gonna bring me down」の後の2回目の「bring me down」の「down」のところ!
ふつうbring(A) me(E) down(E→D)だけど、彼女は違う。

うまく書けないけどbring(A) me(E) down(EFGEFEFED)って感じ、すごく細かい。
そしてGまで行っちゃう、高音を行き来するスキル。
その高音のリフに合うまっすぐで芯のある声。
やる人によっては自己アピール過多にも聴こえそうな高音×細かいリフがとてもしっくりくる。
(ドイツオランダイギリスでエルフィーやったWillemijnはAhhhh!のリフが細かいけどあれはあまり好みでない、もう聴き慣れたけど。)
素晴らしいなぁとYouTube観るたび感嘆するもので、いつか生歌を聴きたいなという思いはつのる。


“All by Myself” :: Mar 27 @middlechurch
こんなのもあった。
セリーヌディオンのカバー。
身ぶり手振りがあるせいか力もかけて歌ってるような気もするけど、やっぱりうまいことに変わりはないなぁと。
Wickedでのアレンジはどの音を行き来してるのかはっきり鍵盤を鳴らすようなものだったけど、このときのはグラデーションみたいに弦を鳴らすようなアレンジ。
2:35あたりの、高いFから戻ってくるときの軽い声の裏返りというかこすれというか、たまらなく好き。

大迫力ゴスペル系より、声の線というか芯というか、その太さが少しだけ細めの、スコーンと声を飛ばす歌がやはりタイプのようです。
日本にもこういう声の人、もっと見つけたいのだけど、どこにいるのかしら?

表情が見える、歌を極めて変化する声:海宝直人

彼については何から書いたらいいのやら。
Wicked関連以外で久しぶりに心底気に入った方なので。

貴重な稽古場公開!劇団四季ミュージカル『ノートルダムの鐘』|エンタステージ

歌が本当に好きで好きで突き詰め続けているんだろうなという感じ、それでいて人からの評価を気にする様子なく自分の追求にただ正直な感じ。
そういう、歌が素晴らしいところ、音楽や作品や人に対してフラットで誠実、ある意味まっさらでドライなところ、とても好きです。
まあ、誠実とかドライとかはこちらが勝手に思ってるだけど、そういうふうに見えて仕方ないや。

きっかけは2017/01/04。
年始休み最終日、年末から気になってたノートルダムの鐘を観ることにした。
YouTubeだと海宝さんは声高めでいいけどこのハイトーンは生でも出るのかしら(疑ってすみませんでした)、飯田さんはハイトーン出なさそうだけど太めのゆったりした声なのかしら(こちらは概ね合ってた)、といった感じで特に希望はなく。
失礼ながら劇団四季の方で歌声が気に入って何度も再生したのは谷原志音さんくらいだったので。
海宝さんが四季の方ではないのは後で知った。

マチネは飯田さん、ソワレは海宝さんか。
朝から並ぶんだし昼の飯田さんでいっか。
あ、何人か前でマチネ売り切れた、どうしよう。
でもせっかく並んだからソワレの海宝さん観るか。
一回家帰ってまた来るのめんどくさいけど。
そんなことを思いながら手にしたチケット。

劇団四季劇場・秋、だいぶ前のマンマミーア以来。
初めてのバルコニー席後ろの立ち見(かなり上からだけど音重視な私にはコスパ最高と思った)。
初めてのノートルダムの鐘。
観劇後はあまりの感動とショックでボーッとしてしまい、仕事が始まっても成人の日になってもノートルダムのことが頭から離れないほど好きになってしまった。
どうしてももう一度観たくてまた海宝さんの出演回の立ち見に並んで観たくらい。

基本的にミュージカルはとにかく歌のクオリティが高いことが私にとってマストて、演技方面についてはキャラクターに合致する喜怒哀楽を見せてもらえればくらいの感覚だった。
そんな折、「演技」に長けた人はたくさんいると思うけど、「歌声での演技」を明確に意識したのはこの人が初めてだった。

