Impressive Sounds

素敵な歌声や音楽を求めて。

ドライ≒冷淡・冷たい、とは限らない:メリーポピンズ 4/29ソワレ

メリーポピンズ、2回観ちゃった。へへへ。3/24夜のプレビュー公演と4/29夜の本公演。そして東京公演明日(日付的には今日)終わるというのに、今更書いちゃう。個人の雑感、あとキャストさんの感想。



ミュージカル「メリー・ポピンズ」プレスコール映像


私はWickedのDefying Gravity、The Hunchback of Notre DameのOut There、The Little MermaidのPart of Your World、PIPPINのMorning Glowなど、がっつり歌唱力が必要で歌い上げるような曲が基本的には好き。なので何回か観たくなるような作品は大体音楽が気に入ったものになることが多い。で、メリーポピンズは大熱唱ナンバーはないと思ってるので、それでもリピートしちゃったのってなんでだろと思ったけど。

たぶん、熱すぎずドライすぎない芯(ストーリー的にそれはメリーポピンズのマインドとかポリシーとかスタンスとして見えるもの)がストーリーを貫いているところが好きだな。メリーポピンズは人に自分の考えを押しつけないように見えるし、実際劇中でも「私が人に考えを吹き込むなんて!」みたいなこと言ってた気がする。そういう押しつけがましさは全くなくて、けれど「私はこう思うの」「私はこう感じるの」「私が決めるの」というしなやかで筋の通った物言い・立ち居振る舞いは徹底されていた。そういう、私が素直に信じていたい「自分で決めたことをやる」「互いにリスペクトをもつ」みたいなところがメリーポピンズの芯にあったから、それがすごくちょうどよく感じてリピートしたように思う。

そのちょうどよくて気に入ったメリーは濱田めぐみさん。Wicked日本初演エルファバというのはもちろん知っていたけど私は新参者なのでこの作品でやっとお目にかかれた。安定感がありながらキャラクターとしても説得力のある歌唱力・演技力を体感したので、今後Wキャストの配役だったらこの方を選びたいと思った。そんなわけで今回は2回ともメリーは濱田さんで堪能。(平原さんが嫌とかではなく、なんとなく濱田さんメリーをもう一度みておきたかった。)

バートは大貫勇輔さんと柿澤勇人さん1回ずつみて、個人的にはダントツ大貫さんのバートが好きだった。もともとメリーポピンズにすごく思い入れがあったりするわけではなくてあまり詳しくもないので、2回観た感想としては「歌がうまいよりも演技・ダンスがしっくりくるほうが好きだな」っていう感覚で、その観点でいうと大貫さん。バートにしては上品すぎたかもしれないけど、ディズニー映画のバートも若造ではないし、大貫さんの落ち着いて品のあるバートがしっくりだった。ダンスは言わずもがな、ステップインタイムもスーパーカリ~も彼から目が離せなかったし、今度はもっとたくさんダンスしているところをみてみたい。

ジョージは山路和弘さんと駒田一さん1回ずつ。山路さんは厳格な部分に納得感があるジョージで、駒田さんは家族愛に目覚める様に納得感があるジョージで、それぞれの個性があった。ディズニー作品的な意味でわかりやすかったのは駒田さんかなぁ。ウィニフレッドは2回とも木村花代さんで、劇団四季出身だからか開口っぽい話し方をするのでちょっと気になった。でもジョージを助けると決意するソロの歌い上げ(これもしかしたらこの作品の中で一番歌唱力披露できそうなソロな気がする)、ジョージと一緒に給料交渉するところとかかっこよかった。

バードウーマンとミセスアンドリューは鈴木ほのかさんと島田歌穂さん1回ずつ。練習動画では島田さんのバードウーマンが好きだなぁと思っていたけど、鈴木さんのときのほうが席位置が良かったせいか鈴木さんのバードウーマンのほうが泣いた気がする。歌声は甲乙つけがたいけど、表情に泣いてしまったかな(島田さんのほうでも泣いてはいたけど)。ミセスアンドリューはそれぞれキャラクターを持っていて、鈴木さんは実在しそうなイヤーな家庭教師感、島田さんはディズニーヴィランズっぽいちょっと寓話的な役作りに見えた。

ジェーンは岡菜々子ちゃんと浅沼みうちゃん1回ずつ。菜々子ちゃんもとっても上手だった、そして個人的にとても好きだったのはみうちゃん。まず声がすごくきれいでなめらか、お芝居も小生意気な女の子が少しずついろんなことを学んで家族や周りの人に歩み寄っていく様もわかりやすかった。いやーとにかくあのきれいな声はほんと素晴らしい。マイケルは2回とも坂野佑斗くんで、こちらもやんちゃボーイを好演。物語の中ではなく子役ちゃんたちの実年齢がどれくらい近いのか・離れてるのかわからないけど、ちゃんとジェーンの弟だってわかるような幼さ(でも幼すぎない)でかわいらしかった。

あとこの作品は舞台装置がすごく凝っていて、開演前は緞帳に映し出されたロンドンの屋根上の煙突から煙がゆらゆら、メリーポピンズは突然現れカバンからあらゆるものを出し階段を足を使わずに移動するしフライングもするし、バートは壁や天井を歩いてタップダンスを踊ったり、チェリーツリーレーンのセットは立体絵本のように飛び出てきたり収納していったりするように見えた。やっぱりディズニー作品は装置を立派にするのはおきまりなのかな。

2回観たけどいつも泣くところは決まってて、マイケルとバードウーマンのシーン、ウィニフレッド決意のソロ、ジンジャーブレッドの星を見つけてからのジョージと家族との関係の変化、そしてラストのメリーポピンズ。最後なんか何も歌ってないし喋ってもいないのに、最後までリアリティをもってメリーポピンズのイメージをこちらに提供してくれるから、なんだかそういうところで感極まって涙が出るような感じ。

今回日本人キャストの上演を観たけど、これはやはり大好きなロンドン ウエストエンドで地理的なリアルさも追加して観てみたい。あと英語カンパニーでの来日公演も今後やってくれたらまた観たいなって思う作品でした。

キャスト(Wキャストは観た人に「*」)

メリー・ポピンズ濱田めぐみ*/平原綾香
バート:大貫勇輔*/柿澤勇人*
ジョージ・バンクス:駒田一*/山路和弘*
ウィニフレッド・バンクス:木村花代*/三森千愛
バードウーマン/ミス・アンドリュー:島田歌穂*/鈴木ほのか*
ブーム提督/頭取:コング桑田*/パパイヤ鈴木*
ミセス・ブリル:浦嶋りんこ*/久保田磨希*
ロバートソン・アイ:小野田龍之介/もう中学生*
ジェーン・バンクス:浅沼みう*/岡 菜々子*/亀山めい/渡邉おとは
マイケル・バンクス:大前優樹/加藤憲史郎/竹内彰良/坂野佑斗*
ノース・ブルック:石川剛
ミセス・コリー:エリアンナ
ケイティ・ナナ:小島亜莉沙
ヴォン・ハスラー:丹宗立峰
ネーレウス:長澤風海
ミス・ラーク:般若愛実

青山郁代,五十嵐耕司,石井亜早実,大塚たかし,岡本華奈,風間無限,工藤彩,工藤広夢,熊澤沙穂,斎藤准一郎,高瀬育海,高田実那,田極翼,照井裕隆,中西彩加,華花,樋口祥久,藤岡義樹,藤咲みどり,三井聡,武藤寛