Impressive Sounds

素敵な歌声や音楽を求めて。

表情が見える、歌を極めて変化する声:海宝直人

彼については何から書いたらいいのやら。
Wicked関連以外で久しぶりに心底気に入った方なので。

貴重な稽古場公開!劇団四季ミュージカル『ノートルダムの鐘』|エンタステージ

歌が本当に好きで好きで突き詰め続けているんだろうなという感じ、それでいて人からの評価を気にする様子なく自分の追求にただ正直な感じ。
そういう、歌が素晴らしいところ、音楽や作品や人に対してフラットで誠実、ある意味まっさらでドライなところ、とても好きです。
まあ、誠実とかドライとかはこちらが勝手に思ってるだけど、そういうふうに見えて仕方ないや。

きっかけは2017/01/04。
年始休み最終日、年末から気になってたノートルダムの鐘を観ることにした。
YouTubeだと海宝さんは声高めでいいけどこのハイトーンは生でも出るのかしら(疑ってすみませんでした)、飯田さんはハイトーン出なさそうだけど太めのゆったりした声なのかしら(こちらは概ね合ってた)、といった感じで特に希望はなく。
失礼ながら劇団四季の方で歌声が気に入って何度も再生したのは谷原志音さんくらいだったので。
海宝さんが四季の方ではないのは後で知った。

マチネは飯田さん、ソワレは海宝さんか。
朝から並ぶんだし昼の飯田さんでいっか。
あ、何人か前でマチネ売り切れた、どうしよう。
でもせっかく並んだからソワレの海宝さん観るか。
一回家帰ってまた来るのめんどくさいけど。
そんなことを思いながら手にしたチケット。

劇団四季劇場・秋、だいぶ前のマンマミーア以来。
初めてのバルコニー席後ろの立ち見(かなり上からだけど音重視な私にはコスパ最高と思った)。
初めてのノートルダムの鐘。
観劇後はあまりの感動とショックでボーッとしてしまい、仕事が始まっても成人の日になってもノートルダムのことが頭から離れないほど好きになってしまった。
どうしてももう一度観たくてまた海宝さんの出演回の立ち見に並んで観たくらい。

基本的にミュージカルはとにかく歌のクオリティが高いことが私にとってマストて、演技方面についてはキャラクターに合致する喜怒哀楽を見せてもらえればくらいの感覚だった。
そんな折、「演技」に長けた人はたくさんいると思うけど、「歌声での演技」を明確に意識したのはこの人が初めてだった。

彼のカジモドは顔の歪みをきつくしているせいか、いつも悲しく今にも泣き出しそうに見えて、声色にもそれがありありと表れていた。
「醜い」という言葉を言うときは自分への憎しみと悲しみ、日ざしのなかへの最後のロングトーンは悲痛な願いを吐露する心の叫びみたいに聴こえた。
天国の光は曲をあまり把握してなくて曖昧な記憶だけど、高音をまろやかに響かせてくれて、耳障りがとても良かった。
石になろうは、ハイトーンがスコーンと当たってグッときてたまらなかった。
今あらためてサントラで聴いてみると、小さい子が泣きすぎて気持ち悪くなっちゃってそうな感じに似てる。
もういっぱいいっぱいではち切れそうで、でもそれが外に放出できずに自分の内へ内へ籠っていくような、最後の方で緊張感のあるトランペットの高音とダークな低音の落差が凄まじい音楽とのリンクに思える。

声といえば、カジモドとして発した最初の喋り声は、失礼ながらビートたけしに聴こえたし、いまサントラを聴いても似てると思う。笑
あと、声のほかに印象的だったのは、カジモドと役者の変身ぶり。
舞台中央に出てきてものの数秒でカジモドになるわけだけど、くるりと振り返るところが、ディズニーアニメでヴィランズに呪いをかけられてしまったキャラクターかのように見事な振り返り方(ターンの仕方)だった。
私には呪いをかけるヴィランズの細くて黒くてシワシワで骸骨みたいな手が見えた気がしたくらい。

今思うと「ノートルダムの鐘が好き」は間違ってないけど、「海宝さんがカジモドを演じるノートルダムの鐘がすごく好き」がより的確。
海宝さんについても「海宝さんの歌声が好き」よりも「カジモドを演じる海宝さんの歌声が好き」が最も的確。
海宝さんの歌が好きなのかノートルダムが好きなのか、それを確かめにフレンズオブディズニーやミュージカルミーツシンフォニーやレミゼに行ったりしてみた。
impressivesounds.hatenablog.com

もちろんどの曲も丁寧で情感あふれる歌で素晴らしかった一方で、ノートルダムの劇中で聴いた彼の歌がやはり一番心奪われた歌声だった。
そしてこれは私の好みという意味で、2017年年明けに観たときの声が一番好きだったので、発売されたサントラはその頃の声に近くて本当に嬉しい。
海宝さんの歌声は、カジモドを経てどの音域も声の幅が広くしっかりしたように私には聴こえて。
それは素晴らしいことだけど、個人的にはノートルダムサントラに収録されている頃の、少し高音寄りで声の揺らしも少なめの真っ直ぐ寄りな歌い方が一番好きな歌声。

インタビューとか見てると「声帯を~」とか「どこの筋肉を使って~」とか言っていて、出したい声を出すために自分の体を楽器のごとくチューニングしてるのもよくわかる。
寄りで映ってるレミゼ2015のお披露目動画とか、口や顔全体をアスリートのように動かしてるのがわかりやすい。
ノートルダムのサントラだと、先述の泣き呻くような声もそうだし、かすれさせるような声も出してる。
なんと芸が細かいことか。
時々iの音、特にkiとかを息たっぷりに歌うところはちょっと好みじゃないんだけど、それさえも言葉を無下にしない彼らしさかなと思えてくる。

好きになった歌声とは今は少し違うかなと思っているけど、また新しい歌声を聴かせてもらえるかもしれないし、これからもこの方の歌には注目したいと思う。
残念ながら、7月のバースデーライブもバンドのライブも、チケットが取れなかったけど。。
何かの間違いで行けることにならないかなぁと淡い期待は心のどこかにあったりなかったり。

あぁ、好きなことを文字で表現するのって本当に難しい。
海宝さんの素晴らしい歌の魅力の5%くらいしか書けてない気がします。