彼のカジモドは顔の歪みをきつくしているせいか、いつも悲しく今にも泣き出しそうに見えて、声色にもそれがありありと表れていた。
「醜い」という言葉を言うときは自分への憎しみと悲しみ、日ざしのなかへの最後のロングトーンは悲痛な願いを吐露する心の叫びみたいに聴こえた。
天国の光は曲をあまり把握してなくて曖昧な記憶だけど、高音をまろやかに響かせてくれて、耳触りがとても良かった。
石になろうは、ハイトーンがスコーンと当たってグッときてたまらなかった。
今あらためてサントラで聴いてみると、小さい子が泣きすぎて気持ち悪くなっちゃってそうな感じに似てる。
もういっぱいいっぱいではち切れそうで、でもそれが外に放出できずに自分の内へ内へ籠っていくような、最後の方で緊張感のあるトランペットの高音とダークな低音の落差が凄まじい音楽とのリンクに思える。

声といえば、カジモドとして発した最初の喋り声は、失礼ながらビートたけしに聴こえたし、いまサントラを聴いても似てると思う。笑
あと、声のほかに印象的だったのは、カジモドと役者の変身ぶり。
舞台中央に出てきてものの数秒でカジモドになるわけだけど、くるりと振り返るところが、ディズニーアニメでヴィランズに呪いをかけられてしまったキャラクターかのように見事な振り返り方(ターンの仕方)だった。
私には呪いをかけるヴィランズの細くて黒くてシワシワで骸骨みたいな手が見えた気がしたくらい。

今思うと「ノートルダムの鐘が好き」は間違ってないけど、「海宝さんがカジモドを演じるノートルダムの鐘がすごく好き」がより的確。
海宝さんについても「海宝さんの歌声が好き」よりも「カジモドを演じる海宝さんの歌声が好き」が最も的確。
海宝さんの歌が好きなのかノートルダムが好きなのか、それを確かめにフレンズオブディズニーやミュージカルミーツシンフォニーやレミゼに行ったりしてみた。
impressivesounds.hatenablog.com

もちろんどの曲も丁寧で情感あふれる歌で素晴らしかった一方で、ノートルダムの劇中で聴いた彼の歌がやはり一番心奪われた歌声だった。
そしてこれは私の好みという意味で、2017年年明けに観たときの声が一番好きだったので、発売されたサントラはその頃の声に近くて本当に嬉しい。
海宝さんの歌声は、カジモドを経てどの音域も声の幅が広くしっかりしたように私には聴こえて。
それは素晴らしいことだけど、個人的にはノートルダムサントラに収録されている頃の、少し高音寄りで声の揺らしも少なめの真っ直ぐ寄りな歌い方が一番好きな歌声。

インタビューとか見てると「声帯を~」とか「どこの筋肉を使って~」とか言っていて、出したい声を出すために自分の体を楽器のごとくチューニングしてるのもよくわかる。
寄りで映ってるレミゼ2015のお披露目動画とか、口や顔全体をアスリートのように動かしてるのがわかりやすい。
ノートルダムのサントラだと、先述の泣き呻くような声もそうだし、かすれさせるような声も出してる。
なんと芸が細かいことか。
時々iの音、特にkiとかを息たっぷりに歌うところはちょっと好みじゃないんだけど、それさえも言葉を無下にしない彼らしさかなと思えてくる。

好きになった歌声とは今は少し違うかなと思っているけど、また新しい歌声を聴かせてもらえるかもしれないし、これからもこの方の歌には注目したいと思う。
残念ながら、7月のバースデーライブもバンドのライブも、チケットが取れなかったけど。。

あぁ、好きなことを文字で表現するのって本当に難しい。
海宝さんの素晴らしい歌の魅力の5%くらいしか書けてない気がします。

英語の耳触りの良さは偉大:レ・ミゼラブル 6/3マチネ

国内外でミュージカル観てるけど、どちらかというと海外行ったときドサッと観るタイプで、国内のものを月1くらいで観てるのはここ数ヶ月くらい。

『Les Misérables』 5/25(木)初日カーテンコール

レミゼは映画は何度も、生はロンドンで1度だけ。
というわけで、初めての日本版レミゼかつ初めての帝国劇場。
ロビーに飲み物食べ物がたくさん売ってて、物販も何ヵ所もあって、そういうのがシアターオーブみたいな感じじゃなくて歌舞伎座の地下っぽい感じがして、レトロだなぁと思った。

間近で観るより全体観るのが好きだから、でもB席だとどれくらい遠いのか端なのかこわいから、とA席を選択。
コンビニで発券しないと座席未定方式で、発券してみたら1階最後列であるX列でさすがに落胆。
とはいえ座ってみたらそんなに悪くない。
そこまで遠くてちっちゃいとは思わなかったし、左右端になると横方向の見切れはあるんだろうけど真ん中だから大丈夫だし縦方向の見切れもないし、後ろが壁だから見やすいところに頭動かすのも遠慮要らない。

さて、中身。ダイナミック<お上品にまとまってる感 でありながらも、生オケはやっぱ良い。
たぶんオケのテンポの問題じゃなくて上演時間が決まってるせいだろうとは思うけど、矢継ぎ早に進んでいく感じはちょっと残念だった。
正直余韻に浸る暇なんてないし、なんなら話についていくのがギリギリなところもあった。
あと、英語詞で先に聴いてしまっているせいか、日本語の音の悪さとか訳詞の古風さが何度も気になってしまった。
日本語だと意味が仔細にわかる分、必要以上に伝えようとしていることを言葉として咀嚼してしまうことも「重すぎる」ストーリーに感じる要因かも。
舞台装置は、家のベランダとかいろんなものがすぐせりだしてはすぐ引っ込むので、手が込んでるなぁと。
基本的に舞台が暗くて、人の表情もよく見えなかったし、舞台装置の細かいところも見えなかったけど、たぶん細々色々あったんだろうなという気配はあった。
衣装にはもともとあまり興味がなく詳しくもないので特別感想はなし。

この日のバルジャンは吉原さん。
ハイトーンがわりと出る方みたいで、音程も適度に合わせていて聴きやすくて良かった。
背が高くてかっこいいなと。
ジャベールもやる方のようなので、衣装はそちらのほうがより長身が活かされて素敵かもと想像。
彼のせいではないけど、バルジャンが逃亡してタイトルが映し出されるまでがめっちゃ早かった。
「バルジャンもう逃げたんかいな!」と思った。
全体的に歌にクセがなく歌詞としても聴き取りやすくてありがたかったけど、遠目だったので老いていく様?はよくわからなかった。

ジャベール川口さん。
ジャベールって冷徹さを出そうとすると一本調子になりそうだし、でも自分の正義感におさまってくれないバルジャンに対する苦悩も出さなきゃだし、難しい役なんだなと。
川口さんはきっと歌はうまい方なんじゃないかなと思ったものの、歌詞が聞き取りづらくて少し話を追うのに困った。
下水道のあと、死ぬ前の心情を吐露するあたりはとてもバルジャンに対する苦悩が伝わってきた気がした。
全体的に、融通が利かなくて気難しいジャベールのキャラクターっぽさはわかった。
ジャベールの自殺は映像を駆使してて「なんかすごい」けど「(自殺だとは)なんかよくわからない」という感じだった。
ロンドンで観た演出がどうだったかは忘れたけど今回ほど疑問を覚えた記憶はないので、ここも今回わかりにくかったなと思った箇所かな。

ファンテーヌ、知念さん。
一緒に行った友人と「アイドル?タレント?ふつうにTVとか出てたよね」とキャストボード見ながら懐かしく話した。
すっかりミュージカル女優さんとして活躍されてたんだなぁ。
まず、セリフのような歌い出しですごくきれいな声で感動した!
今回一番「声」そのものにきれいさを感じてハッとしたのは彼女かも。
鈴のような声、風鈴のような、凛とした声。
でもソロナンバーではピッチが上振れて聴こえてなんかしっくりこないのはなぜだろう。
バルジャンに看取られ息絶えるところでホロリ。
娘を残していく無念さ、娘を育ててもらえると約束してくれて夢のような気持ち、どちらも伝わってきた感じ。

エポニーヌ、昆さん。
美女と野獣の吹き替えですっかり「わかる人にはわかる」人になったみたい。
私はまだ観てないけど。
思っていた以上に小柄な方で、照れ隠しにマリウスに飛びついたりするから可愛らしい女の子くらいに見える。
on my ownは安定感があったのだけど、一幕二幕通してあまり余韻に浸っている時間がないせいか、ちょっとあっさりな気もした。
遠目なので細かい表情は見えなかったけど、マリウスにコゼットへの手紙を託されるときの失望感みたいなものが、がくんと落とされた肩と消えた笑顔で表現されていたように見えて切なかった。

マリウス、海宝さん。
レミゼは音楽好きだけど、マリウスは腹が立つし話は悲しくつらいから…と迷ってたけど、この人の歌が聴きたくてチケット取った。
やっぱり歌がほんとにうまい。
生まれてきてくれたことに感謝したくなっちゃう。
もちろん歌うだけでなくて「演じて歌う」ことが上手なんだと思う。
見た目はいかにも品のある青年、キャラクター的には誠実だけど恋には少し疎い様子があって、とても魅力的。
初めてマリウスに惚れるのが腑に落ちたし、エポニーヌの気持ちに絶妙に気づいてないというのもこのマリウスなら有り得るなと思わせる人柄だった。
コゼットに出会った時点ではへっぴり腰だったりしてちょっとヘタレ感あるのがまたリアル。

コゼット、エポニーヌとの三重唱は意外と印象が薄くて、A Little Fall of RainとEmpty Chairs at Empty Tablesのほうが印象的。
血だらけだ!のあたりの嘆くように歌っているところ、「歌って」いるんだけど、エポニーヌに「喋って」いるように聴こえて、声の演技ってすごいなと。
あと海宝さんはハモリの裏声をすごくきれいに響かせてくれるので耳心地がとても良い。
ずっと革命の名のもとに戦うことが自分事として捉えられてなかったように見えて、エポニーヌが亡くなった後から動きが機敏になってヤケクソに近い感じで戦っているように見えた。
Empty Chairs at Empty Tablesの嘆きと懺悔の入り混じる歌唱は、なんか得意な部類の歌なのかなと。
ただどうしても日本語の違和感があって、「イスとテーブル」の「テーブル」をはっきり言っているのがしっくりこない。
これは海宝さんのせいではないけど。
「ディズニーランド」を「デズニーランド」と言ってるレベルでの違和感。
あと全体的にエポニーヌが「(エ)ッポニーヌ」と聴こえるのだけど、興奮したさまってことなのかな?それとももともとの歌詞かな?

コゼット、生田さん。
レミゼの衣装ってダサいと思うのに可愛かった!
コゼットって邪魔しない程度にそこそこ歌ってくれればいいので、彼女はそれを満たしてくれたしマリウスに惚れられるほどの外見の説得力もあったので良いキャスティングだなぁと。
地声で言えばどちらかというと少年声かなとも思うけれど、裏声になっていけば気にならないし。

エナルディエは駒田さんという方?
キャラクターとしては正しく演じていたんだと思うけど、いかんせんとにかく何を言ってるのか歌ってるのか聴こえなかった。。
マダムは谷口さん、声ににごりが少なくてきれいな声だなと思った。
なので、そのきれいな声でも歌い方と身のふるまいでマダムっぽい独特の雰囲気を出せることがすごいと思った。

アンジョルラス、相葉さん。
正直歌はあまり印象に残っていないけど、スタイルが良くて舞台映えする方だなという印象だった。
ただ、ロンドンで観たようにバリケードの場面で盆が回っていなかったので、彼が台車で運ばれるのが残念で残念で…。
なんだかツボをおさえられずに笑ってもらえないショートコントみたいにも見えた。
ただ一方で、台車で運ばれてるほうが、かっこよくバリケードで死ぬよりもあっけなくて虚しい感じはよく伝わるなとは思った。

そして最後にガブローシュ、島田くん。
正直今回のMVP!めちゃめちゃうまくてびっくり。
歌の音程がちゃんと当たっているし、なんて歌詞だったかとか、何の話か身振り手振りでちゃんとわかる。
キャラクターとしてそんなにふり幅大きい演技が要らないというのもあるかもしれないけど、民衆の中で強がる子どもというのがよく伝わってきた。
ちゃんと子どもらしいんだけど、将軍の死を告げるところなんかはいっちょまえに大人っぽいし、撃たれる最後は等身大の子どもの声に聴こえる。
もう少し大きくなったタイミングで、島田くんがたくさん聴ける作品とか出るようになったらぜひ観たい。

全然まとまらないし、「印象的な音について書く」とか言っておきながら音があまり記憶になくて演技の話を書いてたりするので、気が向いたら追記・修正するかも。
レミゼは曲が良いけどWickedやノートルダムのように何度も観たい!とは少なくとも私は思わないかなぁ。
冒頭にも少し触れたけど、やはり英語詞で作曲された曲は英語詞で歌われるのが一番素直に染み込みやすいなぁと思った。

【キャスト】
ジャン・バルジャン 吉原光夫
ジャベール 川口竜也
ファンテーヌ 知念 里奈
エポニーヌ 昆 夏美
マリウス 海宝 直人
コゼット 生田 絵梨花
テナルディエ 駒田 一
マダム・テナルディエ 谷口ゆうな
アンジョルラス 相葉裕樹
ガブローシュ 島田裕仁

高くてやわらかい絶妙な青年声:Matthew James Thomas

ティーブン・シュワルツの関わった作品が好き。
Wicked(詞曲)、PIPPIN(詞曲)、The Hunchback of Notre Dame(詞)、The Prince of Egypt(詞)など、
生なり映像なりで見たことがある。
その中で、ミュージカル「PIPPIN」のリバイバル版にタイトルロールでキャスティングされていたのがマシューだった。

PIPPIN (Broadway) - "Corner of the Sky" / "Magic To Do" [LIVE @ The 2013 Tony Awards]

残念ながら、PIPPINに限らず彼の生声を聴いたことはない。
PIPPIN来日公演は観たけど、彼じゃなかったから。
それでも、個人的にかなり好きな声だというのはYouTubeを巡って確信してる。
PIPPINにはダンスナンバーもたくさんあって、マシューは歌も躍りもバッチリできちゃうタイプ。
中でも私が好きな歌はやっぱりそういうのじゃなくて、歌を聴かせるのがメインのものだ。

まず貼りつけたのはCorner of the skyで、これはジャクソン5がカバーしたことでも有名らしい。
いたってふつうの青年として登場するピピンが「特別な何かを見つけるんだ!」と歌い上げる曲。
これから特別な何かを見つける(はずの)ふつうの青年なので、毒がなくスレてなさそうで、ちょっとだけなよなよしさも予感させる歌い出しが自然。

彼がすごいなぁと思うのは、後半につれどんどん豊かになっていく声の明るさと強さ、そして最後の裏声からの地声シャウト。
あの高さの音を裏声から地声にもってこれるのすごい。

他にもしっとり系だとWith Youとかかなりやさしく甘い声で歌うのでうっとり。
中音域と高音の行き来がスムース、かつ高音がリラックスして響くから耳あたりが良いんだよね。
劇中でも女性ダンサーとおどけながらなんなく歌ってるけど、あれ実はけっこう難しいんじゃないかな。
フープにつかまって、女性ダンサーを上にのせて、音の高いセンシティブなところを歌うので。
そのほか、聴かせる系だとMorning Growもいい。
最後の盛り上がりももちろんだけど、はじめのソフトな歌い出しはWith Youに通ずるものがある。

マシューのこと書いてるというか、マシューの歌うPIPPINの曲のこと書いた、って感じになっちゃった。
でも曲と声の相性ってあると思うし、プリンスオブエジプトをミュージカル化するときにはぜひ彼にタイトルロール演じてほしい。

ちなみに彼、「ブリタニア・ハイ」っていうイギリス版gleeみたいな(glee見たことないので)ドラマに出てて、その劇中歌のProudもかなり素敵。
父に対して訴えかける切ないメロディー。
一時期こればかり聴いていました。
けっこう前のドラマなので画質が見づらい感じだけど、YouTubeにいくつか転がってます。
あと余談だけど、ブリタニア・ハイはサファイア・エイリア(読み方間違ってるかも)が超可愛い。

さて、マシューは歌がすごいんだけどダンスもすごいので、それがわかるやつも置いときます。
うわーかっこいーと心の中で叫びました。

Wake Up - Britannia High Live Finale (HQ)

何度も出てくる「わからない」:ミュージカル パレード 5/21マチネ

YouTubeで最初観たときは難しい曲に日本語がうまくのってない気がしたし、
高い声で歌いそうなのは堀内さんしかいなさそうだったので、パスのつもりでいた。
でも初日にあがってきた感想やらレポやらを読んでなんだか行くべきな気がしてきて結局速攻行っちゃった。

ミュージカル『パレード』舞台映像

堀内さんの声、やわらかでふわり飛んでいきそうな高音が特に素敵。
地声との切り替えが意外とわかりやすいことに驚いたけど、低音もしっかり出ることにさらに驚き。
あと、裁判で証言する少女の一人であるアイオラを演じていた方もきれいな高音。
吉田萌美さんという方かも。気になる。
あと岡本健一さん、誠実さや妻への愛を感じるジェントルな声で素敵。
歌に不満のない方ばかりですごく音楽的満足感。

行って良かった、観て良かった。
でも終わった後の気持ちが複雑でやるせなくて、もう一度観られる気がしない。
ミュージカルなのにストプレを観たような感覚。


一幕。

冒頭に小野田さんが力強く迷いなく歌うThe old red hills of home、何度か出てくるんだけど、これフィナーレには全然違うものに聞こえた。
次の曲への繋ぎか何かのピッコロの音が音程おかしかったけど、敢えてなのかな?
石丸さんは小心者でキチキチした男性としてレオを演じ、堀内さんルシールは世間知らずでのんきな若い妻という感じ。
武田さん出てきてBig news、みんなでたらめ言ってるのは雰囲気で大体わかるけどほぼ一人も歌詞を聞き取れず。

メアリーの墓前で「なぜあの子が死ななければならないのか意味がわからない」といったニュアンスで歌われる曲。
よくワイドショーとかで「なんであの子が…」っていうあれ。
そしてレオが裁判にかけられたときも「冤罪なのに裁判になるなんて意味がわからない」みたいな一節あり。
メアリーの親族友達の「わからない」も、レオの「わからない」も気持ちは同じだと思った。
あと二幕でもAll that wasted timeで「わかっていなかった」と出てくる。

日本語訳の結果なのか原語の段階からそうなのかわからないけど、わかる/わからないというのはひとつポイントだったりするのかな?
理性とか知性がある人間なのにあふれでてしまう本能だったり衝動だったり、
「わかる」ということが本来ならストッパーになるはずでも時にそれを超えてしまうときがあって、
そのとき本流(民衆)/亜流(夫妻)みたいな構図がどうしてもできてしまうものなのかな。

メアリー母、聖母のようにやさしい歌で、あぁやっぱり母はやさしいんだと思ったけど、最後にはユダヤ人への憎しみが消せないことがわかる。
とてもやるせない。
そういえば劇中で歌われるユダヤ人の描写は偏見も多いだろうけどものすごく間違ってるわけでもない気がする。
まじめで教えに忠実なユダヤ人の描写な気がするので。
新納さんの「Hammer of Justice」はなかなかおいしいナンバーだと思うんだけど、何回か出てくる最高音が何度やっても当たらずかすれていたのはちょっと残念。
歌の上手い下手でなく音域の限界という感じ。

三人の女の子が証言するシーンがあって、歌い踊りながらのきれいなハーモニーだった。
照明も不気味だけどきれいで、ゆらりと踊る三人の手足と一体感のある演出だった。
嘘八百を聞かされるのでストーリー的にはつらいばかりだけど。
みんなにでっちあげられるレオの変態おじさん的な曲は素直に気持ち悪い。(称賛)
検事の石川禅さん、めちゃめちゃ歌がうまく民衆をうまいことのせていく。

裁判で有罪が決まったときの夫妻の演技が印象的。
レオはもう怯えきって力が入らない感じ。
ルシールはレオの手を取ろうと手を伸ばすけどあまりの「触ってはまずい」感のあまり触れないでいた。
ルシールはレオにがっかりしたり嫌になったりもしていたようだけど、なんだかんだレオに話すときだけはやさしい声。
堀内さんの声は耳触り良いから余計ソフトに聴こえる。


二幕。

真実を選んだ州知事(それを尊重する知事婦人!)、州知事になるために真実ではなく民衆にとっての正義を貫く検事、夫のために賢くなる妻。
非の打ち所もなく悪人なら憎らしく思うだけだけど、三種三様自分の信念に従い行動してのあの結果だと思うともうほんとに消化できない。
レオは派手な人物でないのもあって、ルシールや知事や検事、民衆が主役に見える。
判決が覆っても、どうしても誰かが犯人でないと気が済まない民衆。
チャーリーもすごく悪い人には見えず、レミゼのジャベールやノートルダムのフロローのように、自分の思う正義を貫いたまで。

All the wasted time、束の間の二人の幸せ。
もう本当に怒濤で気が休まらない思いでみてたけど、本人たちはもっとすごい精神状態が続いてきたから、やっと力を抜くことができたんだろうなと。
細かい日本語詞をほとんど覚えてないけど、wasted time は無駄にした時間かもしれないけど、それがなかったら二人はここまでこれなかったんだから不可欠な時間でもあったよねと。
ラストのロングトーン、「なにもー」ってなんか字数的に違和感あったけど、かといってat allに代わる似たような音節の言葉が思いつかない。

レオ最期のとき、何かユダヤ語で決意のようなことを歌って死んだあたり、妻の影響力ゆえかなと。
自分の末路を自分で決めた。
前までの彼なら許しを乞うとか嘆くとか諦めるとかして、弱々と死んだかもしれない。
ルシール、レオが亡くなった後に歌う。
悲しいとかおかしいとか嘆きとかではなく「自由になったのよ」と最後に一声。
レオに向かって微笑むように。
でもだんだん唇噛み締め耐えるような表情に。
後ろではパレードをしていて、いろんなものを吐露せず飲み込み続けてるように見えた。

最後、事件の日にメアリーが「フランクさん、追悼記念日おめでとう」とフランクの嫌いな日を祝ったことの意味。
たぶんメアリーにはそこまで深い意味はなさそう。
紙吹雪は人々の狂気の名残だとどなたかの感想で見かけたけど、人々の「正義」の降り積もりでもあり「過ち」の降り積もりでもあるかも。
ジョージアのためにとフィナーレで歌うけど、人をさんざん傷つけて成し遂げることとは一体なんなのか。
南北戦争を終えても、人の間に争いはなくならないことをどう捉えればいいんだろう。
カーテンコールの拍手はしたけど、気持ちが複雑すぎてなんのために拍手してるのかわからないまま涙が止まらなかった。<キャスト>

レオ・フランク:石丸幹二 
ルシール・フランク:堀内敬子 
ブリット・クレイグ:武田真治 
トム・ワトソン(政治活動家):新納慎也 
ニュート・リー:安崎求 
ミセス・フェイガン:未来優希 
フランキー・エップス:小野田龍之介 
ジム・コンリー:坂元健児 
ローン判事(担当判事):藤木孝 
ヒュー・ドーシー(ジョージア州検事):石川禅 
スレイトン知事(ジョージア州知事):岡本健一 
ルーサー・ロッサー(弁護士):宮川浩 
サリー・スレイトン(スレイトン知事の妻):秋園美緒 
ミニー・マックナイト:飯野めぐみ 
メアリー・フェイガン:莉奈 


石井雅登、杉山有大、当銀大輔、中山昇、水野貴以、横岡沙季、吉田萌美